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英国系御曹司の異常な愛情

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書籍紹介

一生逃がさない――俺だけの花嫁

「君は俺の婚約者だ」英国人のルーサーに突然言い寄られ、山奥の屋敷に軟禁された結奈。強引に抱かれ処女なはずの身体はたやすく彼の灼熱を受け入れて乱れてしまう。「俺を思い出すまで犯し続けるから」昼も夜もなく喘ぐだけの日々。与えられる強烈な快感に甦る記憶――。狂おしいほどに結奈を貪る彼は、幼なじみで将来を誓い合った人――!? ハードエロス×究極の純愛!

ジャンル:
現代
キャラ属性:
社長・セレブ
シチュエーション:
玉の輿・身分差 | 幼馴染・初恋の人 | SM・監禁・調教
登場人物紹介

ルーサー

巨大貿易会社の御曹司で、日英のハーフ。結奈の前に現れて彼女を監禁する。自分は婚約者だと言うのだが……?

三輪山結奈(みわやまゆな)

叔父夫婦が経営する茶屋で働く明るく美しい看板娘。両親を事故で亡くした過去を持つ。

立ち読み

 ほの暗い和室に、軋んだ音と女のあえかな喘ぎ声が響いていた。
 現代の建物にしては珍しい見事な畳。まだ青々としたそれに二人分のシルエットが落ちて、ユラユラと蠢いている。
 十畳ほどの室内を照らすのは、行燈型の間接照明のみだ。
「ゆる──して……っ、ぁ、……ひ──」
 その明かりを震わせる女の声がする。声は許しを乞うも最後まで言葉を紡げず、悲鳴と嬌声を呑み込んで細く途切れていった。
 代わりに聞こえるのは、ジュプジュプと泡立った水音。
 男の荒々しい息づかいと女の嬌声が同時に聞こえるのだから、部屋の障子越しに様子を窺う者がいれば何をしているかすぐ分かってしまうだろう。
 だがこの屋敷にそんな不調法な者はいない。
 出入りをする者は“主人”が在宅のあいだ、みな離れに引き払っている。夜になれば“主人”が“婚約者”と愛し合う時間だと、言われずとも分かっていた。
 パンパンという打擲音が一際高まったあと、男がくぐもった声を上げ「あぁ……」と気だるく呻く。
 絶頂が過ぎたあと、和室にも静寂が訪れた。
「も……、だめ……」
 広いローベッドには、女がうつ伏せになって全身を弛緩させている。夜目に白い肌がくっきりと浮かび上がり、シーツや肌に掛かった黒髪との対比が美しい。
 女の両腕は赤い縄によって拘束されていた。
 ──否、その縛り方を知っている者は“緊縛”と言うだろう。
 手首から肘、そして腕までを固定する“腕格子縛り”をされた女は、顔をシーツに付け荒い息を吐き出していた。
 脚もまた大きく開かれ固定されており、嫌でも秘部を晒す格好になっている。
 トロついた粘膜から肉棒を引き抜き、男は避妊具を処理する。
「……痛むか?」
 首の縄を軽く引き、男が尋ねた。
「……いいえ」
 思わず本音で答えてしまい、女は直後深く嘆息する。
 ここで「痛いから解いて。もうやめて」と言ってしまえば良かったと、すぐ後悔したのだ。
 しかし実際のところ、男の縄は女の体によく馴染んだ。
 女は最初、当たり前に縄を拒んだ。しかしこのアブノーマルと言える緊縛の手順を、男は危なげのない手つきでスルスルと踏んでゆき、抵抗する間もない。
 そして男は女が「圧迫感を覚えるが、苦しくない」と感じる塩梅までしっかり心得ている。縄が肉に食い込む苦しさは、男から与えられる肉体の淫悦も相まって、すっかり悦楽の一部となってしまった。
 ──自分はいやらしく作り替えられてしまった。
 グスッと洟をすすり、女は一粒の涙を零す。
「……それで、“数字”は思い出したか?」
 耳元で男の低い声がし、それだけで今まで男を咥え込んでいた部分が浅ましくひくつく。
 同時に頭の中でぱちん、とガラスのおはじきが当たる音がする──気がした。
 ──この男の声は、麻薬にも似ている。
 女は従順に「はい」と頷きそうになりつつも、朦朧とした思考を必死に巡らせた。
 何せ正解が分からないのだ。
 男は女に“数字”を尋ねてくる。
 分からないまま適当に答えても、「外れだ」と残念そうに言って“お仕置き”をする。
 今もちゃんと正解を言えなければ、三回目の行為が始まるのは明白だ。
 女の頭のなかで、バラバラとおはじきが畳の上に落ちて散らばってゆく。必死にその数を数え、頭に閃いた数字を口にした。
「三!」
「…………」
 男が静かに息を吸い込み、吐く。
 背後の気配が僅かに揺れて、カサリと小箱から新しい避妊具を取り出す音がした。
 ──間違えた。
 目の前にある低反発の枕を絶望的に見る女の目から、また涙が零れた。
「……も……っ、いや。終わりにして……っ」
「思い出してもらわないと、こっちが困るんだ」
 悪い商売をしている人間のようなセリフを言いながらも、女の頭を撫でる手はとても優しい。
 ──そんな手で、撫でないで。
 情けなくなり、新たな涙が零れる。
「あ……っ、ぁ、ア──」
 ぐぅっと蜜口に灼熱が押し当てられ、随分柔らかくなったそこがグチュリと男を受け入れた。何度彼を受け入れたか分からない入り口は、日本人の平均よりずっと大きな男の怒張を苦しそうに咥え込む。
「あぅ、あ、ァ、やぁあっ、──ぁ、そこ……っ、ぁ、おかしく……なるっ」
 すぐにガツガツと腰を振られ、切っ先が女の一番感じる場所を擦りいじめぬく。
 あっという間に忘我の境地に追いやられ、女は灼熱の時間に身を投じた。なり振り構わず喘ぎ、涎と蜜を垂らし、男の前で痴態を晒す。
 全身が熱くなり、まるで炎に包まれているように思えた。
 揺らめく焔の向こうに、黒いシルエットが見える──。
 ──あぁ、あれは何だっただろう。
 ──“あの日”も、こんな暑い夏の日だったような気がしたけれども……。
 静かすぎる日本家屋の外から、キョ、キョ、キョキョキョキョ……と鳥の声が聞こえた。
 ──あれは何の鳥だろう。
「あアぁ、やああぁ、あぅ、……ぁっ、そこぉ、っ──やぁああっ」
 簡単に埒を越えてしまった女は、めくるめく快楽の世界に堕ちて声を上げる。全身は酷くわななき、言う事をきいてくれない。
 揺さぶられ、子宮を激しく突かれ、あられもない声を上げる自分は──、人であって人でない気がする。
 ──美しく囀る鳥に比べ、私は何という声を上げているのだろう。
 男の屹立が引かれるタイミングで、グポッと愛蜜が大量に漏れ出た。知らずと出てしまった飛沫がシーツを勢いよく濡らすが、男は構わず獣めいた息を漏らして女を穿つ。
 意識も体も熱くなり、目の前の物すら歪んでいるように見える。
 輪郭があやうくなった行燈型の照明に手を伸ばそうとし──、その手すら拘束されていることに気付いて、──女は暗く笑った。

 

 羽田空港の国際線ターミナルのレストラン街で、男女が仲睦まじく歩いている。夜中発のフライトで、三輪山結奈は婚約者の滝ノ瀬郁也とイギリスに向かう予定だった。
 時は五月二十四日の金曜日の夕方。一か月前から準備をしていたイギリス渡航を前に、二人は意気揚々としていた。
「値段は少し高かったけど、美味しかったね」
「そうだね。でも外国の人が喜びそうな外観だったし、お米とかも拘っていたし。相応の値段なのかもね?」
 二人が出てきた店は、日本食を提供するウッド調のデザインの店だった。
 国際線ターミナルも外国人向けだからか、レストラン街の外見を江戸小路というテーマで纏め、提灯に太文字で店名が書かれてある。訪れるだけでも楽しく、結奈は何度もスマホのカメラでシャッターを切っていた。
 国際線ターミナルには紫陽花の花が飾られており、それも美しい。
「あと三十分ぐらいしたら、保安に行こうか」
「そうだね」
 予定では羽田から一度香港まで乗り継ぎをし、それからヒースロー空港に向かうことになっている。
 二十五歳の結奈より一つ年上の郁也は、大学生時代にホームステイをした経験もあるらしく、海外旅行でも頼りになると期待していた。


 結奈は東京赤坂にある浅葱茶屋という茶屋──庭園を眺めつつ、本格的な日本茶や和菓子、和風スイーツなどを楽しむ店──で三年前から働いている。親代わりの叔父夫婦が店を経営しており、いずれ店を守っていけたらと思っている。
 一緒にいる郁也は学生時代から浅葱茶屋でアルバイトをし、少し茶屋を離れたあと戻り、現在は店長をしている。長年アルバイトを続けたことと、その人柄から叔父夫婦に気に入られたのだ。
 郁也自身もただのアルバイト先以上に、浅葱茶屋を思ってくれていたらしい。とある有名大学の経営学部で学んだあと、郁也は数年大手企業で働いていた。しかしフラリと浅葱茶屋にまた顔を出すようになったのだ。
 オーナーである叔父夫婦に熱意を打ち明けるうち、子供のいない夫婦の代わりに茶屋の主を……という話になっていったようだ。結奈は今後結婚してから、特に生活を変えるつもりはないらしい。しかし茶屋を守りたいという彼女の気持ちを尊重しつつも、叔父夫婦は次代の担い手として店を郁也に任せようと思っているようだ。その話が決まったあと郁也も本気を示し、会社をやめて本格的に浅葱茶屋の店長および経理を兼任している。
 一緒に働くうち、自然と結奈とも仲良くなってゆく。友人や同僚という以上に親密になるのも、時間の問題だった。
 今回のイギリス旅行も、婚約者である郁也と一緒だから叔父夫婦の許可が出たのだろう。郁也が浅葱茶屋の今後の展開のためにも、紅茶を学ぶ必要があると言い出したのが発端だ。
 おまけに家の中にブライダル関係の資料が積まれてあり、白無垢のカタログなども沢山ある現状、言ってしまえば婚前旅行だ。
「結婚式楽しみだね」と郁也が微笑むのを見て、結奈は幸せに思う。
 これから郁也と結婚すれば、浅葱茶屋を彼と二人でもり立てていけるのだ。両親亡きあと自分を引き取ってくれた叔父夫婦への、最大の恩返しになる。
 結奈の両親は、彼女が二十歳の時に事故で亡くなってしまった。
 そのショックでかは分からないが、現在結奈は両親を亡くした際の記憶をすっぽり失っている。だからか、親がいないという事実もさほど悲しいと思えず、どこか他人事に思ってしまっていた。
 事故があったあと、当たり前に結奈の引き取り先について親戚が揉めたそうだ。一番有力なのは、京都で茶園と老舗茶屋を営んでいる祖父母の所へ行くことだった。父方の祖父母であるその家は、なかなか立派な家を持ち結奈が一人増えても負担ではないと言う。しかし東京で身を寄せ合うように暮らしていた叔父・邦宏と叔母・慎子が、住み慣れた場所にいた方がいいだろうと強く言ったのだ。
 両親は南青山に『陶器の三輪山』という店を営んでいたが、現在は長期休店となっている。賃料などは遺産から支払っているらしく、いずれ結奈が両親の仕事に興味を持ったら……とそのままにしてあるようだ。
 しかし依然、結奈は両親のことを強く思い出せない。ゆえに両親が愛した店を自分が熱意を持って継ぐ……ということができないでいた。優しい叔父夫婦と一緒に過ごし、歳の近い郁也と笑い合って過ごす現状が続けばいいと望んでいる。
 叔父夫婦の間に流産してしまった『浅葱』という名前の女の子がおり、それ以来夫婦は実子を諦め、結奈を本当の娘のように可愛がる。そこにまじめに働く郁也も現れ、『浅葱茶屋』は本当に良い雰囲気で経営されていた。
 その中で郁也が「浅葱茶屋の発展のためにも、他文化も視野に」と言い出し、今回のイギリス行きがあっと言う間に計画されたのだ。
 結奈の父は他国のお茶文化にも興味があったらしく、昔よくヨーロッパにも行って茶葉や茶器を学んでいたようだ。
 馴染みを頼り、イギリスのアフターヌーンティー文化を研究しよう、とのことだった。


 そんなこんなで郁也と国際線ターミナルで夕食をとり、まずは香港行きの便に乗ろうとしていたのだが──。
「……結奈!」
 不意に自分の名前を呼ぶ男性の声があり、結奈は驚いて顔を上げた。
 場所は件のレストラン街を抜けたところで、提灯が沢山下がっている地点だ。目の前にはエスカレーターがあり、その下にはチェックカウンターがある。ちょうど腰掛ける場所があったので、郁也とそこに座って時間を潰していたのだが……。
 前方から走ってきたのは、長身の男性だ。
 直毛の黒髪の下の顔立ちは、日本人と違う。肌の色は明らかに白く、鼻筋も高い。体つきもどちらかというと、胸板が厚くて欧米人のような感じだ。腰の位置も高く脚が長い。身長は一八五cmはあると思う。
 オーダーメイドでは、というジャストサイズのスーツをパリッと着こなした彼は、結奈まであと五mというあたりでゆっくり速度を落とす。
(……この人)
 ザッと胸に負の感情が走り、結奈は立ち上がり逃げ出そうとする。
 見るも麗しい男に、結奈は見覚えがあった。
 何度か浅葱茶屋にまで顔を出していて、最初こそ結奈も「格好いいお客さんだな」と思っていた。しかし結奈の好意に反し、彼は馴れ馴れしく声を掛けてきたのだ。
 年末やバレンタインの予定をしつこく聞いてくるので、憧れが恐れに変わってゆくのもすぐだった。
 男が来店した時の対応は、なるべく郁也に任せて結奈はバックヤードでやり過ごす。
 叔父夫婦にも「ストーカーがいるんだけど、怖い」とヘルプを出した。だが叔父夫婦は「何言ってるんだ」と笑って取り合ってくれなかったのだ。
 そのストーカーがまさか空港まで追って来るとは思わず、結奈は戦慄した。
「社長! いきなり走り出したら困ります……!」
 ストーカーの後ろから、三十代ほどの男性が走って追いついた。両手には二人分のスーツケースだけでなく、仕事用のブリーフケースなどもある。
 社長と呼ばれたストーカーは、髪を乱して走ることが似合っていないように思えた。
 悠然と高級車の後部座席に座り、完璧にセットされた髪を崩すことなど許されない。そんな人種に見える。一般人とは別次元の世界に身を置いている人だと、着ている物や立ち姿から一目で分かる。
 それがどうして自分に執着するのか──。
「ね、ねぇ郁也さん。行こうか」
 何となく嫌な予感を覚えた結奈は、そのまま立ち去ろうとする。
 郁也は男性を見て強張った顔つきをし、「そうだね」と同意して立ち上がる。
 しかし事は簡単に済まない。
「そいつとどこに行くつもりだったんだ? 国外に逃亡か?」
 グイ、と手首を掴まれて引き寄せられたかと思うと、結奈はストーカーの腕の中にいた。
 フワッと官能的なベルガモットの香りが鼻腔をかすり、「いい匂い」と思ってしまう。一瞬記憶の彼方でこの香りを覚えていると思ったが、それもすぐかき消えた。
「なっ、何するんですか!」
 バッと男性を見上げ──、結奈は息を呑んだ。
 男の目は、菫のように鮮やかな紫色だったのだ。
 何度か店に来た人物であるが、まともに彼の瞳を見つめたのは初めてだった。
(……綺麗……)
 思わず見とれた隙に、ストーカーは結奈の腕を引いてエスカレーターに向かう。
「ちょ……っ」
「柿崎、結奈のチケットをキャンセルしておけ」
「畏まりました。結奈様、柿崎でございます。少しお荷物の中を失礼致します」
 エスカレーターに乗り、背後にピタリとついた柿崎という秘書のような男は、結奈のショルダーバッグに手を入れてきた。
「ちょ、な、何するんですか! 犯罪ですよ!?」
 思わず大きな声を上げるが、周囲は外国人が多く気にも留められない。
「結奈様。キャンセルさせて頂きましたチケット代は、そっくりお返し致しますので、ご心配なく」
「そ、そういう問題じゃなくてですね……!」
 狼狽しつつ結奈は視線で郁也に助けを求める。だが彼はエスカレーターの数段離れた所を、うろたえながらも付いてくるだけだ。
「柿崎、オリバーに連絡は?」
「は、すでにお車を用意させてあります」
 そのままあれよあれよという間に車寄せレーンまで連れて行かれ、見るも恐ろしい高級黒塗り車に押し込められてしまった。
「離してください! 郁也さん! 叔父さんに連絡して! いつものストーカーが変なことしてきましたって!」
『旅行中に何かあったら俺が守るからね』と頼もしく笑っていた郁也は、実際なんの役にも立ってくれなかった。途中で何か言おうとする気配はあったのだが、「社長」と呼ばれるストーカーにひと睨みされ黙ってしまう。
 結果、結奈は車の後部座席にいた。運転手は体格のいい外国人だ。
 ドアに手を掛けようとすればロックされ、車は静かに走り出した。隣にはストーカー、そして助手席には柿崎。
「止めて! 止めてください! 誘拐ですよ!? これ!」
 叫んでも男たちは動じない。結奈はショルダーバッグからスマホを取り出し、震える手で浅葱茶屋に電話をした。
「結奈、いい加減にしてくれ。ずっと忙しくて日本に帰れていなかったから、拗ねているのか? それにしても怒っている期間が長すぎる」
 ストーカーはネクタイを緩め、少し疲れた表情で結奈を見る。そんな僅かな仕草と顔つきだけでも、つい見とれるほど格好いい。
 だが相手はストーカーだと思い直し、結奈は叔母が電話に出てくれるのを今か今かと待ち侘びる。
『お電話ありがとうございます。浅葱茶屋でございます』
 いつも通りの叔母の声がし、結奈は切羽詰まった声を上げる。
「もしもし、叔母さん? 私、結奈」
『あら、結奈ちゃん。どうかした? 忘れ物?』
「違うの! 前に言っていたストーカーいたでしょう? あの人と空港で会って、いま強引に車に乗せられてるの! お願いだから警察に電話して!」
 言っておきながら、自分で警察に連絡しなかった事を後悔した。動転しきっているのだ。
『ストーカーって……、ルーサーさんのことでしょう? ちょっと言い過ぎじゃない? 結奈ちゃんが拗ねてしまったのが原因だとしても、そんなに悪く言うことはないと思うわ』
 叔母までストーカーと話を合わせる始末で、目の前が真っ暗になった。
 言葉を失っている隙に、ルーサーとかいうストーカーにスマホを取り上げられる。彼は怒った顔のまま叔母と会話をしだした。
 いま思ったが、外国人とおぼしき外見と名前なのに、彼は随分と流暢な日本語を喋る。
「もしもし、お電話代わりました。シャーウッドです。教えて頂いた通り羽田で結奈を拾うことができましたが……。頼みますから、俺が不在の時に男と旅行をさせるだなんて金輪際やめてください」
 低く唸る男──恐らくルーサー・シャーウッドという名前──に、叔母は結奈が旅行に出ると伝えたようだ。しかし叔母を味方につけ情報を得たというのに、ルーサーは怒気を隠さない。
「あなた達なら俺という存在が何なのか、ちゃんと理解していると思っていました。だがあまり迂闊なことをすれば、例の件から手を引きますよ? 困るのはあなた達だ」
 叔母を脅す言葉に、結奈の背筋が凍る。
「ちょ……」
 スマホを取り戻そうとルーサーの腕に手を掛けるが、大きな手にやんわりと阻まれてしまう。
「……分かりました。こちらも少し頭にきただけです。しかし条件として、しばらく結奈を預かります。どうも彼女の様子がおかしいのが引っ掛かります。『治療』が必要なのかもしれませんし。……ええ、そうします。あと同行者の彼にもちゃんと説明をしておいてください。では」
 何やらルーサーと叔母の間で話が完結してしまい、無情にも電話は切られてしまった。
 ルーサーは結奈を見て、「スマホは預かるよ。警察にでも連絡をされたら面倒なことになるから」と暗く笑う。
 その笑みを見ただけで、ゾクッと背筋に恐怖がはしり結奈はドアに縋りついた。

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