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17歳と40㎝差の純情 スパダリ社長と偽装婚約したら、とろ甘溺愛生活が待っていました 3

第三話

 

 事情を聞かせてほしい──鷹人にそう頼まれ、小雪は頷くしかなかった。
 助けてくれたのだから、何があったのか説明しなければならない。
 とはいえ、小雪自身にもまだわけがわからないところがいくつもあった。
「た……高本さんが困っていたから……力になりたくて……待ち合わせ場所に行ったら、あの男の人が来て……」
 だから、説明も支離滅裂になってしまう。
 鷹人ももう少し落ち着いてからと思ったのか、「今日は帰ろうか」と提案してくれた。
 だが、小雪は首を小さく横に振った。
「だ、いじょうぶです」
 というよりは、家に帰って一人になりたくなかった。
 一人になればまた先ほどの男性のことを思い出してしまう。眠れる気がしないし、眠れても夢に出てきて魘されるだけだ。
「……」
 鷹人は小刻みに震える小雪を見て、そっと肩に手を置いた。
「なら、何か温かいものでも飲もうか」
「……」
 小雪はようやくコクリと頷いた。
「アルコールは大丈夫かい?」
「は、い……」
「ちょうど今から馴染みのバーに行くところだったんだ。そこで一杯奢るよ」
 小雪は促されるままに地上に出て、通り掛かったタクシーに乗せてもらった。
 席に腰を下ろして一息吐いたところで、鷹人は優しい嘘を吐いてくれたのだと気付く。
 地上階のエレベーターの前にいたのだ。本当なら地下鉄に乗るか、地下道にある店に用があったのだろう。
 なのに、気を遣って予定を変更してくれたのだ。
(社長って本当に優しいんだ……)
 ぐっと心を引き寄せられるのを感じる。
 だが、すぐに我にかえって自分を叱り付けた。
(私ったらこんな時に何を考えているの。社長に迷惑よ)
 それにしても、紗理奈が何をしたかったのかわからない。
 なぜ約束を守らなかったのか、あの男性とどんな関係だったのか、何一つ不明だった。
 タクシーは夜の東京を駆け抜け、やがて表参道ミッドタウンのビル前に停車した。
「降りようか」
「は、はい……」
 辺りを見回してみたが、店の看板らしきものはどこにもない。
「店はこのビルの地下で、看板がないんだ」
「えっ」
「ネットにもまだ店の情報は掲載されていないと思う。ほとんど貸し切りみたいなものだし、マスターも口が固いから、安心して話してくれて大丈夫だ」
 看板もなければネットでの口コミもない。貸し切り状態ということは、客足が絶えない店でもないのだろう。
 ならば、鷹人はどうやってこの店を知ったのか。
 首を傾げつつもあとについて階段を下りる。すると、打ちっぱなしのコンクリートの建物の壁に、黒塗りのドアが設けられているのが見えた。
 鷹人がゆっくりとそのドアを開けると、カランカランとベルの澄んだ音が鳴り響いた。
 外に広がる秋の夜の闇よりも、柔らかい闇で満たされた空間だった。カウンターとスツール、そしてその奥にある世界各国の酒瓶の列が、唯一の灯りである柔らかなランプの灯りに照らし出されている。
 鷹人が言っていた通り、金曜日の夜にもかかわらず客は一人もいない。
 これで経営が成り立つのかと不思議になる。
「いらっしゃいませ……おや」
 グラスを磨いていた男性が顔を上げる。
「鳴沢さん、お久しぶりです」
 鳴沢と呼ばれたこの男性が、服装からしてマスターなのだろう。他に従業員は見当たらない。六十前後で物腰が柔らかく上品な印象だった。
「今日はお連れ様がいらっしゃるんですね。お好きなところにどうぞ」
「あ、ありがとうございます……」
 小雪は鷹人の隣に腰掛けようとして、スツールを見てぎょっとした。
 インテリアには詳しくないが、スツールの片隅に刻印された、特徴的なマークには見覚えがあった。
 世界的に有名なイタリアの高級家具メーカーのものだった。椅子一脚でウン百万円というもはや異世界レベルの高級品である。
 ということは、このいかにも高級そうなカウンターも、テイストが同じところからして同メーカーの特注品か。
 一体いくらするのかもはや見当もつかなかった。
 鷹人はメニューを頼みもしなかった。
「彼女にはエッグノックを。俺にはカルーアミルクをお願いします。彼女の分から先に」
「……」
 小雪はミルクと聞いてちょっと笑ってしまった。
「社長、本当にミルクが好きなんですね」
「子どもの頃からたくさん飲んでいたからね。俺は昔身長がなかなか伸びなくて、絶対伸ばそうと思って毎日一リットルは飲んでいたんだ」
「ええっ、嘘。社長がですか?」
「今だってもう少し伸ばしたいと思っている。まだまだ諦めていない。あと五ミリで一八五センチに届くんだ」
 この冗談には笑い出してしまった。
 鷹人は四十三歳なのだ。いくらなんでももう伸びないはず。
「十分高いですよ。私に分けてほしいくらい」
「……」
 鷹人は目を細めて小雪を見つめた。
 チョコレート色の瞳には先ほどの鋭さとは打って変わった、あの優しく穏やかな光が浮かんでいた。
(あ、いつもの社長だ)
 いや、違う。
(いつもの社長は敬語だし、自分を僕って呼んで、俺だなんて言わない)
 ということは、これがプライベートの鷹人なのだろうか。
 そう思うと心臓がドキドキと早鐘を打ち始めた。
「失礼いたします。エッグノックです」
 タイミングを合わせたように目の前にコースターが置かれ、続いてクリーム色の液体で満たされた丸グラスが置かれる。
「えっぐのっく、ですか?」
 聞いたこともないカクテルだった。そもそも酒にはまったく詳しくなく、カクテルもカルーアミルクくらいしか知らないのだが。
 マスターがどんな飲み物かを説明してくれる。
「こちらはカクテルというよりはドリンクに近いですね。クリスマスや大晦日の夜に飲むものなんです」
「甘酒みたいなものですね」と鷹人が言葉を続ける。
「そうですね。風邪にもよく効くと言われているんですよ。そうでなくてもほっとするので、私も寒くて眠れない夜にはよく作って飲んでいます」
(風邪に効く……)
 思いがけない悪意に巻き込まれたことで、小雪の精神はすっかり弱っていた。ひどい風邪を引いたような状態である。
 果たしてエッグノックは心の病にも効果があるのか──。
「あ……」
 一口飲んで思わず小さく声を上げた。
「美味しい……」
 初めて飲むはずなのに、どこか懐かしさを感じる味だった。
「あっ、そう。カスタードかプリンみたい。昔お母さんが手作りしてくれた……」
「材料が似ているんですよ。牛乳、卵、砂糖……それからほんの少しのスピリッツ」
 スピリッツは入れても入れなくてもいいのだが、体を温めたい時には必ず入れるのだそうだ。
「ありがとうございます……。美味しいです……」
 鷹人がエッグノックを選んでくれたわけがわかった。
 胃にじんわりと彼の優しさが染み込んでいく。先ほど受けたばかりの心の痛みが徐々に和らいでいった。
「社長、あの、先ほどはありがとうございました。助けていただいたのに私、まだちゃんとお礼を言っていませんでした」
「構わないさ。どうだい。落ち着いたかい」
「はい……」
 エッグノックをもう一口飲み、大きく息を吐いて平常心を取り戻す。
「何があったのか聞いても大丈夫かい?」
「……はい」
 小雪は頭の中で今日起こったことを整理し、時系列順に説明していった。
「高本さんが元カレに付き纏われていて、なんとかやめてほしがっていたんです。だから、困っているならと思って……」
「高本さんか……」
 鷹人は顎に手を当て眉根を寄せた。
「社長、どうかしましたか?」
「ああ、いや、続けて」
「なのに、待ち合わせ場所に行っても高本さんはいなくて、待っていたらあの男の人が来て……」
 そこで勝手にマッチングアプリに登録されていたと知ったのだ。なんと、体を売られてまでいた。
 しかも、あの男性は「前金を払った」と言っていた。ということは、すでに金銭の受け渡しもあったということになる。その金は一体誰が受け取ったのか。
 ──まさか、あの紗理奈なのか。
 小雪には信じられないし、信じたくなかった。
 会社で紗理奈の恨みを買うような真似をしたつもりはない。仕事を無理に頼んだことはなかったし、むしろ繁忙期には手伝ったこともあった。プライベートではそもそも付き合いがない。
 いずれにせよ、何者かが自分を嵌めようとし、今回の件を仕組んだことだけはわかっていた。
 しかし、自分には冤罪だとわかっていても、他人はそうではない。真実は目に見えないのだから。
 紗理奈とあのように口約束はしたが、その証拠がどこにもないことに今更気付いた。
 留守電にも、SNSのメッセージにもその件についての連絡は来ていない。すべて口頭でのやりとりだけだ。
「わ、私、売春なんてしていません……!」
 カウンターの上で拳を握り締める。爪が食い込んで痛かったが、力を弱めることなどできそうになかった。
「わかっている」
「ほ、本当にそんなこと……」
「沢井さん」
 不意に左手が温かくなる。
 驚いて目を落として息を呑んだ。鷹人に手の甲を包まれていたのだ。
「大丈夫。信じている」
「社長……」
「俺は君を三年以上見てきた。そんなことをする人じゃないし、そんな真似は決して自分自身が許さないだろう」
「……」
「俺はよく知っている」
 また泣きそうになってしまった。
 憧れの人が信じてくれているというだけで、こんなにも心強くなれるのか。
(ううん、もう憧れってだけじゃない……)
 今まで、社長と一社員でしかないから、こんな子どもっぽい外見で相手にされるはずがないから──そう自分に言い聞かせてきたが、ついに気持ちが恋の形に固まってしまった。
 一旦自覚してしまうと、今まで以上に鷹人のあらゆる言動を意識してしまう。
(社長の手、大きい……)
 かすかに触れたことはあったが、手の平の大きさや指の長さ、ゴツゴツした骨格を感じ、途端に頬がカッと熱くなった。
(大人の男の人の手……)
 鷹人との年齢差は十八歳だったか。それも来月二十六歳になれば十七歳差になる。数字だけはほんのちょっとだけ近付ける──そう感じたところで我に返った。
 まずい。このままでは気持ちがバレてしまう。鷹人は自分を慰めてくれているだけだ。好意に気付かれたくはない。困らせたくはないのに。
「あ、あの、社長……」
 絶え切れずにおずおずと口を開く。
 鷹人ははっとして「……すまない」と慌てて手を引いた。
「セクハラだったね。悪かった。社員にあれほど厳しく言っているのに、これでは社長失格だな」
「いいえ、違うんです。セクハラじゃ……!」
 そんな罪悪感は抱いてほしくなかった。
 むしろこちらは嬉しいくらいなのだ。ただ、迷惑を掛けたくないだけで。
 鷹人が先ほど手に触れたのは、あくまで一社員を心配する社長としてで、社交辞令の一環だとわかっていると、そう伝えようとしたのだが、どうしてもその言葉が言い出せない。
 本当は社交辞令であってほしくはなかったから──。
(ああ、もう。私ってやっぱり人を好きになるのが下手……)
 自己嫌悪に駆られてしまう。
(悩んでいるような顔をしちゃ駄目。社長を余計に心配させちゃうでしょう?)
 心の中に渦巻く感情を振り払おうとして、マスターに「注文をお願いします」と声を掛けた。
「すみません。カクテル一杯いただけますか」
「どのようなカクテルにいたしますか? どんなものでも可能ですよ」
「……」
 カルーアミルクくらいしか知らない。
「そ、その、お勧めをお願いします。ちょっと強いもので」
「かしこまりました」
 マスターのお勧めはテキーラサンライズというカクテルだった。オレンジジュースを使った甘いものだ。
(よかった。なんとか飲めそう)
 苦いものが出てきたらどうしようかと思ったが、これならスルスル飲めそうだ。
 なお、ちょっと強いものでとのリクエストは、なけなしの見栄によるものだった。
 この容姿で自分の好みの通り、「ノンアルコールかごく弱く、かつ甘くて飲みやすいものがいい」、などと頼もうものなら、それこそお子様になってしまう。
 マスターがこちらの年齢を確認せず、すんなり出してくれたのも嬉しかった。
 面接でも答えたように、今まで酒の席では未成年に間違われることが多かったのだ。
 小雪がテキーラサンライズを飲み干したのを見計らい、鷹人は「とにかく」とテーブルの上に手を組んだ。
「この件は俺に任せてほしい」
 本人に無断でマッチングアプリに登録し、個人情報を晒し上げただけではない。売春までさせられそうになったとなると、刑事事件になる可能性が高いからと。
「刑事事件……」
 事が思っていた以上に大きくなってきた。
 小雪はごくりと息を呑んだ。
 鷹人はその間に懐からスマホを取り出し、ささっと操作して小雪に見せた。
「さっきちょっと調べてみたんだけどね。沢井さんが登録されていたマッチングアプリはこれだろう」
 目を落として見て驚いた。聞き出したわずかな情報からアプリの見当を付け、更に小雪のプロフィールまで探し当てていたのだ。
 この画面には小雪の写真だけではなく、大まかな居住地域や趣味特技が掲載されていた。しかも、内容が大体正しい。明らかに小雪の個人情報を知る者の仕業である。
 唯一事実と違っていた点は年齢だった。なんと十八歳と申告されていたのだ。
 更に自己紹介欄は「おじ様が大大だ~い好きなので、アラフォー以上の方のみ受け付けます☆ ちょっとおデブな方が好みです★」などと目眩がする内容である。
 鷹人は写真の一枚を指差した。
「これは盗撮だな。背景の一部と服装を加工している」
「えっ」
「最近友だちや家族に写真を撮られたことは?」
「あ、ありません……」
 自分の容姿をまだ好きになれていないので、必要な時以外は撮らないでと頼んでいる。全員長い付き合いなので、さすがに裏切っていたとは思えない。
 鷹人は「つまり」と言葉を続けた。
「このトイレでの化粧直しをしている写真……多分バレないと思ったんだろうな、うちの会社のあるビルのトイレだと思う。新興企業の製品でシンクの形が特徴的なんだ」
 ということは──。
「少なくともこの写真を撮影したのは社内の人間だ。それも、女性だな。君と一緒にトイレに入って警戒されないくらいだから」
「……」
 決めつけてはいけないと思うものの、また脳裏に紗理奈の顔が浮かんだ。
 鷹人は画面をスライドさせ、違う写真を表示させた。
「この正面からの笑顔の写真は気付かれないためだろうな、少し離れたところから盗撮して拡大したんだろう。これだけ画像解像度が荒い」
(す、すごい)
 鷹人の推理力に感心してしまった。たった数枚の写真からそこまで割り出すとは。
 鷹人はスマホを懐に仕舞うと、チョコレート色の瞳を鋭く輝かせた。
「届けを出す前に社内で調査させてほしい」
 小雪はドキリとして鷹人の横顔を見つめた。
(あの時の目だ)
 心臓が高鳴って目が離せない。
「他のマッチングアプリでは情報漏洩がされていないのか、被害者は沢井さんだけなのか……」
 ある程度情報を絞り込めてから、警察に届けたいと。
「もちろんアプリの情報は削除するようこちらで手配する。弁護士を立てるからその点については安心してくれていい。それと、沢井さんは今一人暮らしかい?」
「はい」
「ご実家はどこだい?」
「神奈川の端っこです。そこからだと通勤に時間が掛かっちゃうので……」
「またあの男みたいな輩に付き纏われないとも限らないからね。外出時はなるべく一人でいてほしくないんだ。送り迎えを頼める人は?」
「いません……」
 これでは彼氏はいませんと打ち明けたようなものだ。
「友だちとも行き帰りの時間が合わなくて……」
 赤面しつつ目を落としていると、鷹人は「なら」ととんでもない提案をしてくれた。
「当分俺が送り迎えをしよう」
 これにはさすがに目を剥いた。
「い、いや、悪いですよ」
 鷹人は営業部の社員の倍は働いている。ただでさえ妙な事態に巻き込んでしまったのに、これ以上迷惑を掛けたくはなかった。
「大丈夫です。私も大人ですから、対処できます。さっきは驚いてしまいましたけど……」
「──沢井さん」
 不意に真剣な眼差しで見つめられ、また小雪の心臓が跳ね上がった。
「頼るべき時には頼ることを知る──それもまた大人の条件だよ。人一人でなんでもできるわけじゃないからね」
「は、い……」
 小雪は今度は恥ずかしくなって目を伏せた。
 鷹人の言う通りだった。
(私ってやっぱりまだ子どもだな)
 大した力があるわけでもないのに、舐められたくはないとつい意地を張ってしまう。
(バカみたい……)
 鷹人がこちらの横顔を見つめているのを感じる。
 きっと情けない顔をしているのだろう。
 すっかり落ち込んでいると、今度はこんな言葉を掛けられた。
「それにね、そうしてくれると俺も助かる」
「えっ」
「実はね、つい一ヶ月前車を買ったんだ」
 鷹人曰く、納車まで数年かかったのだとか。
「ところが東京は公共交通機関が便利すぎる。なかなか車を使う機会がなかったんだ。通勤に乗っていこうにも、俺のマンションから会社は目と鼻の先。歩いて十分もかからない」
 そんなこんなでせっかくの新車は駐車場の肥やしと化し、誰にも自慢する機会がなかったのだという。
「けれども、沢井さんを送り迎えすることになれば、あの車に乗る口実ができる。それだけじゃない。カッコいい! 社長素敵! もっと運転して! って褒めてくれるかもしれないだろう?」
「……」
 小雪はまじまじと鷹人を見つめていたが、ようやく言葉の意味を呑み込み、ついぷっと噴き出してしまった。おかしくて涙まで出てきた。
「ご、ごめんなさい……」
 鷹人は自分が道化になって、こちらに気を遣わせまいとしている。
(本当に……優しい人なんだ……)
 ますます惹かれるのを感じながら、「いくらでも言いますよ」と笑った。
「社長、車が好きなんですか?」
 鷹人は微笑みながら頷いた。
「もちろん。男の子はいくつになっても乗り物が大好きなんだ」
「男の子って……」
 バーに入る前はあれほど悲しい気持ちだったのに、すっかり明るい気分になっている。
「お二人とも、次のお飲み物はいかがですか」
「あっ、はい。じゃあ、私もカルーアミルクを」
 質のいい材料を使っているのか、このバーのカクテルはどれも美味しかった。もっとも鷹人が一緒でなければこんなに美味しくは感じられなかっただろう。

 その後、二人で一時間ほど酒を楽しんだのち、小雪は再び鷹人とタクシーに乗り込んだ。
「じゃあ、明日迎えに行くから、家の前で待っていてほしい」
「わかりました。よろしくお願いします」
 窓の外を街明かりに彩られた夜景が流れていく。
 小雪は隣の席の鷹人にチラリと目を向けた。
「どうしたんだい?」
「いえ、なんでも……」
 アルコールが入ったからだろうか。夜のビル街を背景にした鷹人が、ますます素敵に見えてしまう。
(社長って昼より夜が似合う……)
 日差しの中で微笑む彼も好きだが、夜の闇を見つめるチョコレート色の瞳が、ふと遠くを見る瞬間にドキリとしてしまう。

 

 


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