毒舌ドクターの溺愛スイッチ

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- 本販売日:
- 2019/09/04
- 電子書籍販売日:
- 2019/09/04
- ISBN:
- 978-4-8296-8386-6
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俺に愛される覚悟はできたか?
勤め先の院長に頼まれ、息子の圭吾と結婚を前提に付き合い始めた看護師の沙織。クール過ぎる仕事姿とは真逆の甘々な溺愛が待っていた!? 「沙織は感度が良いな」巧みな愛撫に蕩けた秘部を熱塊で貫かれれば、愛される悦びに満たされる。「お前が可愛くていやらしいからスイッチが入るんだ」眼鏡を外した圭吾の淫らな視線に射貫かれて……。敏腕医師のギャップ萌えラブ!

高東圭吾(たかとうけいご)
産婦人科医。腕は確かだが、妊婦にも歯に衣着せぬ物言いで看護師たちをいつもハラハラさせている。父の勧めもあり、紗織との結婚に向けて動き出す。

吉永沙織(よしながさおり)
産婦人科の看護師。明るい性格で誰からも好かれるタイプ。勤め先の院長から、突然息子との結婚を提案され……?
「それなら、もうここには来なくていい」
言葉の冷たさに反して、診察室には盛夏の名残を思わせるまぶしい陽射しが満ちていた。
淡いソフトグリーンの色調が目にも気持ちにも優しい室内は、緊張して診察に来る患者さんや健診の妊婦さんに好評だ。
そして、どんなに待合室で緊張していても、診察室に入ってこの緑川クリニックの院長先生を見ると、その柔らかな表情にみんなふっと心が軽くなるという。
──それが、院長ならば、だ。
「どう考えても、あなたが希望しているような、どこかの国の女王様かと呆れるような出産にはしてあげられそうもない。我が儘を聞いてくれないと拗ねるなら、金を積んでその我が儘を叶えてくれる他の病院を探せばいい」
残念なことに、ここにいる彼は“まだ”院長ではない。
手元のカルテをパタンと閉じ、さっさとデスクの端へと移してしまう。彼──高東圭吾は、その凜々しくも秀麗な相貌に添えられたメガネの奥で涼しい眼差しをそっと伏せ、肩を上下させて息を吐いた。
目の前の椅子に座った妊婦は呆然としている。少々羽目を外して我が儘を言ってしまったが、まさかもう来るなと言われるとは思ってもいなかったのだろう。
妊娠中期に入ってお腹も膨らんできている。楽な服を選べばいいのに、「細いから大丈夫」と意地を張って無理に着ているように見えるワンピースは、腹部の布が張り詰めて苦しそうだ。
そのお腹を掻くように指を動かし、どうしようと視線を左右にさまよわせている。
本人にしてみれば、妊婦の軽口として「高東センセなら呆れながらも笑ってくれる」くらいにしか思っていなかったのだろうから、気まずいにもほどがある。
しかし、気まずさを感じているのは妊婦だけではない。
同じく診察室にいたナース、吉永沙織も、あまりの気まずさに声も出ない。
すると、診察室と処置室を繋ぐ後方の通路で聞いていたらしい看護師長が、カーテンの横からさりげなく沙織をつついてきた。
(またわたしですかぁ……?)
沙織は心の中で弱音を吐く。しかしここで行動を起こせるのは沙織しかいないのである。
一五〇センチあるかないかの小柄な身体に空気をいっぱい吸いこんだ沙織は、通常時より二割増し甲高くかわいらしい声を出した。
「そんなこと言わないであげてください。高東先生」
ゆっくりとした口調で言いながらデスクの端に追いやられてしまったカルテを開き、さりげなく圭吾の手元に寄せて、あくまでも柔らかい笑顔を保つ。
「先生を信頼しているからこそ、我が儘が言えてしまったんですよ。甘えちゃっただけじゃないですか」
妊婦のそばに寄り、忙しなく動いていた両手を握り「ね?」と微笑みかけると、半べそ状態だった彼女が地獄に仏とばかりにコクコクとうなずいた。
「それに、他の産院を紹介してしまったら、産まれたての赤ちゃんを見る機会がひとつ減りますよ?」
誰も気づかなかっただろうが、沙織にはわかる。
今、間違いなく、圭吾の目に焦りの色が浮かんだ……
「そうか?」
「そうですよ」
さらに二割増しニコニコしながら、沙織はカルテにのせたままのエコー写真を圭吾に差し出す。それを受け取った圭吾はリレーのように妊婦へ差し出し「順調だから、次も四週間後に来なさい」と告げた。
またここに来てもいいんだ。それがわかって嬉しかったのだろう。元気よく「はい!」と返事をした妊婦は、張り切って立ち上がり圭吾に頭を下げる。沙織にも顔を向け、ありがとうと言わんばかりの笑顔で手を振っていった。
本人もホッとしただろうが、沙織もホッとした。チラリと圭吾を見ると、緊迫した原因であるはずの彼は涼しい顔で次のカルテに手を伸ばしている。
ここで、もう少し発言に気をつけましょうね……などと言ってはいけない。
これが“緑川クリニック名物の高東先生”なのだ。
順番待ちのカルテを手に取り、沙織は中待合へ誘導する呼び出しをするため診察室の後方から通路に出る。すると、心配でずっと様子を窺っていたらしい看護師長と目が合った。
「……破れ鍋に綴じ蓋……」
その例え……。どうなのだろう。言いたい気持ちはわかるが本来は夫婦が使う言葉だ。
しかし、当たらずといえども遠からず。沙織は苦笑いしか出ない。
「……高東先生、あの遠慮のない毒舌さえなければねぇ……。男前で腕もいいのに、三十三歳で独身。あの性格ゆえにとしか思えないわ。もったいない」
腕を組んで片頬を手で押さえハアッとため息をつく看護師長は、まるで息子の結婚問題を心配する母親のようだ。
「ハハハー、そうですねー」
少々笑いが乾いている気がするが、沙織は軽く笑って呼び出し用マイクの前に立つ。
スイッチを入れる前に、自然と沙織からもため息が漏れた……
──高東圭吾医師。彼は、産科婦人科を専門とする、この緑川クリニックの次期院長である。
現院長の次男。つい最近までは、緑川第二クリニックのみの担当だったが、ある事情でこちらも兼任することになった。
医師としての腕がいいうえにクールで男前。外見だけで判断するなら、口コミ患者が彼目当てで殺到しそうな容姿だ。……が、いかんせん毒舌すぎるというか容赦ないのが、たまにきず。
──言えるものか……
そんな彼と……、沙織は、結婚する予定なのだ……

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