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私をさらって、死ぬまで愛して

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書籍紹介

好きになるのに理由はいらなかった

「私を誘拐して」結婚を控えた知香は、年上の幼馴染み・翼に願い出る。乞われるまま彼女を連れ出す翼。とある過去が原因で想いを伝えられずにいた二人は、旅を続ける間に少しずつ距離を縮めていく。「俺以外のものにならないでくれ」きつい抱擁に身体の芯が熱くなる。官能をくすぐる愛撫に溢れる蜜。硬い肉棒に貫かれれば悦楽に酔いしれて――。遠回りした初恋の行方は。

ジャンル:
現代
キャラ属性:
上司・先輩
シチュエーション:
幼馴染・初恋の人 | 船上・旅もの | お風呂・温泉
登場人物紹介

高遠翼(たかとうつばさ)

東京での仕事を辞め、地元・群馬に戻ってきたばかり。『何でも屋』を始めたところ、最初の客で幼馴染みの知香から「誘拐して」と言われ……?

野地知香(のじちか)

地元で大きな力を持つ建設会社の社長令嬢。窮屈さを感じながらも、父の言いつけに従って生きてきた。今度、父の勧めで見合いをする予定。

立ち読み







静岡県警などは二十五日午後、行方不明になっていた十一歳の女児を保護したと発表した。女児は群馬県前橋市の小学六年生で、今月二十二日に修学旅行で伊豆を訪れ、二十三日から行方がわからなくなっていた。衰弱した様子だが、目立ったけがはないという。
『××新聞』二〇〇七年五月二十六日朝刊







 国道沿いにある喫茶店の客席は、八割がた埋まっていた。全国に支店があるチェーン店だ。女性客が多いが、平日だからサラリーマンの姿もチラホラある。
 俺は窓際の席に座り、依頼人を待っていた。
 時刻は午後二時五十分。約束は、三時だ。
 メニューにあった、十月限定のマロンづくしのパフェというのがやたらと美味そうだったが、仕事で来たのだからと思い、アイスコーヒーだけで我慢した。
 ガムシロップを三つ入れたアイスコーヒーを飲みながら、数日前に作ったばかりの自分の名刺を一枚取り出す。
『便利屋たかとう 代表取締役 高遠 翼』
 肩書きだけは大層だが、従業員はひとりもいない。事業所の住所は、自分がひとり暮らししているアパートだ。部屋の中には、引っ越してきてからまだ一度も開けられていない段ボール箱がいくつも積まれている。
 東京から前橋に戻ってきて、今日で一週間になる。市内の一軒家やアパートに便利屋のチラシをポスティングしはじめてからは、三日。問い合わせの電話は何件かあったが、正式な客がついたのは初めてだった。
 今回の仕事はメールフォームからの依頼で、明日から三日間拘束、頼みたいことは男ひとりでできる程度の軽作業だという。あまりにザックリした内容だったから、冷やかしかと思ったが、前払いでサラッと二十万円振り込まれたので、本当に客のようだ。
 しばらく生活に困らないだけの貯金はあるけれど、開業したてでなにかと入り用だから、まとまった額の入金は素直にありがたかった。
 依頼人の名前は、『ヤマダハナコ』と書かれていた。
 百パー偽名だろうが、詮索する気はない。できれば違法性のない依頼でありますようにと願うだけだ。
 アイスコーヒーを飲み切り、三時を五分ほど過ぎたときだった。
「──お待たせしましたー」
 現れた女を見て、俺は弾かれたように天井を仰いだ。
「ヤマダハナコ、でーす」
「おまっ、ふざっけんなよ」
「あ、ブレンドください」
 通りかかった店員にコーヒーを注文して、髪の長い派手な顔をした女は、しれっと向かいの席に座った。
 俺は女を、よく知っていた。
 野地知香。
 前橋に本社がある老舗の建設会社、野地建設の社長の娘だ。そして俺の父親は、野地建設で社長の秘書として、長年働いている。
「帰る」
「翼もなんか飲む?」
 知香が俺の前にある、氷しか入っていないグラスを指さす。
「聞けよ」
「明日から、てか今日から四日間、よろしくね」
 両肘をテーブルにつき、顎の下で手を組んで、知香が微笑む。ごり押しすれば、なんだかんだ言っても自分の望み通りに俺が動くと思っている顔だ。
 俺は小さく舌打ちをして、知香から目を逸らした。
 その通りだからだ。
「……それで?」
「けっこう久しぶりだよね。前に会ったの、三年前くらい? 翼、全然こっち帰ってこないんだもん」
 俺は思い出話がしたいわけではなかった。
「俺に何をさせる気だ、二十万も払って」
 コーヒーが運ばれてきて、少し間があいた。
 店員が立ち去るのを見送ってから、上目遣いで俺を見て、とっておきの秘密でも打ち明けるみたいに、知香が言う。
「私を、誘拐してもらおうと思って」
「は?」
 俺はきつく眉を寄せた。
「たちの悪い冗談はよせ」
 知香が言うと、シャレにならない。
「冗談じゃなかったらどうする?」
「110番する」
 即答してスマホを手に取ったが、知香は動じなかった。
「じゃ、冗談ってことでいいよ」
 俺は窓の外に目をやって、溜め息をついた。
 ストローを咥えて吸ってみたが、水が少し飲めただけだった。
 行儀悪く、ストローの端をギリギリと齧る。
「行儀悪いよ」
「うるせえよ」
 心を決めるまで、そう時間はかからなかった。
 知香は、一度言い出したら聞かない。そのくせ、飽きっぽい。
 なにがしたいのかさっぱりわからないが、どうせ途中で飽きて、やっぱりもう帰るとか言い出すだろう。
 俺は、テーブルに置いてあった自分の名刺を知香の方に押しやって、立ち上がった。
「行くぞ」
「私まだ、コーヒー飲み終わってないんですけど」
 文句を言いながらも、知香はついてくる。
 金はもらったし、他に仕事は入っていない。久しぶりに知香の気まぐれに付き合ってやるのも悪くないだろう。

 店の前に駐車していた、俺の車の鍵を開ける。
「乗れよ」
「だっさ……」
 知香がわかりやすくドン引きしている。
「どこがだよ。新車だぞ」
 ピカピカの軽トラだった。
 白い車体には、黒く太い字で『便利屋 たかとう』と書いてある。
「だいたい、なにこれ」
 知香が指さしたのは、屋号の隣に描かれているマスコットキャラだ。ちなみに俺が自分でペンキを塗って描いた。名刺にも小さく載せている。
「生き物かどうかすらわかんない。箸が刺さった、おはぎ?」
「馬鹿だ馬鹿だとは思っていたが、ほんとに馬鹿だな、お前は」
 俺はやれやれと首を振った。
「どう見たって、キウイだろうが」
 ニュージーランドに生息する、キウイフルーツの語源になった鳥だ。鳥のくせに飛ぶことができないなんて、自分にぴったりだと思って描いた。
「この絵でわかるわけないでしょ」
 知香は呆れた顔をして、俺に車のキーを投げてよこした。
「私の車、運転して」
 知香の視線を追うと、BMWのZ4が停まっていた。2シーターのオープンカーだ。青空みたいな色をしている。
「新車か」
 俺と同じだなと言ってやろうかと思ったが、やめておいた。
「誕生日に、パパが買ってくれたの」
 知香は子供の頃から、父親にねだればなんでも買ってもらえていた。いまもそれは変わらないらしい。
「軽トラ、ここに置きっぱなしにはできないだろ」
 さすが田舎、東京と違い駐車スペースにはかなり余裕があるけれど、最長で四日間も停めていたら、さすがに警察を呼ばれるだろう。
「いいよ、ここ、うちの店だから」
 フランチャイズなのか。
 それならまあ、と思い直し、俺はZ4の運転席に乗り込んだ。ありがたいことに、右ハンドルだった。
 知香は助手席に座り、サングラスをかけた。FENDIだ。さまになりすぎていて、腹が立つ。
「お忍べてない女優か、お前は」
「え、なに?」
「なんでもない。それで、目的地は?」
「伊豆に行って」
 サラリと言われ、俺は真顔になった。
「……悪趣味なことを言うな」
「伊豆のみなさんに失礼でしょうが。いいところだよ、伊豆は。温泉あるし、魚は美味しいし」
 そういうことを言っているのではない。
「とりあえず、今日は軽井沢まで行って。うちの別荘に泊まろ」
 知香はバックミラーの上に手を伸ばし、車のルーフを開けた。
「おい、寒い」
「涼しい方が眠くならなくていいでしょ」
「……シートベルトしろ」
 投げやりに言って、アクセルを踏む。
 駐車場の中を進み、道路に出ようと右にウインカーを出したら、なぜかワイパーが動き出した。
「なんだこれ!?」
 動揺する俺を見て、知香はクスクス笑っている。
「この車、ハンドルは右だけど、ワイパーとウインカーの位置は左ハンドルの車と同じなんだよね」
「めんどくせえ車だなっ」
 悪態をつきながら、今度こそウインカーを出し、なんとか国道に出る。



 一昔前のマンガみたいだなと、私は思った。
 中学の体育館裏に呼び出され、女子の先輩三人に囲まれて「一年のくせに生意気なんだよ」とネチネチ説教されている。
 生意気ってなんだ。
 全然納得いかない。
 自分の性格がいいとは言わないが、初対面の三年生たちからいきなり文句を言われなければいけないほど、ねじ曲がっているとも思わなかった。
「いま化粧なんて、してません」
 本当だった。
 私は地顔が派手だ。マスカラをつけなくても睫毛は濃くて長いし、唇には赤みがある。
「うそ」
 先輩のひとりが、食ってかかるように一歩前に出た。
「私見たもん、日曜に高崎にいたでしょ、べたべたに塗りたくった顔で」
 日曜は、高崎から新幹線に乗って、東京へ服を買いに行った。
 渋谷や原宿の店を回るんだから、そりゃオシャレして行くに決まってる。学校に行くのとはわけが違う。
 TPOに合わせて、ってやつだ。
「休みの日に、私が化粧してようがスッピンだろうが、センパイがたには関係ないですよね?」
 本音では、平日だって先輩たちには関係ないだろと思っている。私が学校に化粧してきたとして、叱る資格があるのは先生だけだ。
 しかし先輩たちはそう思ってはくれないらしく、三人の目がつり上がった。真ん中と右の二人は、コソコソとなにやら相談しはじめている。人数を増やすつもりなのか、怖そうな男でも呼ぶのか。
 めんどうなことになったなと、私は内心うんざりしていた。
 これだから田舎の公立校は嫌なのだ。
 学校では、目立ちたくない。
 卒業まで当たり障りなく、無難に日々を過ごせれば、それでよかったのに。
 うんざりしているのは、たぶん顔に出てしまっているだろう。
 しおらしくしていた方が、このくだらない時間が早く終わるのはわかっているが、そうできるほど私は大人ではなかった。
 走って逃げてしまおうか。
 足の速さには、あまり自信がないけれど。
 そんなことを考えはじめたとき、睨んできていた先輩たちが、全員ハッとした顔をした。視線は私を通り越して、もっと後ろに向いている。
「ん?」
 振り返って、私はホッとした。
 三年生の高遠翼が、こちらに向かって歩いてきていた。
「翼ーっ」
 私は大きく手を振った。
 え、呼び捨て? と、三人がざわめく。
 翼は私の横まで来て、先輩たちと私の顔を交互に見比べた。
「なにやってんだ、お前」
「ちょっと注意されてただけだよ」
「そっか」
 翼は無表情だった。怒ってもイラついてもいない。
「こいつ、生意気だもんな」
 翼は親指で私を指して、先輩たちに言った。
 ひどい。
「わ、私たちは、べつに──」
「でもこれからは、こいつがなにか注意しなきゃいけないようなことをしたら、まず俺に言ってくれないか、俺が叱っておくから」
 淡々とした、それでいて有無を言わせない口調だった。
「高遠くん……」
 三人組の一番左が、傷ついたような顔になる。
 私はそれで、自分が呼び出された本当の理由を理解した。おそらく学校内で、翼と親しげに話しているところを見られたのだろう。
「帰るぞ、知香」
「はーい。それじゃ、失礼しまーす」
 先輩たちに軽く頭を下げて、翼と並んで歩く。
 背中にグサグサと、けっして好意的とはいえない視線が突き刺さるのを感じた。
 ざまみろとまでは思わないが、正直気分はいい。
「左にいた人、翼のこと好きみたいだね」
「物好きだな」
 翼はどうでもよさそうな顔をしている。
「モテモテじゃん」
「うるせえよ」
 さっきの先輩だけではない。私のクラスでも、翼のことをかっこいいと騒いでいる子たちを見た。
 真横にいる翼の顔を見上げる。
 翼は、目立つ。顔がよくて、背が高いからだ。そして顔がいいと、無愛想という欠点も「チャラチャラしていない」と、周囲が勝手に長所に変換してくれる。
 帰宅部のくせに運動神経抜群で、定期テストの結果が廊下に張り出されるといつも一番右に名前があるのも、注目を浴びる要因だろう。
 まるでマンガの登場人物だ。
「さっきの人たちに、誤解された気がする」
「誤解?」
「翼と私が付き合ってるって」
 そう言うと、フンッと鼻で笑われた。
「ねえよ」
「だよね」
 翼とは、そういう仲ではない。
 では、どういう仲なのかと問われると、返答に困るけれど、友達という言葉で言い表すのは違う気がしている。
「ねえ、ソフトクリーム食べたい」
「肥えるぞ」
 翼は前を向いたまま、ボソッと言った。
「私さ、日曜に渋谷行ったとき、スカウトされちゃった」
 私は翼の前にまわり、勝ち誇った笑みを浮かべた。
「すごいな、どこの球団だ?」
「野球じゃないっ、モデル! スタイルいいって褒められたのっ」
「そりゃよかったな」
 翼はまるで興味なさそうな顔をしている。
 いつものことなので、私は特に気にしない。
「バニラにしようかな、チョコにしようかな、間をとってミックスにしようかな」
「買い食いは禁止だ」
 口ではそう言っているが、翼の足はもう、自宅の方向ではなく、フードコートのあるショッピングセンターの方へと向かっている。
 翼は、私に甘い。
 出会った頃は、全然そんなことはなかった。六年前。私は小学校に上がったばかりで、翼は三年生のときだった。
 最初はどちらかというと、嫌われていたと思う。
「翼はクレープにしてね。チーズケーキとイチゴ入ったやつ。三口くらいもらうから」
 私が三歩で歩く距離を、翼は二歩で歩く。背が高いと脚の長さも違うのだ。
 私は翼の歩く速さに合わせてあげたりはしないから、翼は私といるとひとりのときよりゆっくり歩く。
「通はバターと砂糖だけで食うらしいぞ、クレープ本来の生地の美味さが味わえるとかっつって」
「通じゃないし。クレープはクレープって名前だけどクレープ自体は主役じゃなくて脇役でしょ。主役は巻かれたものの方で、クレープは器」
「その理屈だと、ソフトクリームは、コーンって名前じゃなきゃおかしいだろうが」
 どうでもいい話をして、だらだら歩く。
 ショッピングセンターに着いたら、翼は、チーズケーキとイチゴの入ったクレープを買うだろう。そして私に満足するまで食べさせてから、残りをモソモソと自分で食べる。
 この人はいったいどこまでなら、わがままを聞いてくれるんだろうと、ときどき思う。
「私、東京行きたいなあ」
 立ち止まって言ってみた。
「日曜に、行ったんだろ」
「そういうんじゃなくて」
 翼は立ち止まらなかった。
 広い背中が私から離れていく。しかたなく、後を追った。
「ちょっとオシャレしたくらいで、ごちゃごちゃ言われないところに住みたい」
「またごちゃごちゃ言われたら、俺を呼べ」
 黙らせてくれるらしい。
 でも、翼がいつか私を東京に連れ出してくれることはないようだ。

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