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しあわせ幼馴染み婚
策士な小説家のみだらな本音

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書籍紹介

その男とは、決して結ばれてはいけなかったのに――

「いいんだよ、おかしくなって。俺の前だけでは」
幼馴染みの大和と結婚した亜芽里は、
触ることで相手の心の声が聞こえる不思議な力を持っている。
結婚して初めて知る彼の淫らな欲望に体は熱く疼いてしまう。
昼とは違う顔で情熱的に何度も最奥を抉られ、
得も言われぬ快感に亜芽里の体ははしたなく乱れて……。
初恋を諦めない、一途な幼馴染みと甘すぎる結婚生活!

ジャンル:
現代 | ファンタジー
キャラ属性:
インテリ
シチュエーション:
幼馴染・初恋の人 | 新婚 | 甘々・溺愛
登場人物紹介

源大和(みなもとやまと)

亜芽里とは実家が隣同士の幼馴染み。端整な顔立ちの眼鏡男子。大学時代にミステリー作家としてデビュー。瞬く間にベストセラー作家になり、名誉ある賞を受賞した。

呉井亜芽里(くれいあめり)

実家の花屋で働いている。人の心が読める、接触テレパスという不思議な能力を持つ。大和とパーティーに参加し、そこで婚約者として紹介され!?

立ち読み

 亜芽里の金曜日は花市場に出かけ、新鮮な花を競り落とすところから始まる。
 年配の男性に交じって大量の花を仕入れたのちに、二トントラックに積み込み実家の経営する生花店、フラワーショップクレイまで運転する。その後店舗裏側の巨大なシンクのある水場に回り、父か母、時にはアルバイトの女子大生と仕入れた花の水揚げをすることになる。今日はアルバイトとの作業だった。
 水揚げとは競りの現場や輸送で弱った花に水を吸わせ、生き生きとした状態にするために行う作業だ。花の種や品種によって切り戻し、水切り、湯上げ、斜め切り、枝割り、枝折り、潰しに砕き、焼き入れ、深水、逆水、延命剤などがあるが、基本的には切り戻しで十分で、茎の最下部を一から五センチ切り落とす。
 これを何百本もの仕入れた花に施し、開店前に店に並べなければならないので、とにかくスピードが必要だった。余分な葉を落とし茎の根元を斜めにカットする。その後綺麗な水に入れると、花全体がシャキンと勢いを取り戻すのだ。
 単純な作業だが亜芽里はこの水揚げが好きだった。小学生の頃から手伝っていたので、慣れているのもあるだろうが、花が美しさを取り戻すその瞬間が好きなのだ。
 外側が朱赤で内側がアプリコットオレンジという、リバーシブルカラーの薔薇、チェリーブランデー。大輪の高雅な白い花を咲かせる百合、シベリア。淡いワインレッドが大人の雰囲気のカーネーション、バイパーワイン。
 亜芽里はどんどん根を切り落としていったが、途中モンテカルロ──黄色のチューリップを目にして手が止まった。
「亜芽里さん、どうしました?」
 アルバイトの女子大生、須賀に声をかけられ我に返る。
「ううん、なんでもないわ。須賀ちゃん、早く終わらせようね」
 モンテカルロは黄色が鮮やかな八重咲きのチューリップだ。切り花でも鉢植えでも見栄えがし、市場には十二月から三月にかけて出回る。亜芽里が大好きなチューリップの品種の一つであり、毎年入荷されるのを楽しみにしていた。
 ところが、今年はモンテカルロの黄色を見てもどうも心が華やがない。
 ふと黄色いチューリップの花言葉を思い出した。
 ──……望みのない恋だったっけ。
 今日も花市場で顔を合わせた一人の男性の顔が脳裏に浮かぶ。その左手薬指には銀色に光る結婚指輪が嵌められていた。
 ──もう、私ったら何を考えているの。
 首を軽く横に振り水揚げに戻る。その後は無心で作業を続け、なんとか開店までこぎ着けた。
 亜芽里の実家呉井家は東京の下町の一角で、生花店フラワーショップクレイ本店を経営している。亜芽里は元から花が好きだったのもあって、短大卒業後その手伝いをしてきた。
 初めは得意の花束作りやフラワーアレンジメント、接客と販売が担当だったのだが、二年前から仕入れも担当している。両親が都内に支店の二号店を構え、そちらが忙しくなったので、落ち着くまではと店長代理を任されたからだ。
 近頃は亜芽里の花選びとフラワーアレンジメントのセンスが受けたのか、これまでの顧客だった両親の知人、友人や業者に加え、地元でカフェや雑貨店を開業したばかりの若者も利用するようになっている。
 今日の朝一番に店を訪れた男性客もそんな若者の一人だった。
「こちらがご予約のお品物になります」
「うわあ、トライアルのつもりだったんだけど、いいねえ」
 男性が声を上げてカウンターに置かれた花をまじまじと見つめる。男性の持ち込んだモダンな土器の花瓶に、落ち着きのあるピンクを基調にした花が生けられていた。
「シンプルで可愛くって、うちの店にぴったりのイメージ」
 この男性は美容師で、つい先日フラワーショップクレイと同じ通りにヘアサロンをオープンした。そこに飾る花をオーダーしていたのだ。
「男なのにピンクが好きってどうかと思うんだけど……」
 亜芽里は「ピンクを好きな方は男女問わず多いですよ」とフォローを入れた。
「やっぱりほっとする色だからでしょうか」
「そうそう。ほっとするんだよね。だから俺、店もピンクをベースにしちゃって。あっ、支払いはカードでもいい? というか、これからも月曜の週一で継続して頼みたいんだけど」
「では、来週からお店のイメージに合ったフラワーアレンジメントをお届けしましょうか? お支払い方法も振り込みが可能になりますけど」
「うん、そうしてくれるとありがたいな」
 男性は坊主に近い金髪にチョビ髭を生やしており、服装も黒づくめで一見近付きにくい。だが、カードを受け取った瞬間手が触れ合い、男性の思考が流れ込んできた。
(いい店だな。店も店員の子も雰囲気がいい。俺もこんな風に入りやすくてふわっとした店にしたいな。この子がエプロンを脱いですぐ、気軽に来られるような……)
 優しく、温かく、希望に満ちた心の声だった。
 ──きっとこの人のお店は繁盛するわ。
 花を手渡し自動ドアの間近まで見送る。男性は花を車に積み込むと、運転席から笑顔で亜芽里を見上げた。
「亜芽里ちゃんだっけ? 君も髪切る時はうちで頼むね!」
「はい、ぜひ」
 週末にはホワイトデーがあり、プレゼント用の花を求めるからか、その後も続々と客が来店し、はっと気が付くともう一時半になっていた。
 ──そろそろお昼にしようかな。
 フラワーショップクレイは両親と暮らす自宅の一軒家から三分の距離にある。節約のためにもと昼食を取りに戻ろうとして、馴染みのある深い響きの声に名前を呼ばれた。
「亜芽里、いるか?」
「えっ、大和君?」
 自動ドアが開き長身痩軀の男性が店内に足を踏み入れる。男性は亜芽里を見つけすぐにカウンターの前に立った。亜芽里とは頭一つ分以上の身長差がある。頭は小さく、足が長い。腰の位置が高いからか、スタイルのよさが際立っていた。
「元気だった?」
 切れ長の目が細められる。チョコレート色の瞳の知的な印象の端整な顔立ちだった。スクエア型の黒縁眼鏡をかけており、モダンで洗練された雰囲気がある。整えられた眉と通った鼻、薄い唇は古き良き時代の育ちのいい文学青年を思わせた。スタンドカラーのシャツに着物を羽織り、袴を穿く書生スタイルが似合いそうだ。
 ラフな髪型だがだらしない印象はない。グレーのジャケットに黒いTシャツ、ジーンズとカジュアルだが上品にまとめているからだろう。
 亜芽里は「うん、元気、元気」と微笑んだ。
「久しぶりだね。同じ都内なのに」
「父さんと母さんがたまには帰れってうるさくてさ。最近やっと仕事が一段落付いたから」
「校了したの?」
「うん」
 亜芽里は「あっ、そうだ」と声を上げた。エプロンのポケットからスマホを取り出し、電子書籍の画面を開いてみせる。
「昨日から大和君の新作読んでいるよ! ほら、民俗学者の先生が主人公のシリーズの」
 男性は途端に決まりが悪そうな顔になった。
「いまだに亜芽里に読まれていると思うとなんだか照れるな」
「もう、今更何言っているの。私は中学生の頃から大和君の読者じゃない」
 この文学青年風の美青年──源大和と亜芽里は実に生まれて以来、二十五年に亘る付き合いである。
 実家が隣同士だったということもあって、お互いの両親は二人が赤ん坊の頃から顔見知り。大和が遅生まれ、亜芽里が早生まれで約一歳の年齢差はあるものの、幼稚園、小学校、中学校までは学校もクラスも同じだった。二人とも一人っ子だったからか、兄妹のように仲がよい幼馴染みだった。
 しかし、高校からは進学校に女子校と進路が分かれ、それぞれが男性らしく、女性らしくなるごとに会う機会がガクッと減った。
 それでも、時々食事くらいはしていたのだが、大学時代に大和が本名でミステリー小説の大型新人賞を受賞。瞬く間にベストセラー作家となり、数年前高級住宅街のマンションに引っ越して以来、LINEでのやりとりがメインになっていた。
 大和は苦笑しつつ亜芽里を見下ろした。
「亜芽里、今暇か?」
「そろそろお昼にしようと思っていたところ。一時間くらいなら大丈夫だよ」
「じゃ、メシに行かないか。奢るからさ」
「ほんと? ありがとう! じゃあ、木曜軒のオムライスがいいな」
「チョコレートパフェもだろ?」
「えっ、いいの?」
 木曜軒はこの下町にある昔ながらの洋食店だ。幼い頃には家族ぐるみで、高校生からは大和と二人でも時々通った。
「ああ、なんだったらクリームソーダも」
「太っ腹だね」
 亜芽里は店内の掃除をしていた須賀に声をかけた。エプロンを外しカウンター下の戸棚に入れる。作業で汚れたジーンズに白シャツのカジュアルなスタイルだったが、まったく気にならなかった。
「須賀ちゃん、私休憩もらうね」
「あっ、はい。どうぞ」
「じゃあ、俺外で待っているから」
 須賀は大和が店の外に出るのを見送ってから、興奮した面持ちで亜芽里ににじり寄った。
「亜〜芽〜里〜さ〜ん」
 スマホの画面を突き付けられ何事かと目を瞬かせる。先日発行された女性週刊誌の電子書籍版が表示されていた。
「あっ、これ、大和君だ」
 有名脚本家と大和が対談している。かしこまった表情に笑ってしまった。
 ──昔の大和君みたい。中学時代、いつもこんな顔だったよね。
 須賀が「大和君だ、じゃありませんよ!」と騒ぐ。
「源大和がどうしてこんなところに来るんですか!?」
「どうしてって……私たち幼馴染みだから」
「おっ、幼馴染み!? な、なんていいポジション……。で、どんな関係なんですか!?」
「だから、幼馴染み。二十五年も一緒だともう兄妹みたいなものね。須賀ちゃんが期待しているようなことはなんにもないよ」
「……」
 亜芽里の言葉に嘘がないのを感じ取ったのだろう。「私なら絶対にこの機会を逃さないのに……」と唸っている。
 亜芽里はこれはまずいと先手を打った。
「須賀ちゃん、ごめん。大和君の紹介はできないよ?」
「ええっ!? どうしてですか!?」
「大和君そういうの嫌がっていて。有名になってから苦労したのよ。会ったこともない親戚やら友人やらから連絡が来たり」
「あ〜、ありそうですね〜……」
 須賀はがっくりと肩を落としモップがけを再開した。
「はいはい、わかりました。仲良くどうぞ」
「ごめんね!」
 パーカーを羽織ってから自動ドアを潜り、待っていた大和とごく自然に肩を並べる。
「行こっか」
「ああ」
 木曜軒までは徒歩五分。その間、お喋りしながら下町の景色を楽しむ。久々に会ったので話したいことがたくさんあった。
「この辺の景色ってあんまり変わらないな」
「そうだね。あっ、でも、あそこの富田酒店は息子さんに代替わりで店舗をリニューアルして、リカーショップ富田に変わったよ」
「おっ、確かに。隣のレストランは前なかったよな?」
「うん。土地を買い取って、富田のお酒を使ったダイニングバーにしたんだって。京都の料亭に板前の修業に出ていた弟さんが帰ってきたから」
「なるほど、兄弟で商売しているわけだ」
 木曜軒は昭和四十六年の創業で、レンガ造り風の壁がレトロな雰囲気だ。使い込んだショーケースには古びた食品サンプルが並べられている。ナポリタンスパゲティにハンバーグ定食、エビピラフとカラフルで、子どもの頃は見ているだけでも楽しかった。店の前にはミニ黒板が立てかけられ、本日のランチメニューが書かれている。
 カランカランとベルを鳴らしてドアを開けると、もうランチのラストオーダーが近いからか空席が半分。二人で来た際のいつものテーブル席に腰を下ろした。オーダーを取りに来た経営者兼シェフの妻、美千代がぱっと顔を輝かせる。
「あらあら、大和君じゃないの。帰ってきたの?」
「一時的にですが……」
「今日はやっぱりシーフードカレーセット? で、亜芽里ちゃんはオムライスセット?」
「はい、お願いします。亜芽里、飲み物は何にする?」
「紅茶。大和君はコーヒー?」
「うん。で、食後に二人ともチョコレートパフェで」
 美千代が立ち去るのを見送り、目を合わせて笑い合った。
「私たちのこのメニュー、もうずっと決まっているよね」
「やっぱり木曜軒はこれだってなるんだよな」
 昔話をネタに盛り上がる。
 ──大和君が来てくれて助かったな。
 そうでなければ失恋を思い出し落ち込んでいただろう。
 その後とりとめもなく雑談をしていたのだが、途中、大和がふと「そういえば」と話題を変えた。
「前、気になる奴がいるって言っていただろう。……あいつとはどうなった?」
「ああ、鈴木さんのことね」
 せっかく忘れていたのにと苦笑する。
「どうなるとかそんなのじゃなくて、私の片思いだったから」
 鈴木は同じく都内で生花店を営む三十歳の男性だ。亜芽里がまだ競りに慣れていない頃に市場で知り合った。父が同行していなかった時には、代わって先輩として丁寧にノウハウを教えてくれたものだ。
「鈴木さん、先月結婚してね。だから、もう告白するとかそういう段階じゃなくて」
 一度食事に誘ってみようと覚悟を決め、その日勇気を出して口を開く前に、「俺、結婚したんだ」と笑顔で報告されたのだ。「おめでとうございます」以外に何も言えなかった。
「そうか……。鈴木ってそいつはどんな奴だったんだ?」
 大和に問われ首を傾げる。
「そうだね……。親切で優しい人だったよ」
 鈴木は表裏のない性格で、老若男女誰に対しても親切だった。だからこそ、亜芽里も期待してしまった。
 大和はなぜか複雑そうな表情になっている。
「親切で優しいか……。それ以外のスペックは?」
 亜芽里はスペックと尋ねられ目を瞬かせた。
「えーっと……スペックって……」
「外見とか職業とか。年収だって大事だろ」
「職業は私と同じ花屋さん。外見は普通だよ。年収は……さすがに知らないけど、私よりは多いんじゃないかな?」
 顔もスタイルもこれといって特筆すべきところはなかった。
「でもね、すごく笑顔が優しかったんだよね。それに、表裏がなくて真っ直ぐな人で」
 大和の表情がふと曇った。
「……表裏がないか」
「──はい、先に飲み物とサラダね」
 美千代の声と目の前に置かれたコーヒーと紅茶、サラダに思考を中断される。その後紅茶に角砂糖とクリームを混ぜつつ「うん、そう」と苦笑した。
「私、いつもそこから好きになるから」
 亜芽里には物心付いた頃から人に触れると、考えていることがわかる不思議な力があった。
 亜芽里にとっては心の声が聞こえるのは当然で、てっきり皆同じものだと思い込んでいた。幼稚園の頃ある事件がきっかけで、大和に指摘されるまで不思議にすら思わなかった。
 その後大和に他言しない方がいいと助言され、インチキ超能力者扱いされるのも嫌なので、今になるまで何も聞こえていないように振る舞っている。つまり、亜芽里が接触テレパスだと知っているのは大和だけだった。
 大和はコーヒーをブラックのまま一口飲んだ。
「……亜芽里ってほんと中身を見て男を好きになっているってことだな」
「う〜ん、どうなんだろうね」
「亜芽里の年なら結婚も意識するだろうから、しっかり仕事をしているかとか、将来性があるかとか、金があるかとか、そういうところを見るんじゃないか」
 大和に諭されると苦笑するしかない。
「でも、それは私の基準じゃないから。結婚は……まあご縁があればね」
 いくらイケメン・高学歴・高収入・高身長でも、恋人になる、あるいは結婚するとなると、やはり人柄が決め手だと亜芽里は思う。そうしたある意味目に見える条件より面倒な能力のせいで、二十五年間彼氏ができたことはなかった。
 大和のチョコレート色の瞳に濃い影が落ちる。
「……」
「大和君、どうしたの?」
 大和はテーブルの上に手を組み、テーブル越しに真っ直ぐに亜芽里を見つめた。
「大和君?」
 幼馴染みのいつにない視線の強さにドキリとする。
「実は、今日どうしても会いたかったのは、亜芽里に話したいことがあったからだ。実は俺、青木賞の受賞が決まった」
「わあ、おめでとう」
 青木賞は大衆性のある小説に贈られる権威ある文学賞だ。大和は以前執筆した日本とニューヨークの二ヶ国を舞台にしたミステリーが受賞したのだと語った。
「それで、来月新作の出版記念を兼ねた祝賀パーティがあって、パートナーを連れていくことになってさ。そのパートナーを亜芽里、君に頼みたいんだ。今俺誰とも付き合っていないから」
「えっ……?」
 亜芽里の脳裏にパーティのイメージが浮かぶ。
 邸宅なりホテルなりとにかく豪奢な会場で、スーツやドレスを身に纏った紳士淑女の面々が、ワイングラス片手に洗練された会話を楽しんでいるのだ。
 はたと我が身を見下ろす。
 化粧気のほとんどない平凡な顔立ちに、胸だけ大きなアンバランスなスタイル。水揚げ作業で荒れているだけではなく、花の棘や葉で切り傷だらけの手──人気作家のパートナーになるなどありえなかった。
 慄いて首を小さく横に振る。
「ごめんね。ちょっと無理だよ」
「どうして?」
「だって、きっと高いホテルでするんでしょう? 高価なドレスなんて持っていないもの」
 大和は「大丈夫」と微笑んだ。
「もちろん、ドレスやアクセサリーは俺が買うから。なんだったら和服でもいいし」
「大和君、話聞いていた? 私美人じゃないでしょう?」
 大和は高校生になって以降、みるみる身長が伸びただけではなく、中学生までの陰キャオタク少年からイケメンへと成長した。現在は女性ファッション誌に掲載されるレベルだ。そんな大和のパートナーに相応しいとは思えなかった。
「連れていくならそれなりの人じゃないといけないでしょう? 私じゃあ……」
 チョコレート色の瞳が甘く煌めく。
「……亜芽里はすごく可愛いよ。俺、髪とかすごく好きだけどな。栗色でふわふわしてて手触りがよさそうで……」
 そんな大和の一世一代の褒め言葉も亜芽里の耳に入らなかった。

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