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憧れの旦那様は私専属ストーカー!? イケメン御曹司の重すぎる求愛 3

第三話

「じゃあ、次は五十鈴ちゃんの番だね」
「~~……っ」
 上から一つ、また一つとボタンを外されていく。胸の谷間が見えると、これからのことを想像してドキッとしてしまう。
「あっ! 谷間が見えた」
「そ、そういうこと、いちいち、言わないでくださいよ」
 揉んでおいて、何? そのピュアっぽい反応は!
 とうとう最後のボタンまで外され、パジャマの上を脱がされた。ツンと尖った胸の先端が視界に入ると、恥ずかしくてどうにかなりそうだ。
「うわぁ……なんて綺麗な胸だろう。すごいな……」
 久遠がまるで絶景でも見たかのような反応を見せるものだから、どうしていいかわからなくなる。
「ふ、普通です……」
 ちなみに私の胸は、謙遜でもなんでもなく、少し大きめではあるけれど、平凡な胸だと思う。
「そんなことないよ。五十鈴ちゃんの胸は特別だよ。触ってもいい?」
「さっきは断らずに触ったじゃないですか……」
「そうだったね。じゃあ、遠慮なく」
 久遠に腰を引かれ、私はベッドに組み敷かれた。
 な、何? この流れるような押し倒し方は……!
 久遠は再び私の胸を揉み始めた。
「ぁ……っ……んんっ……」
 すくいあげるように揉んでいたかと思えば、両手で寄せて揉んだり、指で尖りを抓み転がしたりと、予測できない動きと共に快感が胸から全身へ広がっていく。
「ああ……最高の気分だよ。俺、一生分の運を使い果たして、明日あたり死ぬんじゃないかな?」
「そ、んな……大げさな……」
 自分の胸を弄られる光景はあまりにも刺激的で、口が裂けても言えないけれど、見ていると興奮してくるのがわかる。
「俺、ポピグミチョの企画が通って、売れてくれたのが今までの人生の中で一番嬉しかった出来事なんだけど、今の俺、その時よりも幸せ」
「そんなに……っ!?」
 まさか! と思って久遠の顔を見ると、とても幸せそうな顔をして笑っていて、本気なのだと伝わってきた。
 こんなに好きになって貰えるなんて、素直に嬉しかった。
 胸の奥が熱い――。
「ん……っ……ぁ……っ……」
「五十鈴ちゃん、すごく感じやすいんだね。いい反応してくれるから嬉しい……」
 久遠は私の胸を持ち上げるように掴んでくる。尖った胸の先端が強調されるみたいで恥ずかしいと思っていたら、パクリと咥えられた。
「あっ……! 久遠……っ……あぁ……っ」
 ちゅぅちゅぅ吸いながら、舌で胸の先端を舐め転がされると、腰がゾクゾクッと震えた。秘部が疼いて、切なさのあまりおかしくなりそうだった。自分の意思とは関係なく、お尻を左右に揺らしてしまう。
「五十鈴ちゃんの乳首、甘くて美味しいよ。ずーっとこうして舐めていたいな……」
「甘い……わけ……なっ……ぁんっ……あぁ……っ……や……んんっ……」
 敏感になった胸の先端は、久遠の吐息がかかるだけでも快感として受け止めた。もう、ショーツの中はお漏らししたみたいにぐっしょり濡れている。
「本当だよ? ほら、こんなに夢中になっちゃうぐらい」
 胸の先端を強めに吸われると、恥ずかしい場所が激しく疼いた。
「ぁんっ……!」
「唇も甘かったよ」
 久遠は私の胸を揉みながら、唇を吸ってきた。
「ん……んん……」
 唇と胸、両方だなんて……!
 両方に与えられる快感に翻弄されていると、ボトムスに手を入れられた。
「んっ!」
 久遠の手がショーツの中に入って来て、秘部を指で弄ってくる。
 な、何これ……。
 キスや胸に触られるのとは、別の快感が襲ってきた。気持ちよすぎて、おかしくなりそうだった。
「んんっ! ふ……んぅ……っ……ン……んん……っ」
 割れ目の間にある一点を撫でられると、腰が壊れたみたいにガクガク震えて、あまりにも強い快感が訪れる。
「五十鈴ちゃん、すごく濡れてる……嬉しいよ。俺の愛撫でこんなに……ああ、夢みたいだ」
 指が動くたびにグチュグチュとエッチな音が響いて、羞恥心を煽られた。
「ぁ……っ……んんっ……久遠……そ、そこ……ぁんっ……あぁっ……だめっ……お、おかしくなっちゃ……ぅっ……」
 気持ちいい――でも、これ以上こんなに感じるのは怖い。自分が自分じゃなくなってしまいそうだ。
「おかしくなりそうなの? 可愛すぎるよ。それはもう、もっとおかしくしないといけないね」
「え……っ……あっ!?」
 久遠は私のボトムスをずりおろす。とうとう身に着けているものは、ショーツだけとなった。
 なんで自分の時はボトムスと下着を一度に脱いでたのに、私の時は別々なの……っ!?
「……なんか、プレゼントを開封してるみたいで、ときめいちゃうね」
「プレゼントって……そんな、いいものじゃないと思いますけど……」
「いやいや! 素晴らしいものだよ。神様からのギフトだね」
 神様からの……!? 大げさにもほどがあるけど、久遠の目は本気だった。
「可愛い下着だね。うん、五十鈴ちゃんには、ピンクがよく似合う」
 久遠は身体を起こして、私のショーツをまじまじと見てきた。
「あっ! そ、そんな、見ないでください……」
「夢にまで見た五十鈴ちゃんの下着姿だからね。目に焼き付けないと」
「な……っ」
 今日の下着は持っている中では一番いいものだけど、こういう時に見せるものとしては相応しくないような気がする。
 だ、だって、勝負下着を使う機会なんて来ないと思ってたから、持ってないんだもん……! ていうか、今さらだけど、ブラはしておくべきだった? 寝る前だからって外してたけど、こういう時って着けておくものだったの!? どっちにしても、じっくり見て貰うようなデザインのものじゃないんだけど!
「や……っ……今日のは、ダメです! お見せできるようなものじゃないので、もっとちゃんとしたのを買いますからっ!」
「えっ! 俺のために買ってくれるの?」
「ま、まあ……」
 そんな風に聞かれると、なんか張り切ってるみたいな感じで恥ずかしくなる。
「うわぁ……すごく嬉しいよ。え、俺も選んでいい?」
「えっ! 一緒に下着屋さんに行くってことですか!?」
「うん、行きたい。連れて行って」
「恥ずかしくないんですか!?」
「全然だよ。じゃあ、決まりってことで」
 確かに下着屋さんに、男の人と一緒に来る人を見たことはあるけども、でも……っ!
「私は恥ずかしいんですが……!?」
「気にしない、気にしない」
 気になる……!
「でも、普段から穿いてるのも見たいから、見るのはやめないね」
 久遠はにっこり笑って、私のショーツをジッと見た。
「ちょ、ちょっとっ! もう、久遠……! いい加減にしてくださいっ!」
「ふふ、ごめんねー」
 誠意のない「ごめんね」だった。
 久遠は長い時間をかけて、私のショーツを観察してくる。恥ずかしいし、さっきまでの愛撫で身体は疼くし、何この状態……!
「はあ……満足した。五十鈴ちゃん、ありがとう」
 この時間、私は何度も勝負下着を買っておけばよかったと後悔していた。
 羞恥心と身体の疼きに揉みくちゃにされていた私の足から、とうとうショーツが取り払われた。膝に触れられると、心臓が跳ね上がる。
「ドキドキする……」
「いや、こっちの台詞ですよ。なんで久遠がドキドキするんですか」
「ずっと憧れてた人の特別な場所を見ることができるんだよ? ドキドキしないわけがないよ……」
 変な形とかだったらどうしよう。
 自分でよく見たことなんてないし、見ていたとしても他人のと比べようもないだろうし……。
 でも、久遠はきっと……ううん、絶対、他の女性のを見た経験があるはずだし、比べられるはず。
 うう、やだ! 比べられたくない!
「五十鈴ちゃん、力を抜いて?」
「え? あっ」
 見られたくないあまりに、膝に思いきり力を入れてた。
「す、すみません」
「ううん、緊張しちゃった? 大丈夫だよ」
 久遠は私の膝に、ちゅ、ちゅ、と優しく唇を押し当ててくる。
「んっ……緊張、はしてるんですけど……」
 それだけじゃなくて……。
「ん?」
「い、いえ、なんでもありません」
 あそこの形が変じゃないかどうか心配……だなんて、とても口にできない。
 膝から力を抜くと、久遠がゆっくり足を左右に開く。
 み、見られちゃう~……!
 開かれた足の間に、久遠の視線を感じる。恥ずかしくて顔を背けたものの、彼の反応が気になってまた前を向いた。
「す、すごい……」
 ……何が!?
「こんな……うわぁ……すごい。なんて綺麗で、エッチなんだろう……」
 綺麗なわけはなくない!? いや、よくわからないけど、性器が綺麗なのはありえないと思うんだけど!? ていうかエッチって何!? 濡れてるから!?
「素晴らしいよ……ああ、もっと上手く表現できたらいいのに、あまりの衝撃に語彙力がなくなっちゃったよ……」
「ひょ、表現しなくていいですからっ!」
「もっとよく見せて」
「えっ!? よくって、これ以上どうやって……ひゃっ」
 割れ目の間を指で広げられ、恥ずかしさのあまり顔から火が出そうになる。
 こんな広げて見なくても……!
「小っちゃいここが、一生懸命勃起してるね。わあ、それに、ヒクヒクしてる……可愛いなぁ」
 ハムスターの頭を撫でるように、久遠がそこを撫でてきた。
「ひぁ……っ……ぁっ……んんっ」
 待ち望んでいた快感が襲ってきて、私はビクビク身悶えを繰り返す。
「ここ、弄られるの好きなんだね。俺も撫でるの大好きだなぁ……」
 久遠はうっとりとした様子で、私の敏感なところを指でなぞってくる。
 相手が久遠でよかった……。
 大弦がもし相手だったらと考えると、こんなことをするなんて吐き気が込み上げてくる。
 どうして久遠だと、全然そんな風にならないのかな……少なくとも好意を持ってるからだと思うけど、それだけなのかな?
 感じながら自分の気持ちを探っていられたのは、そこまでだった。
「……っ……ぁ……!」
 あまりに気持ちよくて目を瞑った瞬間、割れ目の間をヌルリとしたものでなぞられた。
 これって……!
 目を開けると、久遠が私の割れ目の間を舐めていた。
「や……っ……そ、そんなとこ……舐めちゃ……ぁっ……あぁっ……!」
「ん? 嫌? 気持ちよくない?」
 私は頭を左右に振った。
 ものすごく気持ちいいし、もっとして欲しい。そういう行為があるってことも、当然知っているけど、でもでもっ……!
「き、汚い……ですから」
 気になっちゃう~……!
「えっ! ごめん、でも、歯磨きしたし、うがいもしてきたから大丈夫だと思うよ?」
 悲しそうな顔をした久遠が、身体を起こして私の顔を覗き込んでくる。
「いやっ! なんでそうなるんですか! 普通に考えて久遠じゃなくて、私の方ですよっ!」
「五十鈴ちゃんが?」
 久遠は目を丸くした。わけがわからないと言いたげな表情だ。
「この流れで言ったら、そうに決まってるじゃないですか」
「あはは、まさか! 五十鈴ちゃんに汚いところなんてないよ」
「そんなわけ……」
「いや、本気。五十鈴ちゃんの身体は、減菌済みの手術道具よりも綺麗だよ。汚いところなんて、何一つない」
「本当にそんなわけありますかっ!」
「そんなわけがあるんだよ」
 自信満々だ。
 そんな風に言われると、ちょっと試すようなことを口にしてみたくなる。
「お……お尻の穴だって、そう言えますか?」
「うん、もちろん、綺麗だよ」
 清々しい笑顔で答えられた。
 ええっ!? 少しは怯んでよ! おかしいでしょ! 綺麗なわけないから!
「……五十鈴ちゃん、もしかして、お尻に興味あるの?」
「えっ!?」
 久遠の目が、期待でキラキラ輝いている。
「意外な性癖だね。俺は興味なかったんだけど……たった今、興味が湧いてき……」
「湧かなくていいです! ていうか、私もそういう性癖なんてありません! ただ、聞いてみたかっただけです! さすがにそれは汚いって言わせたかっただけです! すみません!」
 久遠の言葉を途中で遮った。変な性癖に目覚められては困る。
「そうだったんだ? ふふ、五十鈴ちゃん、面白いなぁ」
 久遠は楽しそうにクスクス笑うと、再び私の割れ目の間を舐めてきた。
「ひぁ……っ……あっ……あぁ……っ……や……だめ……っ……ぁんっ……あぁ……っ……だめぇ……っ」
 舌が動くたびに、頭がおかしくなりそうなほどの快感が襲ってくる。
 ちっともダメじゃないのに、どうしてダメって言っちゃうんだろう。
 あまりの快感をどう受け止めていいかわからなくて、私は手近にあった枕をギュッと掴んだ。
 こうでもしていないと、心がどこかへ行って戻ってこられないような錯覚に陥る。
 舌先でちろちろ舐めていたかと思えば、舌の表面でねっとり可愛がられ、とろけそうになっているとチュッと吸われる。
 予測できない愛撫に翻弄され、私はあられもない声を上げ続けていた。
「んぁ……っ……や……そんなにしちゃ……んっ……ぁんっ……あぁっ……!」
 膣口からは愛液がとめどなく溢れ、お尻の下までヌルヌルだ。
「五十鈴ちゃん、いっぱい溢れてる……こんなに濡れてくれて、嬉しいな。ああ、垂れちゃうのが勿体ないよ……全部俺に呑ませて……」
「や……っ……そんなの……呑まないでくださ……っ……やぁ……っ」
 久遠は私の膣口に唇を付けると、じゅるじゅる音を立てながら愛液をすする。舐めていれば多少口に入るけれど、直接呑むのとは違う。
 こんなの、汚いのに……!
 それでも喜んで口にしようとする久遠を見ていたら、なぜかキュンとしてしまう。
 どうして、こんな気持ちになるの?
「ふふ、溢れすぎて呑みきれないなぁ……こんなに小っちゃい穴からいっぱい溢れるなんて不思議だよね」
 舌で膣口をツンツン刺激されると、お腹の奥が激しく疼く。
「ぁ……っ」
 変な感覚……でも、すごくいい。
 もっと、そこ……弄って欲しいかも……。
「指も入れるね」
「は……はい……」
 私の中に、久遠の指がゆっくり入ってくる。
「ん……っ」
「痛いかな?」
「だ、大丈夫……です」
 違和感はあるけど、想像していた痛みはなかった。
「そっか、よかった……ああ、五十鈴ちゃんの中、すごくエッチだね……ヌルヌルで、狭くて、ふかふかで……」
 指を動かされたら、ヌチュヌチュいやらしい音が聞こえてくる。
「ん……っ……ぁ……っ……」
 身体の中を弄られるのって、不思議な感じ……。
 なんか、気持ちいい……かも……?
 割れ目の間にある敏感な場所を弄られた時とは、別の快感がやってきた。
「ああ……五十鈴ちゃんの身体に触れられるなんて、夢みたいだ。いや、本当に夢? そうだったらどうしよう……」
「ん……っ……わ、私も、夢だったら……困ります……」
 でも、私はこれが現実だってわかる。だって、夢ならこんなに気持ちいいわけがない。
「五十鈴ちゃん……俺の頬、ギュッてつねってくれる?」
「え、ええ?」
「お願い」
 私は恐る恐る久遠の顔に手を伸ばす。
 う……綺麗な顔!
 あまりにも綺麗な顔立ちで、つねるのを躊躇ってしまう。
「五十鈴ちゃん、早く」
 私は言われるがままに、久遠の頬をギュッとつねった。
「あ……痛い。よかった。現実だ」
「わかってくれて何よりです……」
 エッチの最中に頬をつねるって、何してるんだろ。
「……ふふっ」
 面白くなって、思わず笑った。
「えー? 何笑ってるの? 可愛い」
「なんだか、面白くなっちゃいまして。ふふ」
「何が面白いのかはわからないけど、五十鈴ちゃんが笑ってくれると嬉しいな」
 久遠は中に入れた指を動かしながら、私の割れ目の間を舐めてきた。
「ぁんっ! あっ……は……んんっ……ぁんっ……あぁっ……!」
 足元から何かがせり上がってくるのを感じた。
 もしかして、私、イキそうになってる?
 初めてだけど、なぜかわかる。これが本能というものなのだろうか。
「あ……中、すごく締まってる……もしかして、イキそう?」
「んっ……わかんない……です……けど……んっ……た、多分……?」
「あれ、イッたことない? 五十鈴ちゃんって、一人でしたこととかない?」
 と、とんでもない質問……!
「な……ないです」
 興味がなかったわけじゃないけど、自分の身体に触るのはなんとなく抵抗があって、一度もしないままここまできてしまった。
 え、もしかして、変なのかな?
 周りとそういう話をしたこともなかったから、よくわからない。少し不安になってきた。
「じゃあ、俺が記念すべき第一回に立ち会えるってこと? うわあ……感動だな」
「何言ってるんですか……っ……もっ……ぁ……っ……あぁんっ……は……んんっ……」
 久遠は嬉しそうに口元を綻ばせると、また割れ目の間を刺激し始める。
「あぁ……っ……んっ……ぁんっ……あぁっ! んっ! んんっ!」
 さっきよりも、激しい動きだ。中に入った指の速さは変わっていないけれど、舌の動きは速くなった。
 興奮で充血して膨れた敏感な粒を舌で弾かれるたびに、強すぎる快感が次から次へと襲い掛かってくる。
 柔らかな唇が敏感な粒を根元から咥え、チュッと吸い上げた瞬間、足元を彷徨っていた何かが頭の上まで一気に突き抜けていった。
「ぁ……っ……あっ……あぁぁぁぁ……!」
 私は大きな声を上げ、背中をのけぞらせて初めての絶頂に達した。
 な、何これ……。
 頭の中、真っ白……身体がふわふわして、どうにかなっちゃいそう……。
 心臓がドクドク脈打っていて、身体に力が入らない。指一本すら動かせそうになかった。
 久遠は私の中から指を引き抜くと、顔を上げて私を見下ろした。
「ああ……なんて可愛いんだろう。これが五十鈴ちゃんの初めてイッた姿……歴史的な瞬間に立ち会うことができた。神様、ありがとうございます。神様に感謝したのなんて、生まれて初めてだよ」
 いや、全然歴史的じゃない……!
 心の中では突っ込めたけど、口に出す余裕は少しもなかった。
 ふと、久遠の下半身に目がいってしまう。すると先ほどよりもさらに大きくなって反り返り、先がお腹につきそうだった。
 こ、こんなに大きく……!? 私に触って、興奮して?
 この後はきっと私、こんなおっきくなったのを入れられちゃうんだよね?
 指とはまるで太さが違う。きっとすごく痛むだろうな。
 き、き、緊張してきた……私、痛みに弱いタイプなんだよね。
「五十鈴ちゃんのこと、もっと気持ちよくしたいな……」
「えっ……今、して貰ったばかりで……あっ……」
 久遠は私の上に覆い被さると、胸の先端を舐めながら、割れ目の間を指でなぞってくる。
「さあ、俺の愛撫で感じてるところをもっと見せて」
「ちょ……っ……ま、待ってくださ……っ……や……これ以上は、あっ……あぁぁっ」
 久遠は目を輝かせ、私を可愛がり続けた。どれくらい経っただろう。私は四回目以降からイッた回数がわからなくなり、久遠の指はふやけていた。
「見て、五十鈴ちゃん。俺の指、お風呂に入りすぎたみたいにふやけてシワシワになったよ。五十鈴ちゃんの愛液が滲み込んで、一つになれて嬉しいな。ずっとこのままだったらいいのに」
 ふやけた指を嬉しそうに見せてくる久遠に、突っ込む気力が湧いてこない。もう散々イカされた私は、夢うつつの状態だった。
「え……? しわ?」
「ふふ、トロンとしちゃって可愛いなぁ……いっぱいイッてくれたから、眠くなっちゃったかな?」
 久遠は愛液が付いた指を舐め、もう一方の手で私の頭を撫でてくる。
 眠い……。
 眠気を我慢できなくて目を瞑ると、ペリッと何かを開封する音が聞こえた。
 何かゴソゴソしてる?
 目を開けたら、久遠が大きくなった欲望に何かを被せていた。
 何……? あっ! コンドーム……?
「五十鈴ちゃん、眠い? ごめんね。もう少しだけ付き合って欲しいな」
 膣口に久遠の欲望を宛がわれ、心臓がドキッと跳ね上がった。
 寝そうになってる場合じゃない……! これからが本番なんだから、しっかり起きてないと……!
「入れるね」
 耳元で囁くように言われると、お腹の奥がゾクゾクする。
 とうとう、私……。
 ゆっくりと押し込まれ、痛みが走る。でも、想像していたよりも痛くなかった。
 何度もイカせて貰ったおかげなのかな?
「ん……っ……」
 でも、すごい圧迫感!
「ああ……すごい。五十鈴ちゃんの中、トロトロだ……まだ先しか入れてないのに、気持ちいいよ……」
「えっ! ま、まだ、先だけなんですか!?」
「うん、まだ、半分も入ってない」
「半分も!?」
 嘘でしょ!?
 体感的にはもう、全部入ってると思ってた。
「辛いよね? ごめんね」
「い、え……んっ……大丈夫……です」
 多少の痛みと苦しさはあるけど、なんだろう。なんか……嫌じゃない。久遠が気持ちよさそうにしている顔を見ていたら、胸がキュンとする。
「俺が五十鈴ちゃんの辛さを引き受けられたらいいんだけど……というか、本当に引き受けたい。そういった意味で一つになれたら、なんだか興奮しちゃうんだけど……な」
 ありがたい言葉の中に、禍々しい感情が隠れているような気がするのは気のせい!?
「だ、大丈夫……本当に……っ……ん……思った……より、痛く……な……っ……い、ので……っ」
 言葉を話すとお腹に力が入るのか、余計に内側からの圧迫感を意識する。
「本当? それはよかった。指で結構慣らしたからかな? でも、一気に入れずに、ゆっくり入れるから、心配しないでね」
 久遠は私の頬や額にキスしながら、徐々に中を押し広げていく。
「ぁ……んん……っ」
 大きな欲望が、私の一番奥にググッと押しあてられた。
「五十鈴ちゃん、全部入ったよ」
「ん……っ……は、はい……」
 あんなに大きなものが、本当に私の中に入っちゃったんだ。人体の神秘って感じ……!
 やっぱり久遠が慣らしてくれたおかげで、全部入れられてもそこまで痛みはなかった。
「はあ……これが憧れの五十鈴ちゃんの中……想像を遥かに超える気持ちよさだよ……頭がおかしくなりそうだ……」
 目を細めた久遠が、うっとりとした様子で呟く。
「五十鈴ちゃん、動いてもいい?」
 私が返事をする前に、久遠の腰はゆるゆると動き始めていた。
「ん……っ……ぁ……っ」
 もう、動いてる!
 そんな突っ込みをする余裕なんて残っていないので、私は小さく頷いた。
 動かれても、そこまでの痛みはなくて、異物感の方が強い。
 な、なんか……気持ちいい……かも。
 痛みと違和感の奥に、快感が隠れてるのがわかる。
「ぁ! ……っ……ン……ぁっ……ぁん……ぁっ……! ぁっ!」
 久遠が動くたびに、グチュグチュ中を掻き混ぜられる音や、肌がぶつかるいやらしい音が部屋に響く。
 す、すごい、エッチな音……。
 その音を聞いていると、ますます興奮が煽られる。頭の中はぼんやりしてるのに、それと反比例して身体の感覚は敏感になっていくみたいだ。
「ああ……すごい。五十鈴ちゃんの中……最高だよ……トロトロ……俺ばかり気持ちよくてごめんね……」
「だ、ぃじょ……ぶっ……んっ……ぁんっ……んっ……んっ……」
 私も気持ちいいんだけど、伝えられる余裕がない。
 突かれているうちに痛みと違和感は遠ざかっていき、快感だけが残って研ぎ澄まされていく。
「ん……ぁっ……ぁんっ! あぁ……っ……んっ……ん……ぁっ……あ……んんっ……」
 私が痛がっていると思っているせいか、久遠の動きはゆっくりだ。加速することがあっても、眉を顰めて減速する。
 もう、痛くないから、激しくてもいいのに……。
 きっと、そうする方が気持ちいいんだよね。それでも私が辛いと思って、我慢してくれてるんだ。
 久遠の気持ちが嬉しくて、私はそのまま何も言わずにいた。
「五十鈴ちゃん、キスさせて」
「は……んんっ……」
 返事をする前に、唇を奪われた。
 下で繋がっているところはゆっくりした動きだけど、キスは激しい。
 久遠の愛情が伝わってくるみたいだった。
 こんなに愛されるなんて、信じられない。
 実の両親から愛されるのは、言うことを聞いている時だけ。何か反発することがあれば、愛は憎悪に変わり、従うまでそのまま……。
 条件ありきでしか愛を与えて貰えなかったから、まさかこんな風に、何の見返りも求められず愛される日が来るとは思わなかった。
 胸の中が、温かい何かで満たされていくのを感じる。
「……っ……ああ……もう、イキそう……五十鈴ちゃん、もう少しで終わるから、頑張ってね」
 久遠が優しく頭を撫でてくれると、心地いい。
 終わらなくていい。このままずっと、こうしていたい――と思ってしまう。
 それからしばらくして、久遠は私の中で絶頂を迎えた。
 あ……すごい。ビクビクってしてるのがわかる。
「五十鈴ちゃん、たくさん頑張ってくれてありがとう」
 久遠は嬉しそうに目を細め、私の唇にちゅっと優しいキスをしてくれた。
 引き抜かれた後も、中がジンジンして久遠のがまだ入っているみたいに感じる。
「眠い? 疲れたよね。そのまま寝ちゃって大丈夫だよ。俺がパジャマ着せてあげるから」
「や……自分で……」
 と言いながらもウトウトしてしまっていると、久遠がホットタオルを持ってきて、私の汗を拭いて、パジャマを着せてくれた。
 恥ずかしいけど、心地いい。身体が重くて動かせそうにない。
「あれ? シーツに血が……」
 夢うつつの中、久遠の声が聞こえてくる。
 あ……初めてだから、血が付いちゃったんだ。洗ったらちゃんと落ちるかな……本当はすぐに洗いたいけど、今日はもう無理そう。
「最高の記念だ……一生取っておかないと」
 …………えっ!? 何言ってるの!?
 きっと夢に違いない。そうだ。久遠が私の色んなものを取っておいているとは言っても、さすがに血の付いたシーツを保管しようとするわけがない。
 ……と思っていたけれど、翌日、久遠がシーツを剥がして自室に持っていこうとするのを見て、あの時の言葉は夢じゃないと気付いたのだった。
 当然、阻止させて貰った。


「天賀谷常務が、企画部の子と結婚!? 嘘でしょ!? 嘘って言って……!」
「本当! よく社食で一緒にいたじゃん。ほら、あの子だよ!」
「どっち!? えっ! お弁当……お揃いのお弁当持ってる! あの子!?」
「やだぁ……立ち直れない」
 絶え間なく聞こえてくる囁きに、ソワソワしてしまう。
 ちゅ、注目を浴びてる……!
 月曜日、久遠が経理部に結婚を報告してくれると、お昼にはもう社内に話が広がっていた。
 久遠にはファンが多いから、あちこちで悲しみの声が聞こえ、貫かれそうな嫉妬の視線をあちこちから感じる。
「天賀谷常務、今日は本当に奢って貰っちゃっていいんですかぁ? むしろ今日は私が奢ってお祝いする立場なのにぃ」
「いいんだよ。好きなだけ食べて。坂西さんは俺と五十鈴ちゃんの愛のキューピッドなんだから。それに婚姻届の保証人欄も書いて貰ったしね」
「あれくらい、お安い御用ですよぉ~! それにこっちまでハッピーになっちゃいましたしぃ~! 一食分浮いて嬉しい~! いただきまーす」
 昼休み、私はいつものように社員食堂に居た。一緒に座っているのは、杏奈ちゃんと久遠。
 今までもよくあった光景……でも、今はあの時と関係性が違うのが変な感じだ。
「ねえ、坂西さん。これ、見てよ」
 久遠が得意気な顔をし、杏奈ちゃんにお弁当箱の中身を見せる。もちろん私が作ったもの。
「ちょ、ちょっと、大したものじゃないんですから、見せびらかさないでください」
「たいしたものだよ。五十鈴ちゃんが俺のために初めて作ってくれたお弁当だよ? これは歴史的なお弁当だ」
「全然歴史的じゃないです!」
 中身はいつも私が食べているものと同じで、甘めの卵焼き、たこの形にしたウインナー、ほうれん草の胡麻和え、昨日のあまりの煮物と、茹でたブロッコリーとミニトマトだ。
 人様に食べさせるものだし、気合いを入れた方がいいのでは? と思ったんだけど、いつも通りのものが食べたいと言われたので、遠慮なくそうさせて貰ったんだけど……。
「わあ、よかったですね。念願の五十鈴ちゃんのお弁当、ついに作って貰えたんですね。いつも通り美味しそう」
「そうなんだ。ああ……食べるのが勿体ない。写真を撮っておこう」
「いや! 今朝も撮ってたじゃないですか!」
「社食で撮るのは初めてだから。あ、五十鈴ちゃん、お弁当持ってくれる?」
「嫌ですよっ!」
 こんなに喜ばれるなら、いつも通りのものじゃなくて、やっぱりもっと張り切って作ればよかったなぁ……。
「あ、じゃあ、ツーショットの方がいいんじゃないですか? アタシ、撮りますよぉ」
「いいね、お願いしていい? 何枚か撮って欲しいな」
「えっ」
「わかりましたぁ~」
 久遠は杏奈ちゃんにスマホを渡し、私の肩を抱き寄せた。その瞬間、食堂内がざわめくのがわかった。
「ちょ……っ! こ、ここ、会社ですよ!?」
「うん? そうだね」
 いや、「そうだね」じゃないでしょ!
「あれ? そういえば、指輪してないね? どうして? 気に入らなかった?」
「あんなおっきいダイヤが付いた指輪、緊張して普段使いにできませんよ! 傷付けたらってヒヤヒヤしちゃって……」
「ええ? 全然いいのに」
 いいわけがない……!
「はぁ~い、撮りますよぉ~笑顔でお願いしまぁす」
「ほら、五十鈴ちゃん。スマイル、スマイル」
「うぅ……」
「いきまぁす」
 久遠のスマホに、引き攣った笑顔の私とお弁当を持って満面の笑みを浮かべる久遠の姿が保存された。
「いい感じに撮れましたよぉ~」
「坂西さん、ありがとう。大きくプリントして、部屋に貼るよ」
「んふ、五十鈴ちゃん、愛されてるね」
「は、はは……」
 杏奈ちゃんが久遠の部屋を見たら、どう思うかな~……。


「あっ」
 仕事を終えた帰り道、会社の最寄駅についた私は今まで使っていた定期を出してハッとする。
 そうだ。もう、いつもの駅に行くんじゃないんだ。
 大学からこの前まで、ずっとお世話になってたあの家……ちゃんとした形で、手放してあげられなかったな……。
 少し切ない気持ちになっていると、肩をポンと叩かれた。
「……っ!」
 驚いて振り向くと、息を切らした久遠が立っていた。
「天賀谷常務っ」
「会社から出たんだから、名前で呼んで欲しいな。というか、どうして一人で帰っちゃうの? メッセージ送ったのに」
「えっ! すみません。父からの鬼のように送られてくるメッセージを目に入れたくなくて、スマホ見てませんでした。というか、久遠は車でしたよね?」
 今朝、会社の車が久遠を迎えに来た。彼は一緒に乗って行くよう言ってくれたけど、他の社員に見られたら面倒なことになりそうだったので、断って電車で来た。
 正確に言うと、断ったけど「絶対一緒に行きたい」という久遠の隙をついて、なんとか家を出て来たのだった。
「五十鈴ちゃんと一緒に帰りたかったから、断ってきた。間に合ってよかった」
 嬉しそうに笑う久遠を見ていたら、キュンとしてしまう。
 な、何? この胸の音は……っ!
「そ、そんな、息切らしてまで追いかけて来なくても……」
「夫婦になって初日の記念すべき通勤だよ? 一緒に帰りたいよ」
 久遠が手を握って、指を絡めてくる。
「あっ! ちょっ」
「ん?」
 周りにはうちの社員らしき人がちらほらいて、こちらを興味深そうに見ていた。
「会社の人が見てるから……」
「別に悪いことしてるわけじゃないんだから構わないでしょ? 夫婦なんだし」
「いや、でも……」
「目の前でセックスし出すならさすがにと思うけど、手ぐらい繋いだって……」
「な……っ……シーッ! 何を言い出すんですかっ! わかりましたから、黙ってくださいっ!」
 そういえば、男の人と手を繋ぐなんて、大人になってからは初めてだ。
 学生時代はダンスの授業で男子と手を繋ぐ機会があったけど、「お前と手なんて繋げるかよ!」って言われて拒否されてたんだよね。後ろでそれを見て大弦がニヤニヤしてたっけ。
 嫌なことを思い出してしまった。
「明日からは一緒に通勤しようよ」
「他の人の目があるので、車は嫌ですよ」
「自家用車でも?」
「結局会社で借りてる駐車場を使うんですよね?」
「うちは社内恋愛禁止じゃないし、他の夫婦も車で来てるんだから、見られても問題はないはずだけど……そんなに見られるの、嫌?」
「あ……」
 私、田舎で滲みついた悪い癖が、まだ残ってる。
 田舎だとこういうところを見られたら、嫌な噂を立てられるから……。
 こっちでだって見られれば何か陰で言われて、少し嫌な思いをすることもあるかもしれない。でも、ここでは田舎と違って住みづらくなることも、両親から何か言われることもない。
 田舎から離れたがってたくせに、心はあっちに囚われたままだった。
 悔しくて、唇を噛む。
「じゃあ、会社から少し離れたところに駐車場を借りて、そこから歩くって言うのは? 朝からちょっとしたデート気分でいいかもしれないね」
 それなのにこの人は、そんな周りばかりを気にする私に嫌な顔一つしないで、楽しそうに色々提案してくれる。
「車が駄目なら、俺も電車通勤しようかな。それもまた、デート気分で楽しいよね。あ、どちらにしても少し早く出て、カフェに寄ってから出社するのも楽しそうじゃない?」
 胸の中が、温かい――。
「五十鈴ちゃん?」
「あの、駐車場借りなくて大丈夫です。見られても平気……なので」
「え、本当に?」
「あっ! でも、たまに朝早くに出て、カフェに寄るっていうのは、ぜひ……朝、カフェに行ったことって一度もないので、行ってみたいです」
 そう答えると、久遠は満面の笑みを浮かべた。
「うん、行こう。絶対行こう」
 こんなに喜んで貰えるなんて思わなかったから、思わず笑った。
 ふと繋がれた手に、意識を向けた。
 男の人の手って大きくて、ゴツゴツしていて、温かい。
 この手で私は――……。
 エッチなことを考えてしまって、顔が熱くなる。
 な、何考えてるんだろ。別のことを考えて、気を紛らわさないと……。
「久遠はよくカフェとかに行くんですか?」
「ううん、行かないよ。自室の方が寛げるから、テイクアウトして自室で過ごすことが多いんだ」
「えっ」
 私の写真がいっぱい貼られたあの部屋で、寛げるの……!?
「何?」
「いや、なんでもないです」
 聞かないことにしよう……。
「五十鈴ちゃんは、よくカフェに行くの?」
「たまに行きますよ。月に一度程度ですね」
「だよね。俺の知ってる通りだ」
「えっ! それも見てたんですか!?」
 久遠が「えへへ」となぜか気恥ずかしそうに笑う。
 いや、照れるタイミングがわからない!
「行く日は決まってないよね?」
 そこも把握済み……!
「そ、そうです。カフェ代も結構しますから、一か月に一度、すごく疲れた時のご褒美としてるんですよ」
「ああ、そういうことだったのか。長年の謎が解けたよ」
「謎って……」
「じゃあ、二人でお気に入りのカフェを見つけようよ」
「そうですね。久遠の家に住んで家賃や光熱費もかからなくなりましたし、月一以上でも行けますよ」
「そこは俺がご馳走するに決まってるよ。というか、俺のお金は五十鈴ちゃんのものなんだから、倹約せず好きに使って。あ、家族用のクレジットカードを作ってるところだから、届いたら渡すね」
「へ!? 使えませんよ! カードも大丈夫です!」
「え、どうしてそんなこと言うの?」
 久遠がとても悲しそうな顔をするので、なんだかものすごく悪いことを言ったような気になってくる。
 え? なんで? 私、別に悪いこと言ってないよね?
「だ、だって、久遠のお金は、久遠が使ってください」
「夫婦になれたんだから、俺のお金は五十鈴ちゃんのだよ。使ってくれないってことは、夫として認めてくれてないってこと?」
「いやいや! そういうことじゃなくて……」
「本当? じゃあ、使ってくれるってことだよね。よかった」
「え、えぇ……」
 なんか、上手い具合に持っていかれたような……。
 改札を通って電車を待っていると、久遠がクスッと笑う。
「どうしたんですか?」
「いや、五十鈴ちゃんの隣に立ってるのが、不思議な感じで。ほら、いつもは柱の陰とかに隠れて、見てたからさ」
「そうなんですか!?」
 全然気付かなかった……!
 こんなに背が高いのに、よく隠れられたものだ。今だってすごく目立ってるのに、どうやって気配を消してたんだろう。
 私が鈍感すぎるのか、久遠がストーカーするのが上手いのか……どっち?
「なんだか、今日はドッと疲れちゃいました……ご飯、簡単なものでいいですか? ちょっと季節外れかもしれませんけど、お鍋とか」
「お鍋、いいね。あ、でも、疲れてるなら、作らずに外食か、デリバリーとるかしない?」
「え、いいんですか?」
「もちろんだよ。どっちがいい?」
 デリバリーだと容器を洗って捨てるのが面倒だし、来るのに時間がかかるよね? お腹空いてるから今すぐ食べたい。
「外食で!」
「決まりだね。家の近所にイタリアンのお店があって、そこのパスタが、どれを食べても美味しいんだ。五十鈴ちゃんは、トマトクリームパスタが一番好きだよね?」
 なんで知って……いや、答えは決まってる。聞かないでおこう。
「はい! 食べたいです」
「じゃあ、今日はそこに行こうか」
「行きましょう!」
 幼い頃から絶対いいものを食べているはずの久遠のおススメのお店! 絶対に美味しいに決まってる。
「ふふ、初めてのデートだね」
「デート……! そ、そういうことになりますかね?」
「うん、そういうことになるよ」
 ということは、これが人生で初めてのデート……!
 な、なんか、ちょっと、ドキドキしてきちゃった。
 高鳴る心臓を服の上から押さえ、私は口元を綻ばせた。


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