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和菓子屋甘恋新婚日記
幼馴染と最高に幸せな夫婦になりました

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書籍紹介

お前とだったら、どんな道も歩いて行ける

老舗和菓子店の跡継ぎ・恭平とは生まれた頃からの許婚。親が決めた結婚だけど、ずっとずっと好きだった――。そっけなかった彼に想いを打ち明ければ、驚くほど甘い初夜が待っていて!? 「もう絶対離してやれん」情熱的なキス、強引だけど優しい愛撫。熱い楔で繋がれば、全身が甘く蕩けて……! 大好きな幼馴染みとやっと本当の夫婦に。長い片想いからの、極上溺愛新婚生活!

ジャンル:
現代
キャラ属性:
クール
シチュエーション:
新婚 | 幼馴染・初恋の人 | 甘々・溺愛
登場人物紹介

谷崎恭平(たにざききょうへい)

京都の老舗和菓子店の次男。跡継ぎにと望まれているが、本人は父の会社で働いていたいと思っている。琴音とは幼馴染。

笹原琴音(ささはらことね)

大阪の老舗旅館の娘。谷崎家とは母親同士が親友だったため、生まれる前から付き合いがある。幼い頃からずっと恭平を好きだった。

立ち読み

 快晴の京都。四条の大通りの賑わいを抜けた先にある寺社の境内で行われている慶事に、参拝客がスマートフォンを向けている。
「見て、結婚式やってる」
「うわぁ、すごい。花嫁さん綺麗だね」
 初夏を前にした晩春の吉日、爽やかな風が吹いている。おかげで、色打掛の下の肌は汗ばんではいても、辛うじて暑苦しいほどではない。
 大阪老舗旅館の一人娘・笹原琴音は、今日、式を挙げて谷崎琴音となる。
(真夏でなくてよかった)
 もっともこれが終わっても、まだ親類が集まっての披露宴が待っている。
「大丈夫か、琴音」
 紋付袴で、むしろ自分よりも暑そうな姿で隣に立つ新郎・谷崎恭平に声をかけられて、琴音は彼を見た。
 汗ばんでいるのを察したのか、彼は手にしていた番傘を、琴音側により傾かせた。
 元々は日よけではなく、無遠慮に撮影する観光客達から、琴音の顔を見えにくくするために彼が用意したものだった。今は本来の役割を果たしている。
「うん、平気やよ」
 いつもは下ろしている恭平の前髪が、今日は後ろへ流してある。
 新郎の恭平は、琴音が生まれた時からの幼馴染だ。四つ離れており、琴音は大阪、恭平は京都で生まれ育ったため、同じ学校へ通ったことはない。
 母親同士が学生時代の親友で、幼い頃は何かにつけて家族ぐるみで旅行したり、泊まりで互いの家を行き来したりしていた。
 しかし琴音と恭平は、単なる幼馴染ではなかった。
「今日一日の辛抱やからな」
 恭平が囁く。琴音は「うん」と頷いた。
 これまでに準備にかけた時間を思えば、あと一日で終わる。
 長い、長い──婚約期間。
 明日から、琴音は京都で二二〇年続く和菓子の老舗『丹寿庵』を営む、谷崎家の一員として生活する。
 恭平と琴音は、生まれた時からの許婚だった。
 この人の妻になるんだと、ずっと想い続けてきた。
(嬉しい……)
 ようやく夫婦になったのだ、と、目の奥が熱くなった。
 大好きな人の妻になれた。
 だがこぼれ落ちそうになった涙を、とっさに袖口で拭った時だった。
「これで母親達への義理は果たした。もうええやろ。すぐに離縁したる」
 酷く穏やかで、そして冷たい声がした。
「琴音、お前の我慢も終いや。互いの親の決めた約束事に、これ以上付き合う必要はない」
「……はい」
 いつだっただろう。
 彼に望まれていないと、わかってしまったのは。
 流れていた汗が引くほどに、体が冷えていくのを感じた。
(うちは嬉しいのに)
 今にも心臓が凍りそうな心地の中でも、琴音は紅く塗られた唇の端を下げなかった。
 恭平はもちろんのこと、涙を浮かべて喜び合っている両家の親に、この日のためにわざわざ集まってくれた親族、従業員、得意先の人々。そして遠巻きに見つめる観光客達。
 誰の目にも、幸福な花嫁と映らなくてはいけない。
 たとえ間もなく離婚届を突きつけられるのだとしても、せめて今日だけは笑っていなくてはならない。
 無遠慮なスマートフォンの電子音だけが、カシャカシャと耳に届いていた。

    ***

 披露宴が終わると、夜は料亭の広間を貸し切っての酒宴となる。
 いわゆる二次会というものだが、新郎新婦の友人達はいない。両家の親類のみが参加し、改めて親睦を深める。今後の交流のためで、欠かすことはできない。
 ましてや、琴音の夫になった恭平は実質的な跡継ぎなのだ。
「ああ、ほんまよかったわあ」
 ふっくらとした白い頬を酒で真っ赤にして、ニコニコとしているのは、琴音の母・笹原香穂子だ。
 琴音の実家は、大阪南部で戦前から続く旅館で『仙斎荘』という。歴史でいえば、琴音の婚家には遠く及ばないが、顧客には著名人も多い。母は先代の一人娘として生まれた。つまり生まれながらの女将だ。
 だがこの結婚は、ビジネス上の利益のためのものではなかった。
「ほんまやわ、これでうちも安心できるわ」
 母の隣で、おっとりとした声音でため息まじりに答えたのは、細身でしっとりとした美女──恭平の母親・谷崎民代だ。
「うちらの夢が叶ったんや」
「長かったわ。あれからもう三十年以上やもの」
「最初の子達では、叶えへんかったもんなぁ」
「約束、果たせたなぁ」
 黒留袖の二人は、しきりに頷いている。琴音は、上座で恭平と並んで座りながら、その様子を見つめていた。
 二人の背後には、丹寿庵において最も古株で腕利きの職人・寅司による見事な工芸菓子が飾られている。青々とした松にとまる、飴細工の夫婦鶴だ。よくある鶴亀でなく鶴のみなのは、丹寿庵の「丹」が鶴の紅色からとられているからで、慶事、特に跡取りの結婚式では必ず新しいものが作られることになっている。
 慶事ごとに作られるこの工芸菓子は、その都度コンクールにも提出され、いつも優秀な賞を取る。七十代半ばの寅司は、恭平の母の代でも夫婦鶴を作成し、その時も金賞を受賞していた。
 琴音も前日にしっかり見せてもらったが、ため息が出るほど作り込みが細かく、何よりも雌鶴の飴で作られた瞳が、夫である鶴を見つめている表情が切なく映った。この結婚がただ喜びだけに浸って良いものであれば、その場で涙を流していたかもしれない。
 それほど美しいのに、心はどうしても恭平の方にばかり向いてしまう。
(お母さんも、民代おばさまも嬉しそう。そうよね。だってずっと言っていたもの)
 香穂子と民代。
 二人は大阪と京都と生まれ育った場所は違うが、同じ高校で青春を過ごした親友同士だ。
 しかもただの親友ではない。
『うちらはいずれ家を継ぐ。結婚して子どもを産まなくてはいけない』
『決められた道しか歩めないなら、せめて子ども達同士を結婚させよう』
 いつまでも親友でいたい──その証として、子ども同士を婚約させたのだ。生まれる前、それこそ結婚する前から。
「ほんまふざけとる」
 横に座る恭平が呟く。彼にも母親達の言葉が届いているようだ。
 恭平は、朝早くからの疲れを感じさせず、まっすぐに背筋を伸ばして座っている。日舞や茶道などの心得があるだけでなく、幼い頃から空手を学んでいた。本人はプロになるつもりがなく最終的にその道へ進まなかったが、今でも身体を鍛えており、姿勢も表情も崩さずにいられるだけの体力がある。
 だがその彼は、母親達に厳しい視線を向けていて、琴音はぞっとした。
 まるで百年の敵を見るかのような顔だった。
「夢がなんや、約束がなんや。許婚なんていつの時代の話や」
「恭──」
「自分らかて、親の決めた人生に嫌気さしてこないな約束したんやろ……矛盾しとる」
 視線を落とすと、膝の上で握られていた恭平の拳が震えていた。
 ついその手を、包み込んであげたくなった。だが右手を動かそうとして、琴音は思いとどまった。
 母親達を敵視しているなら、許婚である自分も恭平にとっては忌まわしい存在に違いない。
(今日が終われば、きっと離婚になる)
 すぐというわけではないだろうが、恭平は最初から夫婦生活を送るつもりなどないのだ。
(……辛い)
 しくしくと、胸どころか全身が痛い。
 疲れではなく、悲しみでいっぱいだ。
(恭平がうちのこと、嫌いなのは知ってる。でも、結婚したらほんの少しでも……って思っていたのに)
 夫婦として生活したら、彼も自分をもっと見てくれるようになるのではないかなど、ただの期待でしかなかった。だがその期待すら、今はもう持てない。
「よお、恭平!」
 声がして、琴音は顔をあげた。恭平の隣に、一人の青年が立っていた。
「兄さん……」
 谷崎家の長男で、恭平の兄である清市だった。琴音は座ったままだが、会釈をした。清市も「いや、やっぱ綺麗だねぇ」と言って頭を軽く下げてきた。
 恭平と六つ離れた三十一歳で、本来なら彼が丹寿庵を継ぐ立場だった。だが、大学にいる間に起業し、卒業後はさっさと独立してしまった。琴音も詳しい事業内容は把握していないが、ウェブサービスの会社を経営していると聞く。国内だけでなく海外へも積極的に飛んで、今日はかなり無理矢理スケジュールを空けてくれたようだ。
「やっとこの日が来たな」
「……」
「今日は帰ってきてよかったと思ってる。やっぱりめでたい席はいい」
「……」
 恭平はずっと沈黙していた。琴音も、恭平が何も言わない以上は、会話に加わることもできない。
 正直なところ、琴音は清市のことが少しばかり苦手だった。
 決して悪い人ではない。気さくで心配りもできる人物だ。ただ、しがらみの多い旧家では少し悪目立ちしがちな奔放さがある。それ自体はいいのだが、どちらかといえば人見知りをしてしまう琴音は、すぐに相手の懐に入り込むタイプの清市とは相性がよくなかった。
 だが向こうも向こうで、琴音を異性として見ていない。妹、というよりも親戚の娘程度の感覚で接してくれる。それについては、安心できた。
 つまり、程よい距離感であれば、まったく問題ない相手だ。
 もっとも恭平も、兄である清市とはあまりそりが合わないようだ。
(不思議だけど、うちのお兄ちゃんの方が清市さんと気が合うんよね)
 琴音にも兄がいる。浩輔といい、今は父と一緒に、恭平の親族と挨拶を交わしている。琴音が実家を継ぐ必要がなかったのは、兄・浩輔がすでに経営を任されているからだ。
 清市より一つ下で、彼らもまた幼馴染同士だった。
 琴音と恭平と違い、高校と大学まで一緒の仲なのだが、本人達は親友であるというのはなぜか否定する。ただ馬が合うだけ、というのが彼らの言だ。
 それを親友と言わないのか──と、琴音は不思議だった。
 ともあれ、男同士にはまた違う友情の捉え方があるのかもと考え、むしろ琴音はその関係を微笑ましく思っていた。
「琴音ちゃんを大事にしてやれ」
「……」
 恭平の沈黙に、またも胸が痛む。
 社交辞令ですら、はいと言ってもらえない。それほど嫌われているのか──。
「そこは『はい』やろ、恭平」
 やれやれと清市が肩を竦める。すると、それまで視線を合わせようとしなかった恭平が、ようやく清市の方を向いた。
「俺には俺の考えがあります。兄さんは黙っといてください」
「おお、こわ。ま、お前はオレよりもよう考えているからな」
 そう言って、清市が恭平の肩をぽんぽんと叩いた。恭平が煩わしそうに眉を顰めたのを見て、琴音ははらはらした。だが清市はふっと小さく笑って、元いた席へ戻っていった。
 しばらくして浩輔と飲み出したのを見て、琴音はほうっと息をついた。
(俺には俺の考えって……)
 それはすなわち、昼間に聞いた言葉のことだろう。
『これで母親達への義理は果たした。もうええやろ』
 もうええ、ということは、つまり──。
「琴音」
「は、はい」
 恭平に声をかけられて、琴音は我に返った。
「何ですか、恭平……さん」
 これまで、琴音は恭平のことを呼び捨てにしていた。彼と出逢ったのは、それこそ生まれてすぐだ。成長してからは時々敬語がまじるようになったが、それでも呼び方は変えられなかった。
 だがいくらすぐ離婚するといっても、いつまでもそれではよくない──そう考えて、さん付けをしてみた。
 すると恭平が、また苦々しい表情で眉根を寄せた。
「さんはやめや、恭平のままでええ」
「でも……」
 琴音がなおも躊躇うと、恭平が眉根を寄せたままため息をついた。
「調子狂うんや、お前はそのままでいてくれ……ええな」
「……はい」
 そのままではダメだったから、受け入れてくれないのだろう。そう言いたくても、言えなかった。
 夜は更けていく。祝福の賑わいが遠く、透明な壁越しに聞こえてくるようだった。
 喜びに満ちた彼らを遠巻きに見ているだけ。
 ──ただ、恭平もまた自分と同じ場所にいるような気がする。
 そんな、淡い期待だけはどうしても、琴音は打ち消せなかった。

 

 

 

 今から三十五年前。
 十六歳の谷崎民代は、和菓子の老舗・丹寿庵の一人娘として、京都の私立女子高に通っていた。
 躾教育をモットーとし、良妻賢母を育成することを第一としている。良家の令嬢が多く在学し、進学組の大半は短大へ行って四年制大学へ入る者はごく一握りだった。そして就職も、家業の手伝いが殆どで、いわゆる花嫁修業というものだった。
 家を継ぐか、嫁ぐか。そのどちらかしか求められない。
 表向きは、落ち着いた歴史ある淑女養成学校という印象を受けるところだったが、内部では陰湿ないじめが横行していた。
 引っ込み思案だった民代は、入学してすぐに同級生の標的にされた。
 丹寿庵の跡継ぎ娘という肩書きは役に立たない。むしろいじめが理由で不登校、ましてや辞めるなど世間体も悪いだろうと、誰にも相談できずにいた。
 長くても三年だ。卒業すれば縁も切れる。もしも卒業後、仕事上の取引で会うことがあってもお互いになかったことにするのが、一番円満だ。誰も傷つかない。
 そう言い聞かせて、誰にも見つからないように裏庭の隅のベンチで弁当を広げるのが、日課になっていた時だった。
『あんた、なんでこんなとこで一人で食べてるん?』
 クラスメイトらから無視されていた中、ひょっこりベンチの後ろから声をかけてきたのが──隣のクラスの笹原香穂子だった。
 その日から、民代の毎日は変わった。
 最初は一緒に昼食を食べるようになった。それを見られて、いじめグループ達に絡まれた。
『あんたら! なんでそんないけずするんや!』
 物怖じしない香穂子は、堂々と民代をかばった。それどころか、一年で生徒会入りするほど責任感の強い彼女は、見て見ぬふりをしていた教師達もあっという間に味方につけてしまった。さすがに表沙汰にはならなかったが、民代へのいじめは次第になくなっていった。
 代わりに今度は香穂子が狙われることになったが、負けん気の強い彼女はしっかりと抵抗した。堂々とされると、向こうも面白くないらしかった。民代と香穂子には関わらない。それで手打ちとなった。
『あんたもなぁ、嫌やったらハッキリいわなあかんで』
『でも、告げ口したら親にも迷惑かかるし』
『迷惑かかってんのこっちや! ああ、うちやっぱこういう学校合わん、地元の高校でええっていうたのに』
 香穂子の実家は大阪南部で、明治期に創業した旅館の仙斎荘だ。
 歴史は丹寿庵よりも浅いが、得意筋に政治家や著名人が多く、各業界との繋がりを持っている。それでいて安易に商売を広げることなく堅実に、かつ戦後の混乱や高度成長期の変化も乗り越えて有名旅館の看板を維持している。
 民代も、仙斎荘の名前は知っていた。だが笹原という姓とすぐに結びつかず、最初に教えてもらった時は驚いた。
 香穂子もまた、民代のように一人娘で、いずれは女将となることが決まっていた。
『どうせ、旅館継がなあかんのや。大学行きたいって言っても、許してくれんかった。すぐ家に入らなあかんって』
 いつも強気で、いじめてきた相手にも怯まない香穂子が、昼食中に切なそうに言った。
『ええんよ、勉強もスポーツも、それにお華もお茶も着物も好きや。家も好き。だから宿の女将になるんはむしろ嬉しいんや。でもな、すぐ婿とらな安心でけへんいうんや。大学なんてたった四年やのに、そんなん待たれへんって。嫁き遅れるて』
『香穂子……』
『なんか、そう言われたら、自分がまるで、ただの駒のように思えてなぁ。まぁここ来とる皆似たり寄ったりやけども』
 ぐしっと、彼女はハンカチを使わずに手の甲で目許を拭った。涙は見えなかったが、きっと溜め込んでいたのだろう。ハンカチを取り出そうとした時には、もう香穂子はいつもの笑顔に戻っていた。
『堪忍な。民ちゃんも実家の和菓子屋を継がなあかんのに、こんな話して。民ちゃんちはもっと大変やろ』
『ううん、ええんよ。こういうこと話し合えるん、香穂子だけやし』
 親友が泣いている時、さっとハンカチを渡せるような気の利いた性格ならと民代は悔やみながらも、そう答えた。
 すると香穂子は、へへ、と小さく笑った。
『なぁ、うちら、ずっと親友やよ』
『もちろんや、民ちゃん!』
 二人は、両手を合わせた。そしてぎゅっと、指を絡めるように握り合う。
『でも卒業したら、なかなか会われへんかな』
 家を継ぐために婿を取る。それが、二人の定められた道だった。
 ふと、民代はあることが脳裏に浮かんだ。
『家族になったらええんや』
『え? どういうこと?』
 香穂子が瞬きをした。赤みが残る目許を見つめて、民代は言った。
『うちら、いずれ子ども産まにゃあかん。そやし、もし……うちらの子どもが男と女やったら、結婚させへん?』
『ええっ? そんな、ええの? うちらが今決めて』
『そやね、子どもらの意思は大事やわ。いややいうたらその時また考えなあかんけど、そやなかったら……うちら、姉妹になる』
『姉妹……』
 香穂子が、ぽつりと呟き返す。
『うん、姉妹や。先はどうなるか、わからへんけど、それを支えにきばりたい』
 定められた道に苦しむのに、こんな提案をするのは矛盾しているが──支えにするぐらいは、許されるのではないか。
『せやな。うん、おおきに、民ちゃん。うちらいつか姉妹になろな』
 民代と香穂子は、その約束を心の支えに高校を卒業し、それぞれの道を進んだ。
 少女達は気づかない。自分もまた親となった時、子どもにとってその約束は、まさに自分達が苦にしたのと同じ束縛になるということを。
 ──それは、まだ生を受けていない琴音と恭平の、最初の結びつきでもあった。

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