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海に沈む深愛 記憶喪失のCEOは身代わり妻を今夜も離さない 3

第三話

「キスの壁を越えられたら、間違いなくセックスもいけるはず。そんな相手に巡り会うなんて、男嫌いの香子ちゃんには奇跡みたいなものじゃない」
 これが菫以外の誰かだったら軽蔑して終わりだが、菫は常々、香子に男性経験がないことを気にかけてくれている。今も厚意から言ってくれているのは間違いない。
 様々な感情をのみ込むと、香子は無理に微笑してバッグを手に立ち上がった。 
「……すみません。ええと、今のは聞かなかったことにさせてください」
「待ちなさいって、今、処方箋を出してあげるから」
 遮るようにくすくす笑った菫は、傍らのデスクでパソコンを起動させた。
「龍平(りゅうへい)から、たまには連絡があるの?」
 昨日の朝、半年ぶりに兄から電話があった時も驚いたが、このタイミングで、菫の口から兄の名前が出たことにはなお驚いた。香子はうろたえて口ごもりながら、
「き、昨日の朝、突然かかってきました。いつもと同じで、ただの生存確認ですけど」
「――そ、龍平のセンサーは、香子ちゃんに関してだけは正確だから気をつけて」
 プリンターから出力された処方箋を、菫は香子に差し出した。
「お大事に」
 待合室の自動精算機で会計を済ませながら、なんで二人は結婚しなかったんだろう――と、考えても仕方ない未練に、香子は再び囚われていた。
 十歳年上の兄、龍平は、香子にはただ一人の肉親である。
 兄妹は元々北九州で暮らしていたが、母親は香子を出産した翌年に事故で死亡、その四年後には父親も病死したため、当時十五歳だった兄一人が、東京で暮らす父方の伯母に引き取られることになった。
 北九州の施設に預けられていた香子が、兄の元で暮らすようになったのは十一歳の時だ。
 兄が就職して生計を立てられるようになったのと、香子の引き取りを拒否していた伯母が亡くなったためである。
 二人は兄が伯母から相続した家で暮らすことになった。その家に菫は再々遊びに来て、まだ小学生だった香子に勉強を教えてくれたり、食事を作ってくれたりした。
 当時の兄は、新人警察官として多忙ではあったが、少なくとも夜勤がない日は必ず家に帰ってきていた。三人で囲む食卓は幸せで、香子はいつか三人が本当の家族になるものだと信じて疑わなかった。
 何もかも変わってしまったのは、香子が成人式を迎えた一月の夜のことだ。
(――香子、四月からこの家はお前一人のものになる。名義も変えるし、俺は二度とこの家に帰らない。秋月龍平という存在自体、この世からいなくなると思ってくれ)
 警察の仕事は、今も香子にはよく分からない。
 その前月、兄は警視庁公安部外事課に異動になっていた。そこで、おそらく秘匿性の高い特殊任務に就くことになったのだろう。
 菫は、その二年後にアメリカ人の外科医と結婚し、米国と日本を行き来する生活を送っている。だったらお兄ちゃんとでもよかったんじゃない? ――と思わず口走った香子に、菫は笑ってこう言ったのだった。
(――間違えないで、香子ちゃん。決めたのは龍平であって私じゃないのよ)
 その時、何故か二度とこの話題に触れてはならないような気がして、以来香子は、菫の前で兄のことを口にしていない。
 

「見た見た? 例のCEO、今朝うちの職場に来たけどめちゃくちゃかっこよかった」
 午後二時に香子が会社に着くと、女子社員の話題はバトラーのことで持ちきりだった。
 午前中、主要な課を全て視察したはずだから、女子社員の興奮も無理はない。あれだけ美しい男が――しかも六千億企業のCEOが、社内を悠然と闊歩したのだ。
 撮影禁止、SNSへの投稿禁止という、アイドル事務所みたいな社内通達が出ていたが、おそらく隠し撮りした人は大勢いただろう。
 ロビーでもエレベーターでも、女が二人も集まればバトラーの話題に花が咲く――といった風だったが、何故か十五階にある総務部のオフィスに香子が入ると、女性たちのおしゃべりがピタリと止んだ。
 それどころか、どことなく冷ややかな――侮蔑を含んだ目がチラッチラッと向けられる。
 ――……ん?
 もしかして、昨日のセレモニーで起きたことがもう噂になっているのだろうか。
 CEOに記憶障害があることも、香子が人違いでキスされたことも、ごく一部の社員しか知らないし、見ていない。当然、目撃者全員に箝口令が敷かれたが、何らかのトラブルが起きたことは、現場にいた者なら誰でも察しているだろう。
 嫌な予感を覚えながら自席についた香子は、それでもすぐに気持ちを切り替え、やりかけの仕事に取りかかった。
 ここ数日セレモニーの準備に追われていたが、庶務課での本来業務は経理である。
「おはよ。なんだか大変なことになってるけど、大丈夫?」
 そこに、隣席の同僚が椅子を転がして近づいてきた。二歳年上の大貫歩美(おおぬきあゆみ)。おしゃべりで詮索好きなところが苦手だが、席が隣同士なので表向きは上手くつき合っている。
「大変なことって?」
「聞いてない? 変な噂が秘書課を中心に出回ってるんだけど」
 変な噂――? と、香子は書類をめくる手を止めた。
「昨日のセレモニーで、秋月さんがCEOの息子を叱って泣かせたとか、それを止めようとしたCEOを突き飛ばして怪我をさせたとか。――それ、本当の話なの?」
「――はっ?」
 さすがに立ち上がりそうになった。一部は本当だが、大部分はとんでもない大嘘だ。
 周囲を見回すと、香子と目が合った途端に顔を背ける社員もいる。どういうこと――? と思った時、
「しかも、この件で浦島課長が処分されるって話も聞いたんだけど……」
「えっ、なんで課長が?」
「分かんない。課長、午前中は気もそぞろみたいで、さっきからずっと席空けよ」 
 急いで見ると、確かに課長席は空席になっている。不意に宮迫の言葉が頭をよぎった。
(失敗したらお前共々島流しな。北海道の島にでも飛ばしてやろうか)
 まさかね――まさかこんなことで、課長が処分されるなんてあるわけがない。―― 
 
「――待ってください、どうして浦島課長まで転勤なんですか!」
 悪い予感は見事に的中した。
 二十階の第一会議室。円卓には、幹部社員で構成された懲罰委員会のメンバーがずらりと顔を揃えている。
 各部の部長と人事課長、最悪なことに、委員長は専務取締役の宮迫だ。
 香子の隣では、浦島が席についたまま、どこか悄然と前を見つめている。
「どうしてって、そんなの当たり前だろうが」
 椅子にふんぞり返って腕を組む宮迫が、残忍そうな目で笑った。
「お前みたいなポンコツを担当にした挙げ句、大失敗をやらかしたんだ。ちょうど鹿児島の支所に空きがあるから、二人揃って来週からそこに行ってもらうわ」
「納得できません。はっきり言いますけど、あの時私がされたのは性加害行為ですよ?」
 どんな罰も受け入れようと決めていた香子だが、さすがに我慢がならなかった。
 浦島は昨年、結婚四年目にして第一子が生まれたばかりだ。それで転勤は気の毒すぎる。
「私の処分なら甘んじて受けますが、課長の転勤は取り消してください。でないと、」
「秋月さん、もういいよ」
 その時、諦めを滲ませた声がした。浦島は不思議に落ち着いた目で香子を見ると、ゆっくりと首を横に振る。
「争ったって仕方ない。資本提携先のCEOを怒らせちゃったんだ。僕らの異動でCEOが納得すると言うならのむしかないだろ?」
 ――え……?
 困惑する香子の前に人事課長がやってきて、A4サイズの書類を乱暴に置いた。
「これは、昨日の出来事をまとめた顛末書だ。午前中に翻訳したものをCEOに見ていただき、内容に誤りがないことを確認している」
 宮迫の腰巾着と名高い人事課長は、ひどく高圧的な口調で続ける。
「一読してサインするように。ちなみに三枚目がCEOへの謝罪文になっている」
 急いでページをめくると、そこには、さっき耳にした噂がそのまま記されていた。
 要約すれば、香子がセオを叱りつけて泣かし、セオを助けようとしたバトラーの態度を自分への攻撃と誤解して殴打――という内容だ。
 つまり十五階で広がっていた噂の出所は、この顛末書だったのだ。
「言っておくが、CEOは相当にお怒りだぞ」
 半笑いでそう言ったのは宮迫だった。
「場合によっては訴訟も辞さないそうだ。全くとんでもないことをやってくれたな」
 香子は黙って眉根に力を込めた。本当だろうか? 昨日、あんな目で私を見て泣いた人が本当に? ――いや、もう変な期待を抱くのはやめよう。
 しょせん相手は、金の力でなんでもできる金持ちだ。自分の立場が不利になると分かれば、どんな手を使ってでも隠蔽しようとする。
「これに懲りたら、その虚言癖を早く直すことだな」
 意味が分からない香子が顔を上げると、宮迫は肩をすくめて楽しそうに続けた。
「二年前も、俺がセクハラしているだのなんだの、根拠のない嘘を言いふらしただろうが。マジでその性格、人としてやばいからな、お前」
 そこで、浦島以外の全員が苦笑したので、香子は頬を染め、怒りで唇を震わせた。
 あれは虚言でもなんでもない。あの時は本当に、後輩の一人が宮迫の執拗なボディタッチと食事の誘いに悩んでいたのだ。
 それで香子が部長に相談したのだが、事実はあっという間に揉み消されて後輩は異動。課内で孤立した香子は、仕事面でも様々な妨害を受け、大きなクライアントを怒らせたことで警備課にいられなくなってしまった。
「ま、その顛末書に、とっととサインするんだな」
 宮迫は肘をつき、にやにや笑いながら机を指で叩いた。
「お前が罪を認めて真摯に謝罪すれば、CEOも今回のことは水に流すと仰っておられたよ。よかったなぁ、CEOが心の広い人で」
「我是一個心胸狹窄的人(ウォシーイーグェァシンシィォンシァヂャイディレン)」

 全員が息をのむようにして、声の方を振り返った。
 声をなくして固まったのは、香子もまた同じだった。
 会議室の扉が開いて、背の高い男が室内に入ってくる。それがウィリアム・リー・バトラーだと分かった瞬間、香子を除く全員が、滑稽なほど慌てて立ち上がった。
「なっ、ど、どうしてCEOが、こちらに?」
「おい、ぃ、今ミスターバトラーはなんつった。誰か通訳連れてこいよ」
 周囲の動揺をよそに、バトラーは冷ややかな目で円卓に歩み寄り、足を止める。
 彼は、彫刻のように整った顔で全員を見回すと、不意にその美貌を崩し、上機嫌な笑顔になった。
「皆さん、遅れて大変すみません!」
 日本語だ。だが、もちろん誰もその意味は分からない。
「これで全員ですか? だったらさっそく始めましょう。話はどこまで進みましたか?」  
 誰もその問いに答えられない。その時、廊下からバタバタと複数の足音がして、半白髪を総髪にした初老の男が飛び込んできた。
 PTSの社長一之宮(いちのみや)である。創業家出身で今年六十一歳、宮迫の義父に当たる男だ。
 短気で怒りっぽい典型的なワンマン社長だが、人情家の側面があり、その駄目な部分が身内贔屓として現れている。
「ミ、ミ、ミスターバトラー、急にいなくなったので驚きました、どうしてこちらに?」
 その一之宮の背後には複数の社員の姿もあった。大慌てでここに駆けつけたらしく、全員、呼吸と髪を乱している。
 しかし、バトラーはそんな社長を見て、少し不思議そうに瞬きをした。
「ここで、昨日の出来事を話し合うと聞いて」
「は、話し合う?」
「昨夜、私は社長に、秋月さんに謝罪する機会を作ってくださるようお願いしました。その時社長はこう仰られた。その前に、双方の話を丁寧に聞く場を設けなくてはならない。今がその場なのではないですか」
 言葉に詰まった社長が、目に焦りを浮かべて背後を振り返る。
「おい、誰が言った。誰がこの会議のことをCEOに漏らしたんだ」
「い、いえ、誰も言っていないと思いますが」
 早口のひそひそ声はさすがに理解できないのか、バトラーは不思議そうに首を傾げる。彼は、そこで初めて香子に視線を向けた。
「昨日は、本当に申し訳ありませんでした」
 未だ座ったままだった香子は、息を止めるようにしてその優しい視線を受け止める。
「あなたが亡くなった妻に見え、大勢の前で失礼な真似をしたことを許してください。私は時々、夢と現実が分からなくなる。妻が亡くなってから、ずっとそうです」
 彼の寂しげな表情に、室内がしん……と静まり返る。
「気持ちを整理するのに少し時間を要しました。謝罪が遅れ、大変申し訳ありません」
 さすがに胸を打たれたのか、一之宮社長が目をしばたたかせた。さっきまでその事実を隠蔽しようとしていた委員会のメンバーも、言葉もなくうつむいている。
 その重たい空気を救うように、バトラーは明るい笑顔を一之宮に向けた。
「いずれにしても、今回のことは私に罪がある。傷つけた秋月さんにはどんなお詫びでもしなければならない。そうですね、社長」 
「っ、も、もちろんですとも、ミスターバトラー」
 満開の笑顔になった社長が、しかし、少し焦ったような目を香子に向けた。
「あ、秋月君、君からも何か言ったらどうかね。その……あるだろう、色々!」
「いや、実は秋月さんからは、もう謝罪の言葉をいただいておりましてね。暴力を振るったことをぜひCEOに詫びたいと。そうだな、秋月さん」
 人事課長が如才なく後に続く。見れば、例の顛末書はいつの間にか回収されている。内容もでたらめだし、むろんバトラーに見せたというのも嘘だったのだろう。
「……はい」
 香子は仕方なく頷いた。
「でも、私と浦島課長の処遇については、」
「もちろん二人とも、引き続き今の仕事をやってもらうよ。昨日のセレモニーは本当に素晴らしかった! なぁ!」
 呆れたことに、全員笑顔でパラパラと拍手まで上がる。なんだろう、このあからさまな手のひら返しは。というより、こんな人たちの口約束、絶対に信じられない。
 気持ちは浦島も同じなのか、どこか憂鬱そうな目でうつむいている。
 香子は立ち上がって、バトラーに向き直った。
 彼は首を傾げ、黒い宝石のような美しい目で香子を優しく見つめている。
 形の上ではこの人の勘違いに救われた格好だ。どこでこの会議のことを知ったのか、自分も出なければと誤解して駆けつけ、タイミングよく処分を撤回させてくれた。
 でも、香子は最初に聞いている。中国語だったから誰も聞き取れなかったのだろうが、彼が入室した時に冷たく吐き捨てた言葉を。
(我是一個心胸狹窄的人)
 あれは中国語で、翻訳すると「私は心の狭い人間だ」という意味だ。その直前に宮迫が言っていた「よかったなぁ、CEOが心の広い人で」に対するアンサーだろう。
 いかにも勘違いした体で入ってきたが、この人はそもそも室内で何が話し合われていたか知っていたのだ。
 ――……もしかして、私を最初から助けるつもりで?
 おずおずと彼を見つめた香子は、こくりと喉を鳴らして、言った。
「……我想和你談談(ウォシィァンフォニータンタン)」
 あなたと話がしたいです。このメンバーなら、多分二人にしか理解できない中国語で。
 

 夕暮れの空に、重たい雨雲が立ち込めている。
 路上には、後部座席の扉が開いているリムジン。その前に筋肉の塊みたいな凶相の男が立っていた。昨日ハオランと呼ばれていた男だ。バトラーの私設秘書で名前は趙昊然(チョウハオラン)。
 社屋のエントランスを出たばかりの香子は、巨大な車を前に立ちすくんだ。迎えを寄越すと言われた時から悪い予感がしたが、やっぱりこんな大袈裟なことになってしまった。
「どうぞ、秋月様」
 昊然は丁寧な口調で言って、香子を後部シートに誘った。そして「離開(リカイ)」と襟元のマイクに向かって言った後、自分も香子の隣に乗り込んだ。
 殆ど音も立てず、スモークガラスで外部から遮断された車が走り出す。
 生まれて初めて乗った高級車で、香子は鞄を抱き締めるようにして縮こまっていた。
 あなたと話がしたいです――。
 二人にしか分からない言葉でそう言ったのは、彼に頼みたいことがあったからだ。
 彼にもし謝罪の気持ちがあるなら、浦島の処遇について社長に念押ししてもらいたい。
 二人の処分はひどく曖昧な形で撤回されたが、バトラーが本国に帰れば蒸し返されるのは目に見えている。自分はともかく浦島の転勤だけは、絶対に止めさせなければ。 
 香子にすれば、その場に残って話ができればよかったのだが、バトラーは即座に中国語で「分かりました、お仕事が終わった時に迎えを寄越します」と言ってくれた。
 周りは中国語が理解できないため、それで和解が成立したと受け止められた――というより、バトラーが意図的にそう思わせるよう振る舞ってくれたのだ。
「これから、ウィル様の宿泊しているホテルにお送りします」
 不意に昊然が掠れた声で言った。一瞬誰のことか分からなかったが、すぐにバトラーのファーストネームだと理解した。ウィルはウィリアムの略称だ。
「……ホテル、ですか?」
「セオ様も同席されますのでご心配なく。それにウィル様はとても高潔な方ですから」
 初対面でいきなりキスして高潔――? と思ったが、そこはもう考えないことにした。
 少なくとも、五年も前に死別した妻を忘れられない程度には純情な人なのだ。
 ――不思議だな……。
 今からバトラーに会うことが、思ったほど嫌でもないし怖くもない。むしろ焔に飛び込む虫みたいに、抗えない何かに吸い寄せられていくような感覚がする。
(そんな相手に巡り会うなんて、男嫌いの香子ちゃんには奇跡みたいなものじゃない)
 菫の言葉は、実のところ香子の中で呪いのように息づいていた。
 彼女の前では強がったことを言ったが、バトラーに対する自分の反応については、香子自身が一番不思議に思っている。
 抱き締められても、キスされても、驚きはしたが嫌ではなかった。許せなかったのは、あれが人前で、しかも大切な仕事中だったということだけだ。
 私は彼に惹かれている? ――それとも、ただその境遇に同情しているだけ? 
 多分、どこかでこのもやもやした感情の正体を確かめたいと思っている。でなければ、言われるがままにホテルに赴く自分の危機意識のなさが説明できない。
 その時、前を見たままの昊然が、再び「秋月様」と口を開いた。
「ひとつ承知いただきたいことがございます。ウィル様は、秋月様がお母上でないことを、まだセオ様にお話ししていません」
 しばらくしてその意味を理解した香子は、びっくりして昊然を見上げた。
「……え? ちょっと待ってください、だったら私はどうしたらいいんですか」
「特に何も。ただウィル様と話を合わせていただければよろしいかと存じます」
 いや、話を合わせるって、いくらなんでも無理すぎない? 
 そもそも私、あの二人のことも奥様のことも、何も知らないんですけど。――

 


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