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憧れ上司の推しは、私でした!? 隠れVtuberは絶倫課長に二次元でも三次元でも溺愛されています 3

第三話

 


「今度メールを送る時には、ハンドルネームを使ってみようと思う」
「そうですね。それがいいと思います」
 京極課長のメールアドレスは覚えてるから、ハンドルネームを使われても大丈夫だ。別のアドレスを使われたらお手上げだけど……。
「どんなハンドルネームが一般的なんだ?」
「そうですね。ネタに走るユニークな人もいれば、下の名前をそのまま使う人もいて、自由ですよ」
「ネタに走る? 例えば?」
「『俺がダイヤたんのパパだ』さんとか、『ダイヤの近所のコンビニ店員(大学生)』さんとか」
「え、本当なのか?」
「いえ! ネタですよ! ネタ! コメント欄ではハンドルネームが出ているので、面白いですよ。今度見てみてください」
「ああ、そうか。なるほど……ネタか、難しいな」
 京極課長はそういうのが苦手そうだ。そこがいいんだよね。
「普通に下の名前でいいと思いますよ」
「ああ、そうだな。俺には難しいから、下の名前にするか。うん」
 よし、これで違うメールアドレスからきても、わかりやすくなった。
「あの、ダイヤちゃん以外にも、推してるVtuberはいるんですか?」
 ああっ! 聞いちゃった! 知りたいけど、知りたくないっっっっ!
「いや、ダイヤたん以外には、興味がない」
「……っ……そ、そうなんですね」
 嬉しすぎる~~~~~~!
 その後もダイヤについて語り合い、あっという間に時間は過ぎて行った。
「……と、もう二十一時を過ぎていたか。月曜なのに遅くまで付き合わせて悪かったな」
「いえ、全然遅くないです!」
 楽しい時間って、どうしてこんなに過ぎるのが早いんだろう。もう一軒行きたいな。もっと京極課長と一緒に居たい……!
「そろそろ帰るか」
「はい……」
 ああ、終わっちゃった。もう、こうやって二人で飲みに行く機会なんてないんだろうなぁ……。
「前川さん、嫌なら立場とかを考えずに、断って欲しい。俺は上司で、キミは部下の間柄だ。上司に言われたからといって、我慢することはない。仕事に影響させることは絶対にないから、そこは安心してくれ」
「え?」
 何のこと?
 京極課長は頬を染め、咳払いをする。
「……その、今日は本当に楽しかった。ダイヤたんのことを誰かに話したのは初めてだったから。だからもし、前川さんさえよければ……今後もこうして、二人きりでダイヤたんの話がしたいんだ。これから、定期的に誘ってもいいだろうか」
「! は、はい、ぜひっ……!」
 嘘みたい! また、こうやって二人で会うことができるなんて……!
「ありがとう……! ああ、よかった」
 彼はホッとした様子で、胸を撫でおろしていた。
 断るわけがないのに……!
「それから、もし、よければ……メッセージも送っていいだろうか。配信の感想を語り合いたいんだ」
 メッセージも、貰えるの……!?
「はい! もちろんです!」
「あ……嫌なら本当に断ってくれていいんだからな? 遠慮する必要はないから」
「いえ! 嫌なんかじゃないです。嬉しいです」
 というか、京極課長に誘われて、断る人なんて一人もいないと思うんだけどな。
「そうか、ありがとう」
 京極課長が嬉しそうに笑う。キュンキュンして胸が苦しい。
 こうして、私は京極課長と定期的に業務時間外で会う約束をし、メッセージをやり取りするようになったのだった。

◆◇◆

「今日は季節外れ苺ちゃんとのコラボ配信でしたっ! 初めてのコラボが苺ちゃんで嬉しかったですっ!」
「アタシもです~! 楽しかったぁ~! また、一緒にやりましょうねっ!」
「はいっ! 絶対やりましょうねっ! それでは、皆さん、本日もご視聴ありがとうございましたっ! また来週金曜日にねっ! おつかれキラキラ~★」
 翌週の金曜日、私は同じく個人で活動しているVtuberの季節外れ苺ちゃんとコラボ配信をした。
 いつも一人でやっていたので、誰かとコラボして配信するのは初めてだ。緊張したけど、すごく楽しかった。
 配信終了ボタンを押した後、すぐに苺ちゃんから電話がかかってきた。
「もしもし、苺ちゃん、お疲れ様でしたっ!」
『もしも~し! お疲れ様ですっ! ダイヤさん、今日は本当にありがとうございましたっ! アタシ、ずっとダイヤさんのファンだったので、コラボしていただけて嬉しかったですっ! 本当にありがとうございました!』
「こちらこそです。緊張したけど、すっごく楽しかったです。もしよければ、またよろしくお願いします」
『はいっ! こちらこそよろしくお願いします! それでは、失礼しますっ!』
 苺ちゃんは、元々、私によくコメントをくれていたファンの一人だった。
 私を好きになってくれて、個人でもVtuberになれるんだ! と知り、一年前に始めたそうだ。今回のコラボも苺ちゃんから声をかけてくれたのだった。
 京極課長も今日の配信、聞いてくれてるのかな。
 余韻に浸りつつスマホを確認すると、京極課長からのメッセージが来ていた。
「嘘! もう?」
 すぐに確認すると、配信中にメッセージを送ってきてくれていた。
『お疲れ様、配信見ているか? 今日は季節外れ苺さんという方とコラボするようだな。ダイヤたんが誰かと一緒に配信するのは初めてだから楽しみだ』
『すごく楽しそうに話しているな。ダイヤたんが楽しそうだと、こちらも元気を貰える』
『苺さんもいい方だ。この方は今後ファンがたくさん増えるだろうな』
 実況してくれてる~~……!
 とても楽しんでくれている様子が伝わってきて、なんだか泣きそうだ。
「そ、そうだ。返事……返事送らなくちゃっ」
 嬉しすぎて、タップする指が震えてしまう。
『お疲れ様です! 集中して配信を見ていました。苺ちゃんとのコラボ、すごく楽しそうでしたね。一人配信もいいですけど、他のVtuberさんとのコラボもまた見たいなって思いました』
 送信ボタンを押して、スマホを置いた瞬間、電話がかかってきた。
 あれ? 苺ちゃん?
 再びスマホを手に取ると、京極課長からだった。
 きょ、京極課長~~~~!? 嘘! 電話をくれるなんて!
「も、もし……もしもしっ!」
『今、大丈夫か?』
「は、はいっ! 大丈夫です」
『いや、メッセージだと伝えきれないというか、直接話したいと思ってな……』
 ええええ~~! 嬉しいっ!
「た、確かに、文章だと細かいニュアンスとかもありますし、うまく伝わらなかったりしますよね!」
『あ、ああ、そうなんだ。今日は視聴者数がいつもより多かったな』
「苺ちゃんのファンも来てくれたんでしょうね!」
『元々、ダイヤたんのファンだったそうだな。いい人だ』
「はい、とってもいい子でした! 後日、苺ちゃんのチャンネルでコラボ配信するみたいですし、楽しみですね」
 この日を境に、私と京極課長は、配信が終わる二十四時から通話で語り合うように……。
 配信がある週末は元々とても心待ちにしていた曜日だったけれど、もっと楽しみになった。
「えっ! 京極課長って、辛いもの苦手なんですか?」
『ああ、そうなんだ。前川さんはどうなんだ?』
「私は得意ではないですけど、ある程度なら好きですよ」
 ダイヤの話だけじゃなく、雑談もできるようになってすごく嬉しい。
「あっ! そういえば、沢森くんは、すっごい激辛が得意らしいですよ。会社近くにいつも行列ができるカレー屋さんがあるじゃないですか? あそこで誰も食べられなかった激辛最強カレーを完食できて、写真が飾られてるんですって」
『……へえ、それはすごいな』
「本当かな~? と思ったんですけど、少し前に食べに行ったら本当に飾られてたんですよ。ビックリしちゃいました」
『そうか』
 あれ、反応が薄い?
『……そういえば、今日、沢森くんと給湯室で何を話していたんだ?』
「え?」
『少し長めに居たようだから、話が弾んだのかなと思ったんだが』
 ……はっ! 就業時間なのに、デスクから少し長めに離れたことを遠回しに咎められてる!?
「いえ! 全然! そういうのじゃなくて、コーヒーをひっくり返しちゃったので、掃除してただけです」
『そうだったのか。火傷しなかったか?』
「はい、大丈夫でした。でも、給湯室はしばらくコーヒーの匂いが充満しちゃってましたね」
『言われてみれば、今日は確かに香りが濃かったな』
 私生活がより充実しているからか、仕事にも力が入って、企画案も順調に製品化に向けて進行できている。
 京極課長を騙しているという罪悪感はやっぱりあるけれど、今さらもう話したくないなんて言えないし、自分の正体を明かすというのも、気まずい。
 今みたいに同じファン目線で語るのが楽しいし、もしも正体がバレたら幻滅されちゃうかもしれない。そんなの絶対嫌だ。
 それに、過去の出来事を思い出したら、やっぱり自分がVtuberをやっていることを言うのは怖かった。
 京極課長は、いい人だ。中学校の同級生とは違う。
 でも、カミングアウトするところを想像しただけで、喉の奥に何か物を詰め込まれたみたいに苦しくなる。
 それから、一か月が経った頃──。
「明日……あ、もう日付が変わったから今日ですね。二十時から苺ちゃんのチャンネルでコラボ配信がありますね」
 私はいつものように、配信後に京極課長と話していた。
『そうだな。それで、一つ提案があるんだが……』
「なんでしょうか?」
『嫌だと思ったら、正直に断って欲しい。今はゴールデンウィークだし、明日の配信は割と早い時間だ。そこでなんだが……その、俺の家で一緒に見るのはどうだろう?』
「えっ」
 京極課長の家に……!?
「行…………っ」
 ……けるわけがないんだよねっ! だって、私が配信するんだもん……っ!
「行けませんっ! ごめんなさい!」
 行きたかったぁぁ! 京極課長の家、行きたかったよぉぉぉぉ!
 もう、泣きそうだった。
『……そうだよな。すまない。でも、嫌なことは嫌だと、ちゃんと断ってくれてよかった』
「えっ!? 違うんです! 嫌なんかじゃないです! 明日はその、出かける予定があって、配信も見られないんです」
『予定があったのか。それは……その、誰かと出かけるのか?』
「あ、はい、そうですね」
『……沢森くんと、か?』
 ん? なんで沢森くん?
「いえ、違いますよ。どうしてですか?」
『あ、いや、なんというか……キミたちは仲がいいようだから、一緒に出かけてもおかしくないだろうなと思っただけだ』
「沢森くんは陽キャなので、誰とでも仲良しになれるんですよ。きっとゴールデンウィークもたくさん予定があって楽しくやってそうですね」
『あ、ああ、そうだな……なんというか、その、キミたちは、プライベートでも出かけているのか?』
 ……もしかして、私と沢森くんが良い仲だと思ってる!?
「あ、ありません! 一回もないですよ! 飲みに行ったことはありますけど、その時は先輩方も一緒でしたし!」
 誤解しないでください! 私、誰とも付き合ってません! フリーです! 京極課長と付き合いたいです! と心の中で叫びながら答えた。
『そうか』
 ちょっとホッとした声に聞こえたのは、私がそうだったらいいなって思ってしまうせいだろうか。
「あのっ! 日曜……日曜は空いてますか?」
『ああ、夕方からなら空いているが、どうした?』
「じゃあ、日曜日にお邪魔してもいいですか? 一緒にアーカイブを見ながら、語り合えたらと思うんですが、どうでしょうか……えっと、京極課長は、同じ配信を二度見ることになると思うので、嫌ですか?」
 京極課長の家、絶対行きたい。また、二人きりでお喋りしたい……!
『嫌じゃない。じゃあ、俺も今日は配信を見ないことにする。日曜、一緒にアーカイブで見よう』
「えっ! い、いいんですか?」
『ああ、その方が一人で見るよりもずっと楽しいからな』
 京極課長の家に行けるなんて、夢みたいだ。
「ありがとうございます!」
『じゃあ、日曜……そうだ。キミは好きな料理はなんだ?』
「え? そうですね。えーっと、ドリアとか好きです」
『ドリアにもホワイトソースやトマトソースと種類があるが、どれが好きなんだ?』
「全部好きです! 口の中が火傷しそうなぐらい熱々なものが好きなんです。ドリアの他にグラタンとか、あんかけ焼きそばとかも好きです」
『なるほど、そういうことか……』
 ダイヤ以外の話もできて嬉しい。しかも、京極課長から話を振ってくれるなんて!
「京極課長はどんな食べ物が好きなんですか?」
『俺は魚が好きだ。煮魚とか、ムニエルとか、特に鱈が好きだな』
「美味しいですよねっ!」
 いつか私が作ったものも、食べて貰いたい……なんて! いやいや! 欲張りすぎでしょ! こうしてプライベートで連絡を取り合って、お家に行けるのがすでに贅沢なことなのに!
『……と、もう一時を回っているのか。長電話をしてすまない。そろそろ休もうか』
「はい、じゃあ、お疲れ様です」
『ああ、おやすみ』
「お、おやすみなさい」
 通話を切った後、ドキドキしっぱなしの心臓を服の上から押さえた。
「はぁぁ~……おやすみ、かぁ」
 会社で別れる時は「お疲れ様です」だけど、電話を切る時には「おやすみなさい」って言える。特別な間柄になったみたいですごく幸せだ。
 日曜、会えるんだ……家に呼んでくれるってことは、彼女とかいないってことだよね? そうだよね? 彼女がいるのに女性を家に呼ぶのって、普通じゃないもんね?
 目を瞑って、しばらくの間余韻に浸る。
「……あっ!?」
 何を着たらいいの!?
 イスから飛ぶように立ち上がり、クローゼットを開けた私は、あれも違う、これも違うと明け方までかかっても、何を着ていくか決められなかったのだった。

◆◇◆

 日曜日、私は予定通り京極課長の家にお邪魔していた。
 会社近くのマンションで、部屋に入った瞬間フワッといい香りがする。柔軟剤? ルームフレグランス? いっぱい嗅いで記憶しなくちゃ! くんくん!!!!
 奥に進むと、美味しそうな匂いがただよっている。
 何か食べてたのかな? ミートソースっぽい香りだ。
 部屋の中は白と黒を基調にしたインテリアで統一されていて、窓際には大きな観葉植物が置いてある。
「前川さん、ここに座ってくれ」
 京極課長は、チャコールグレーのロングTシャツにジーンズを穿いていた。スーツじゃない姿を見るのは初めてだ。
 部屋着って、こんな感じなんだ。ええ、カッコいい~! 京極課長って何を着ても素敵すぎる~~!
「は、はい、ありがとうございます」
 ソファに案内された。目の前に大きなテレビがある。
 実家のテレビより大きい。うちのは四十インチって言ってたっけ。これはどれくらいだろう。五十とか?
「テレビ、大きいですね。どれくらいの大きさなんですか?」
「六十インチだったはずだ」
「六十!? すごいですね。あ、えっと、これ、お土産です。私のお気に入りのお菓子屋さんのクッキーです。お口に合うといいんですが……」
「気を遣わせてすまないな。でも、食べるのが楽しみだ」
 よかった。嬉しそうにしてくれてる!
「じゃあ、失礼します」
「ああ、寛いでくれ」
 結局、家にある服じゃ納得できなくて、昨日新調してしまった。
 大人っぽく見えるマーメイドラインのワンピースに、髪は巻いて後ろで緩く一つにまとめてみた。
 いつもと印象が違うようにしてみたつもりなんだけど、京極課長の好みはどんなだろう。ダイヤは可愛い系だから、そっちの方がいいのかな?
 ソファに座って視線を落とすと、自分の太腿に目がいく。
 ひっ!!!! ふ、太腿が……太すぎるっ!?
 う、うそうそうそっ! この服で座ったことがなかったから気付かなかったけど、座るとすっごい太腿の太さが目立つ……! や、やだーっ! ずっと立っていたい!
 そうだ。上着を膝掛けにすれば……ってさっき脱いで預けちゃったんだった!
 どうしよう。でも、こんな太腿を晒しておくのは、ちょっと……。
 悩んでいる間に、京極課長はお茶と一緒に、私が持ってきたクッキーを皿に盛って出してくれた。
「すみません。ありがとうございます」
 テーブルに置いた瞬間、お茶とクッキーの香りに混じって、京極課長のいい香りがふわりとして心臓が跳ね上がる。
「じゃあ、早速見ようか」
 京極課長が隣に座って、テレビを操作し始める。
 ああっ! もう、言い出せない……!
 でも、まあ、京極課長はダイヤの配信に夢中で、私の足なんて見ないよ。うん。気にしすぎ、気にしすぎ……。
 でも、最近はちょっと食べ過ぎだったような気がするので、今日からは少し自重しようと心に決めた。
「クッキー、頂きます」
「はい、どうぞ召し上がってください!」
 長い指で一枚抓むと、口に運ぶ。隣でサクッと音が聞こえた。
「うん、美味しい」
「よかったです! 美味しいですよね」
 そう、美味しすぎる。そして一枚、もう一枚と進んで、こんな太腿に……うっうっ!
「甘過ぎないから、いくらでも食べられそうだ」
「そうなんですよね」
 甘くなくても、カロリーはあるんだよね。どうしてクッキーって高カロリーなんだろう。でも、大好き……!
「バレンタインの時期だけチョコ味もあるんですけど、それもすっごく美味しいんです」
「ん? あ、俺にくれたものじゃないか?」
「……えっ! 食べてくれたんですか!?」
「ああ、すごく美味しかった」
 本当は手作りを渡したかったけど、そういうのが苦手な人もいるから既製品にしたんだよね。
 クッキーにしたのは、みんなはチョコを渡すだろうから、別のものにすれば京極課長の口に入るんじゃないかっていう下心があった。
「でも、京極課長、ものすごい量貰ってたじゃないですか? だから絶対食べて貰えないと思ってたのに……」
「ありがたいことにな。頂いたものは、半年以上かかったが全部食べたぞ。消費期限が短いものは冷凍して、毎日コツコツ食べた」
 真面目で優しい京極課長らしい。半年間頑張って食べる課長を想像したら、思わず笑ってしまう。
「でも、一番初めに食べたのは、キミから貰ったものだ」
「えっ」
 う、嬉しすぎる……! 直属の部下からのチョコだもんね。優遇してくれたんだ。
「ありがとうございます。えっと、光栄です」
 直属の部下、最高~!
「俺の方こそありがとう。すごく美味しかった」
 ちなみにホワイトデーには、有名店のマカロンをくれた。みんな、京極課長はカッコいいだけじゃなくセンスまで良いと陰で盛り上がっていた。
 ふふふ、私のだけチョコマシュマロも入ってたんだ。これも直属の部下権限を発揮できたからに違いない。
「私がお返しに頂いたのも美味しかったです」
「気に入って貰えてよかった。ここのクッキーは本当に美味しいな」
 クッキーを食べながら談笑していると、京極課長がソワソワし始める。
 え、どうしたのかな?
「その、こういうことを言うと、不快に思われるかもしれない。伝えるか悩んだが、言いたくて……いいだろうか?」
「はい? なんでしょうか」
 なんだろう? あっ! このクッキー、シナモンが入ってる種類があるから、苦手とか?
 は、早く言って~……!
 心配になっていたら、京極課長が私を真っ直ぐに見てくる。
 な、何?

 

 


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