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許婚は神主さま とびきり甘い運命の縁結び

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書籍紹介

恋に落ちて婚約者の本性を知りました

神社の跡取り・雪邑と名ばかりの許婚である菫。仕事で左遷され、散々な気持ちで帰省すると、十数年ぶりに再会した彼は和装が似合う美貌の青年に。驚き、戸惑いながらも近づく二人の距離。普段は優しい微笑みの彼が「もう遠慮はしないですよ」と、情欲を孕んだ眼差しで快楽を刻み込んで来て……。身体を繋げるたびに愛おしさが募る。遠い日の約束で結ばれた運命の恋。

ジャンル:
現代
キャラ属性:
社長・セレブ
シチュエーション:
甘々・溺愛 | 幼馴染・初恋の人 | 新婚
登場人物紹介

蘇芳雪邑(すおうゆきむら)

蘇芳神社を祀る、赤代神社の宮司。代々、朽葉家の血を引く娘が神社に嫁ぐことになっている。色白で神がかったような美形。性格も穏やかで、浮き世離れしているところがある。

朽葉菫(くちばすみれ)

国内最大手の投資銀行の経営コンサルタントだったが、左遷されてしまった。美人で成績優秀だが、男性が苦手。名ばかりの許婚である雪邑を深く知るにつれ……?

立ち読み

「イケニエってなに?」
 菫がそう聞くと、背を丸めて前をよたよた歩く祖母は、少し考えてから口を開いた。
「簡単にゆうたら、ご馳走じゃの」
「ご飯のこと?」
「菫のところでも、ほれ、誕生日やらお正月やらにご馳走を出すじゃろうが。山の神さんにも、何十年かに一度ご馳走をやらんといかんのよ」
 んん? と六歳の菫は眉をひそめた。
「でもお祖母ちゃん、さっきイケニエって人のことだって言わなかった? つまり赤代神社の神様は人を食べちゃうの?」
 ほっほっほっと、祖母は喉の奥にこもったような、独特の笑い声を上げた。
「まぁ、そういうことじゃの」
「ええっ、本当に食べちゃうの? 神様が人、食べちゃうの?」
 笑う祖母の前に回り込み、菫は両拳を握り締める。
「はっきり言ってよ、お祖母ちゃん。だって菫の家が、代々赤代神社の神様に、イケニエを差し出してたんでしょ? それって、菫もそうしないといけないってこと?」
「本当なら、それは菫のお母さんの仕事じゃったよ」
 どこか楽しそうに、けれど寂しげに祖母は続けた。
「東京の大学にどうしても行きたいゆうて、それで東京の人と結婚して、もう七年も帰ってこんわ。神様の罰が当たったら、みぃんな菫のお母さんのせいで」
 さーっと自分の身体から血の気が引いていくのが分かった。
 菫が寝る時、祖母は決まって昔話や、この地方に伝わる伝承などを話してくれる。
 狐を怒らせて山から帰れなくなった村人の話や、ご神木におしっこをした子供が、蛇に噛まれて死んだ話──今振り返ると、六歳の子供にそんな話する? と思うほど残酷な逸話も多く含まれていたのだが、今の話も、菫にはとてつもなく恐ろしく感じられた。
 しかもそれは、菫の家──朽葉家にダイレクトに関わる伝承なのである。
「菫、イケニエにならないといけないの? 山の神様に食べられないといけないの?」
 泣きそうな菫にようやく気がついたのか、祖母は足を止めて優しい表情になった。
「まぁ、本当に食べられはせんわいね。イケニエ言うのはそういうことじゃのうて、」
 そこで祖母は、何かに気がついたように顔を上げた。
 菫は祖母の視線を追った。山と田んぼに囲まれた一本道の向こうから、大人と子供の二人連れが近づいてくる。
 逃げるように祖母の背中に隠れたのは、その二人連れが、今話していた赤代神社の人たちだからだ。大人の方が白衣に紫袴、子供は水色の袴を穿いている。この辺りでそんな目立つ格好をしているのは、赤代神社の関係者しかいない。
 さらに居心地の悪いことに、その背後から数人の男の子たちが虫捕り網や棒きれのようなものを持って駆けてくるのが見えた。全員が丸坊主で、真っ黒に日焼けしている。
 数日前、初めて祖母の家の前でタクシーを降りた菫を遠巻きに見ていて、挨拶をしようとすると、蜂の子を散らしたように逃げていった子供たちだ。
「スオウさん、息子さん連れてどこに行くんね」
 そうこうしている間に近づいてきた神職二人に、祖母がのんびりと声をかけた。赤代神社のスオウさん。祖母がちょくちょく口にする、神社で神主をしている人の名だ。
「ちょいと氏子さんの挨拶回りにの。そこにいるんは菫ちゃんかい」
「ほうよ。今年から夏だけ、うちで預かることになってね。菫、ほら、挨拶しんさい」
 菫は、祖母の腰からおそるおそる顔を出し、ぎょっとして固まった。
 ──赤鬼!
 白髪で赤ら顔の老人が、黄ばんだ目をギラギラさせて菫を見下ろしている。
 不安で心臓がドッドッドッと高鳴り始めた。この人が、もしやイケニエを欲するという山の神の化身だろうか。私はこの人に食べられるために今日まで育てられたのだろうか。
「こりゃめんこいなぁ。亮子ちゃんのちっちゃい頃とそっくりじゃ」
「頭もええゆうて、亮子がいっつも自慢しとりますわ」
「そりゃええのう。菫ちゃん、あんたが亮子ちゃんの代わりにうちに来てくれるんかい」
 その瞬間、菫は気を失いそうになっていた。やっぱりそういうことだった。私が、お母さんに代わってイケニエにならないといけないんだ。
「……わ、私が行ったら、どうなるんですか」
「ん?」
「お、おじさんが、私を、た、た、食べちゃうんですか」
 沈黙。数秒の間の後、大人二人が堰を切ったように笑い出した。
「なっ、何がおかしいんですか!」
 菫は真っ赤になって抗議する。赤鬼は喉を鳴らしながら、菫の目線までしゃがみ込んだ。
「まぁ、食べるゆうたら食べるかのう。でもそれは、わしじゃあないで」
 ──え?
「菫ちゃん食べるんはユキムラじゃ」
 その時、赤鬼の背後でわあっという歓声が上がった。
 咄嗟に視線を巡らせると、虫捕り網を持った子供たちが畦道の排水路にしゃがみ込んでいる。その中心にいるのは白衣に水色袴を纏った少年だ。その少年が棒のようなものを掴んで腕を高々と上げている。
 棒は、ただの棒きれではなく、先端に尖った刃を有した銛だった。その切っ先に、腹を貫かれた巨大な蛙が引っかかり、断末魔の痙攣を繰り返している。
 自ら仕留めた生け贄を天に掲げたまま、少年がゆっくりと振り返った。
 雪白の瓜実顔、妖艶に輝く黒い瞳、にんまりと笑う紅い唇──
「こるぁッ、ユキムラ、お前なんちゅうことをしとるんじゃ!」

「わあああっ」
 思わず漏れた叫び声と共に、どんっと突き飛ばした目の前の物体がひっくり返った。
 はっと気がついた時には、男が──朽葉菫にとっては、大学三年生の時から五年間片思いし続けた相手が、後頭部に手を当てて顔をしかめている。
「びっくりした……。どうしたの、急に」
 菫は、シュミーズ一枚きりの胸を手で隠しながら、ぱくぱくと口を開けた。
 駄目だ、無理だ。やっぱり駄目。
「蓮見先輩、ごめんなさいっ、やっぱり無理です! できません!」
 唖然とする初恋の人を尻目に、そそくさと脱いだ衣服を身に着け、ハンドバッグを取り上げる。その間も、心臓はばくばく鳴りっぱなしだった。
「無理ってどうして? 確かに菫を慰めるために酒飲もうって言っといて、こんな展開になったのは悪いと思ったけど」
「悪いとか悪くないとか、そういうことじゃないんです」
 駄目だった。好きな人となら絶対に大丈夫だと思っていたのに、結局は同じことだった。
「すみません、料金、ここに置いときます」
 二人分のホテルの宿泊料金を置いて、深々と頭を下げる。おそるおそる顔を上げると、何年も恋い焦がれた人は菫に背を向け、煙草に火を点けていた。
「こ、これには理由があって……、決して先輩のせいとか、先輩が嫌いになったとかじゃないんです。また、……また改めて説明させて下さいっ」
 頭が膝につくんじゃないかというくらい深く下げ、菫は一人部屋を出た。
 とはいえ、わけを説明したところで果たして理解してもらえるだろうか。そもそも、これまで一度として理解されたことがない。この年まで未経験の理由。いざセックスに挑もうとすると、頭の中に蘇る幼い日の悪夢のことなど。──

 

 

 

「火曜日に休暇?」
 報告を聞いた上司は、一瞬驚いた顔をしたものの、すぐに納得したように睫毛を伏せた。
「月曜が祝日だから四連休か。ま、色々あったんだから、リフレッシュも必要かもね」
「あの、リフレッシュとかじゃなく、本当に用事があるんです」
 菫は堪りかねて反論した。その言い方に、明らかな決めつけと皮肉を感じたからだ。
 五月の終わり。都心の高層ビル内にある空調の効いたオフィス。電話をかけている数名を除き、同じ係のほぼ全員が菫と上司との会話に耳をそばだてている。
「朽葉さん、別に休む理由なんて、いちいち上司に説明しなくていいのよ」
 そう言うと同い年の上司──総務課長の園田由莉は、余裕の眼差しで菫を見上げた。
「後のことは心配せずにのんびり心を癒やしてきて。大変だったものね、この数ヶ月」
 入社以来の宿敵ともいえる相手に放たれたマウントに、菫は引きつった笑みで応える。
「課長、これは祖母の遺言で、母の故郷で整理しなければならないことがあるんです」
「お母様の故郷? あら、朽葉さんって元々東京の人じゃなかったの?」
「──、母は地方出身ですが、私は生まれも育ちも東京です」
 さすがにカチンときて話を打ち切ると、同じ係の同僚が一斉に視線を下げるのが分かった。こういう光景にはもう慣れてしまった菫は、極力表情を変えずに自席に戻る。
 園田由莉と朽葉菫。数年前に同期入社した二人のことは、社内の大半が知っている。
 一人は副社長の令嬢で、超有名お嬢様大学を卒業したサラブレッド。もう一人は、女性で初めてこの会社──国内最大手の投資銀行『日和シルバー・バークス』──通称『日和SB』の経営コンサルタントに採用された叩き上げのエリート。
 どちらが先に女性初の役員の座につくかは、社員の賭け事の対象になったほどだが、今やはっきり明暗はついていた。
 二十五歳で、史上最速で課長のポストについた由莉と、懲罰人事でその由莉の部署に配属された菫。今や社員の関心は、いつ菫が退職届を出すかに変わっている。
 席についた菫は、デスクの隅に置いていたスマートフォンにSNSのメッセージが入っていることに気がついた。
 すぐに相手が誰だか分かり、馬鹿みたいに表情を緩めて端末を取り上げる。
『話したいことがあるんだ。今夜、よかったら時間取れる?』
 ──蓮見先輩!
 よかった。一ヶ月前の悪夢のような出来事は、何度もSNSで謝って許しを得ていたが、あれ以来先輩に誘われたのは初めてだ。
 今夜こそ、ちゃんと本当の理由を説明しよう。今回の休暇で忌まわしい過去にきっちりけりをつけてくることも含めて、全部。
 メッセージはもう一つ入っている。眉を寄せて画面を展開させた菫は、その差出人を見て、ゴトッと端末を落としていた。
「出かけるわ、吉岡さん、運転手を頼んでいい?」
 その時、課長席から由莉の声がした。吉岡とは庶務係の新人で、目下由莉が運転手として重宝している男性社員である。その吉岡がわたわたと立ち上がる。
「すみません。実は七階のトイレが詰まっているとの通報がありまして」
「そんなの、委託業者を呼んで直させればいいじゃない」
「契約上三時までは休憩時間なんです。七階は来客も多いし、VIPも来られますから」
 チッと由莉が舌打ちする。七階といえば、菫が元いたコンサルタント部があるフロアである。嫌な予感を覚えた時、案の定背後に由莉の足音が近づいた。
「お願いできる? 朽葉さん。これも、社内管理の仕事の一つだと思って」
「えっ、……私がですか」
 さすがに衝撃で声が震えた。一番顔を出したくない古巣。そのトイレ掃除に私が。──
「ここじゃ新人なんだから、こういった仕事も経験しておかないといけないでしょ」
 そこで言葉を切った由莉は、嘲るような目で菫を見下ろした。
「もちろん、元コンサルタントの朽葉さんに、それができたらの話だけど」
 軽やかな靴音がオフィスを出て行く。未来の役員──しかもとびきり美人な由莉の仕事は、こうした外回り、つまり取引先企業との顔繋ぎが主なのだ。
「……朽葉さん、あの、俺たちがやりますから」
「いいえ、私がやるんで、掃除道具の場所を教えて下さい」
 心に、真っ黒でドロドロとしたものが渦巻いている。冗談じゃない、できるわよ、そのくらい。見てなさい。業者がやるより、完璧に綺麗にしてみせるから。

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