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獣の純愛
エリート御曹司は運命のオメガに愛を乞う

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書籍紹介

おまえが発情していいのは俺だけだ

被支配者層・Ωの身分を隠して生きてきた橙子。襲われたところを支配者層・αの誉に助けられる。「正体をバラされたくなければ従え」傲慢な物言いに突然のキス。執拗な愛撫に極上の快感と幸福を感じて。なぜこんなに惹かれてしまうの……!? 「おまえは俺のつがいだ」抱きしめられればときめきが止まらない。運命の出会いが導く、ティーンズラブ×オメガバースの究極愛!

ジャンル:
現代 | ファンタジー
キャラ属性:
オレ様・S系
シチュエーション:
玉の輿・身分差 | 年の差 | 甘々・溺愛
登場人物紹介

八神誉(やがみほまれ)

八神製薬ホールディングスの御曹司。世界を動かす支配者層・アルファの中でもエリート中のエリートで、絶世の美形。

水谷橙子(みずたにとうこ)

被支配者層・オメガであることを隠して生きてきたが、秘密を誉に知られてしまい……?

立ち読み

 この世界の人間には、血液型や性別などの区別とは違う、三種類のバース性が存在する。
 どの国でもα性が頂点に立ち、世界を動かす支配者として君臨していた。
 次いでβ性。日本の総人口の内、七十パーセント以上を占めるごく普通の人々。波風のない安定した人生を送れる中間層でもある。
 そして最下層のΩ性。国内では十パーセント未満しか存在しない貴重なバース性で、男性でも子を孕むことが可能という稀有な存在。
 オメガは男女問わず数ヶ月に一度は発情期が訪れ、催淫効果があるオメガフェロモンを放出し、アルファのみを凶暴化させる。発情期中は性欲が増加して体に力が入らなくなり、家から一歩も外に出ることができない。そのため子を産むだけの劣等種だと、社会から冷遇される被支配者層。
 しかし現在は新型発情期抑制剤を服用すれば、発情を完全に抑え込むことが可能。国の人権教育も功を奏し、オメガの迫害はなくなりつつある。
 ただ、現在のオメガはある理由から人口が激減したため、希少種として国家に管理・保護される対象となっていた。

 

 

 

「暑い……死ぬ……」
 独り言をブツブツ漏らしながら、水谷橙子は残業上がりのくたびれた体を引きずって、最寄り駅までの道を歩いていた。
 八月最後の金曜日。今夜はいつにもまして蒸し暑い。
 大量の残業を押しつけてきたパワハラ上司を脳内で呪い殺し、なんとか終電に間に合うよう会社を出たが、猛烈に疲れてフラフラした。
「……なんかイイにおいがする……お腹空いた……」
 もう夜の十一時半だというのに、朝食以外は何も口にしていない。部下を人間と思っていない上司のせいで、昼食を食いっぱぐれたのだ。
「もうあんなブラック企業辞めたい……」
 月百時間を優に超える残業の日々が、すでに半年も続いている。耐えきれず退職の意向を何度も上司に伝えているけれど、のらりくらりと逃げられたまま。
 駅への道を急ぎつつ天を仰いだそのとき、五メートルほど前方に路上駐車している車から男が降りた。スマートフォンを耳に当てて周囲を見回す男の顔を見た途端、橙子は梅雨並みに上昇した不快指数が吹っ飛ぶ気がした。
「うわ、超絶イケメン……」
 スリーピーススーツを着たその男性は、遠くからでも分かるほど彫りの深い顔立ちで、鼻梁の高さなど日本人離れしている。外国人の血が混じっているのではと思ったのは、その容貌だけでなく、瞳が特徴的な金色であるから。
 年の頃は二十代後半だろうか。切れ長の美しい金眼は少し冷たそうな印象を与えるものの、それを凌駕する完璧な美しさに見惚れて気にならない。
 ──もしかしなくてもアルファ様だよね。めちゃくちゃ綺麗な人……というかあの目、狼の目ってやつだよね。存在感、すっごい。会社の社長もアルファだけど全然レベルが違う。
 日本の総人口の内、二十パーセントほどしかいないエリート階層が“アルファ性”として生まれてきた者たちだ。
 容姿端麗、頭脳明晰といった支配者層で、政治家や企業経営者などは軒並みアルファで占められている。体格にも恵まれており、トップアスリートの多くもアルファだ。
 その選ばれしアルファの中でも、圧倒的な王者の素質を持つ特別な存在もいるらしく、橙子は見たこともないけれど彼がそれではないか。今まで感じたことがない畏怖を抱くほどだから。
 ──しかもなんかイイにおいがするような……?
 先ほどから感じるこの香りは、彼がまとうフレグランスだろうか。と、すんすん鼻を蠢かして香しいにおいを感じ取る。
 犬のような仕草をしつつ歩いていると、不意に顔を上げた男と目が合った。
 その途端、感電したかのように橙子の心臓が痛いほど大きく跳ね上がる。彼の美しい宝石のような金の瞳を見つめて、意味もなく心が沸き立った。
 同時に冷たい汗が背筋を滑り落ちる。
 初めて見る他人なのに目が離せず、足を止めて呼吸さえ止めて、初対面の男と真夏の空間に閉じ込められたような錯覚を抱いた。面食いでもないのに彼の瞳から自力で視線を外すことができない。
 おまけに相手の男も、目を見開いてこちらを凝視したまま固まっている。驚愕を表すその表情に、橙子は内心で「会ったことある人?」と脳内を探るが、疲れと空腹のせいで思い出せない。
 だがこのとき。
「──アッ!」
 下腹部のあたりから灼熱の塊が唐突に生まれた。内臓を炙るような身に覚えのある熱と、瞬時に四肢へ広がる高揚感に皮膚が粟立ち、全身の毛穴が開く。
 発情期と呼ばれる生理現象がいきなり始まったのだ。
 ──嘘! なんでっ!?
 咄嗟に己を抱き締めて身を縮めた途端、ぶわわっ、と勢いよく橙子の周囲に甘い香りが立ち込める。“オメガ性”のみが放つ、アルファにしか効かないフェロモンの香りだ。
 同時に見つめ合っていた美男子が目を剥いて、素早く口と鼻を手で塞ぐ。その仕草から、予想通り彼がアルファであることを悟った。
 そして周囲を歩いている男女数人も同じ動きをすると同時に、その目に淫靡で昏い光が浮かぶ。
 澱んだ眼差しが橙子へ向けられると、額に汗を浮かべる彼女の背中に底なしの恐怖が這い上がった。
 このフェロモンに反応したアルファは獰猛な興奮状態に陥る。どれほど温厚な性格のアルファでも、残忍さが前面に出て理性を失ってしまう。そして見境なくオメガを襲いまくるため、街中で集団暴行を受けたオメガもいるほどだ。
 橙子は慌てて周囲を見回し、ビルとビルの隙間にある人気のない路地の奥へ駆け出した。
 ──どうして急に……薬は毎日欠かさず飲んでいるのに……!
 発情期を抑える抑制剤は、間違いなく今朝飲んだ記憶がある。なのにこのようなハプニングが起きてパニックに陥りそうだった。それでも走りながら、緊急用の発情期抑制特効薬をバッグから取り出そうとする。
 一刻も早く発情を鎮めてフェロモンを止めねば、この一帯にいるアルファをすべてヒート化させてしまう。彼らを正気に戻すためには、オメガフェロモンから遠ざけるしか方法がないのだ。
 しかし焦っているせいか特効薬が見当たらない。ようやくケースを取り出したとき、背後から複数の足音が聞こえた。振り向けば数人の男女がこちらを目指して走ってくる。その血走った目に狂った欲望を認め、過去のおぞましい記憶が脳内によみがえった。
 恐怖で体を震わせる橙子はすぐさま覚悟を決める。
 抑制剤を捨ててバッグから発情期誘発剤──オメガフェロモンを強制放出する自己注射薬──を取り出し、右太腿に打ち込んだ。
「──グゥッ!」
 橙子が呻くのと同時に、すでに発情している彼女の肉体活動がさらに促進され、オメガフェロモンが爆発的に大量放出された。まるで香水タンクをぶちまけたかのような、息ができないほど強烈でむせ返る香りが狭い路地に充満する。
 橙子を取り囲んだアルファたちは間近で膨大なフェロモンを吸い込み、自身の急激なアルファホルモンの増加と乱れによって目を回した。おかげで全員、その場で汚いアスファルトに倒れ込む。
「……ハァッ、……たす、かっ、た……」
 両手で胸を押さえる橙子もその場に尻もちをつき、ゼエゼエと肩で息をする。汗が滝のように流れて耳鳴りが消えず、心臓が破れそうなほどバクバクと早鐘を打って倒れそうだ。
 発情しているときに、さらに発情を促す誘発剤を取り込むのは自殺行為でもある。肉体に負荷が掛かりすぎるため、本来は禁忌とされているのだ。
 ──はやく、止めないと……
 震えが止まらない手で地面に転がった緊急用の抑制特効薬を拾い、今度は左の太腿に打つ。だがフェロモンの放出は弱くなったものの、完全には止まらなかった。
 ──これだけ発情が強くなってると、一本じゃ効かないんだ……
 発情中に誘発剤を使うという危険を冒したのは初めてなので、緊急用の抑制剤など何本も所持していない。このままでは他のアルファを引き寄せてしまう。
 橙子は汚いビルの壁に手を突いて立ち上がろうとした。が、四肢が思い通りに動かない。まるで全力疾走を続けたような疲労感に襲われ、全身に力が入らないのだ。視界がぼやけて自分の手の輪郭が二重三重にも見える。
 このとき、カツンッ、と硬い靴音が近くから聞こえた。ふらつく頭を持ち上げれば、背の高い男がこちらに近づいてくる。暗い路地でも端整な顔であることは視認できた。
 その整いすぎた容貌と金眼を見て、先ほど目が合った男前であることを思い出す。
 ──この人……アルファのはず……
 逃げなければと思うのに、体はもう限界だった。
 ──嫌だ、近づかないで……
 こんな汚い場所で犯されたくない。嫌悪感に突き動かされて重い体を必死に動かそうとしたとき、意識が揺れて視界が空転する。
 瞼が落ちる寸前、最後に見た男の顔はやけに蒼ざめて苦しそうに歪んでいた。

 ……気持ち悪さが疲労に勝って目を覚ました橙子は、しばらくの間、ボーッと見慣れぬ天井を見つめて呆けていた。
 ここ、どこだろう? 自分の部屋ではないと理解した脳が動き始めると、残業帰りに突然発情してアルファに襲われそうになり、誘発剤を使ったことまでを思い出した。その後の記憶はない。
 のっそりと頭を動かせば、やたらと広い部屋であることに気がついた。病院に収容されたかと思ったのだが、上品なインテリアや壁に飾られた絵画、圧迫感を感じさせないゆったりとした家具の配置を見て、ホテルではないとの印象を抱く。
 さらに視線を巡らせると、自分が横たわっているベッド近くのソファに、一人の女性が座っているのを認めた。
 スマートフォンを操作しているその人は、橙子の視線に気づいたのか顔を上げて笑みを浮かべ、ベッドまで近づいてくる。
「気がついたのね、よかったわ。胸が苦しいとか、体調が悪いってことはない?」
 優しそうな女性は三十歳前後といったところだろうか。邪気のない笑みに、橙子の警戒心も発動しなかった。
「えっと、大丈夫です」
「発情しているときに誘発剤を使ったって聞いたわよ、ビックリしたわ。苦しかったでしょうね……。もうそんな危険なことしちゃ駄目よ?」
 その言葉からなんとなく、この女性はオメガではないかと思った。
 オメガ性は全体的に華奢で儚い印象の人が多く、庇護欲をそそる雰囲気を併せ持っている。世界を支配するアルファが陽ならば、オメガは陰。
 目の前の女性はまさにそのイメージそのもので、さらに橙子を労わる言葉の端々に、同族への配慮が滲んでいると感じた。
「あの、ここって……病院じゃないですよね?」
「そっか、覚えてないのね。倒れたあなたを誉くんが助けたのよ」
「ほまれ……?」
 聞いたことがない名前だ。いったい誰だろう。
 橙子の疑問が顔に出たのか、その女性はパンっと軽く手を合わせ、「そうね、誉くんにもあなたが起きたことを知らせてあげなきゃ」と言い置いて部屋を出ていった。
 いったい誰が助けてくれたのかと不思議に思いつつ橙子が体を起こせば、下着姿であることに気づいて再びシーツの中に潜る。
 あの女性が脱がしたのだろうか。ブラジャーとショーツとキャミソールしか身に着けていない。
 私の服、どこ? と焦っていたら、部屋のドアが開いてフワリといい香りが漂ってきた。顔を上げれば先ほどの女性が一人の男性を伴って入ってくる。
 彼女より頭一つ分は大きい男を見て、橙子の体が緊張でこわばった。
 ──あのときのアルファ。
 唐突な発情が起きる直前に見た、神が意欲的に創ったと思われる美貌の男。アルファの中でも別格の雰囲気を持つ存在。そういえば意識を失う寸前にも彼を見たような気が……
 このアルファが自分を助けたのかと、まじまじと端整な顔を凝視してしまう。
 そのとき彼が感情のこもらない視線で橙子を睨んできた。人の温かみを感じさせないその眼差しには、同情や配慮など欠片も含まれていない。なまじ美しすぎて、見つめられるだけでも恐ろしい。
 橙子は怯えからシーツをギュッと握り締めた。
 すると彼はそばにいる女性へ向き直り、意外なことに小さく微笑む。
「実佳子さん、ありがとう。助かったよ。こんな夜遅くに悪いね」
 声だけでなく表情にまでも、柔らかさや温かさ、労わりが込められていた。それは自分へ向けられたものとはまったく違っており、橙子は彼に抱いた印象との差異に激しく目を瞬く。
「いいのよー、もう子どもたちも寝ちゃったし」
「家まで送らせるから」
「そんなに遠くないから、歩いて帰るわ」
「駄目。俺を安心させると思って送らせてくれ。頼むよ」
 ……二人のやり取りを見つめる橙子が固まっていたら、彼らの間で話がまとまったらしく、男の方がスマートフォンでどこかに連絡をしている。すぐにスーツを着た細身の男性が部屋に来て女性を引き取っていった。
 すると残ったアルファ男性が橙子へ視線を向ける。彼と目が合った彼女はベッドの上で跳び上がりそうになった。
 去っていった女性に対する優しさなど嘘であったかのように、冷たい──言うなれば冷血だと思わせる表情と、凍りついた視線で睨んでくるから。
「──水谷橙子、だな」
 知らない男からいきなりフルネームで呼ばれ、橙子は全身をこわばらせた。
「……なんで、私の、名前を」
 無言でベッドに近づいた彼は、ジャケットの内ポケットから免許証と、ネックストラップ付き社員証を取り出した。
「それ、私の……っ」
 慌てて手を伸ばしたと同時に、上半身がクーラーの冷気を感じ取って、自分が下着姿であることを思い出した。声にならない悲鳴を上げてまたもやシーツの中へ避難し、震える声を張り上げる。
「人の荷物、勝手に触らないでください……!」
「意識不明になった人間を保護したんだ。身内の連絡先ぐらい調べるのは当たり前だろ」
 悠然と言い放つ彼は、部屋の隅にあった椅子をベッドの近くへ動かし、腰を下ろすと長い脚を優雅に組む。
 このとき男の左手に包帯が巻かれていると気づいたが、彼が言葉を続けたため橙子は意識を端整な顔へ移した。
「株式会社ヒューマン・コミュニケイトとやらで営業部に勤務。住所は東京都文京区。二十二歳か」
 ペラペラと他人のプライバシーを読み上げる美男子は、免許証の裏側を橙子へ向け、ズイッと突き出してきた。
「これはどういうことだ?」
 緑色の“β”の押印を見せられて橙子の息が止まりそうになる。免許証の裏側には、持ち主のバース性が必ず記されているのだ。
 数秒間、シーツの隙間からβの文字を見つめていた橙子は、震える声を吐き出した。
「どうって……、私はベータですから、おかしいことは何も……」
「あれだけ派手にオメガフェロモンをまき散らしておいて、よく言えるな。おまえのせいでヒート化したアルファが追い回していただろう。俺もかなり危なかった」
 美しい顔を思いっきりしかめて吐き捨てる彼は、予想通りアルファ様のようだ。が、なぜこの人だけフェロモンの影響を受けなかったのだろう。自分が発情したあのとき、周囲のアルファは全員ヒート化したのに。
「俺がおまえをここまで連れてくるのに、どれほど大変だったと思う。おまえは間違いなくオメガだ。しかし免許証にはベータの印字……」
 突然、身を乗り出した彼が際立った美貌を近づけてくる。これほどの男前に顔を寄せられたら喜ぶ場面なのだろうが、激しく睨みつけてくるため恐怖しか抱かない。
 思わず橙子がシーツの中へ逃げ込むと、彼は勢いよく布地を剥ぎ取って言い放った。
「おまえ、野良オメガだろ」
 確信的に告げられたことへの怯えと、知らない男性に下着姿を見られていることに羞恥が募り、橙子は己の体を抱き締めて丸く縮こまった。
 野良オメガとは“オメガ性変質障害”となった者を指す。
 出生時の血液検査でベータと認定された者が、まれにオメガへと変質することがあった。原因は解明されておらず、何歳で変質するのか等の研究も進んでいない。
 もともと野良オメガの数が少ないせいもあるが、オメガ性に変質したベータがその事実をひた隠しにするからだ。
 被支配者層であるオメガは常に虐げられる立場にあり、彼らの歴史は差別と迫害の歴史でもある。今でこそ発情期を抑え込むことで人権を認められるようになったが、それでも彼らに対するネガティブなイメージは完全に払拭されていない。
 ゆえに凡人ながら平穏な人生を送るベータにとって、最下層に堕ちることなど、到底受け入れられないのだ。
 そのうえ現在のオメガは、ある理由から国に完全管理されている。
 進学・就職・結婚のいずれも自らの意志で自由に決めることが叶わず、国外からも人権侵害との批判が根強いほどだ。
 そのためオメガに変質した者はそのままベータを名乗り、墓場まで秘密を持っていく。
 彼らは“国の管理から逃れた放浪するオメガ”との意味を込めて、野良オメガの俗称で呼ばれていた。
 そのことを指摘された橙子は、震えながらも美貌の男性をキッと睨みつける。
「違います、私はベータです。あのとき私の近くにオメガがいて、その人のフェロモンが移っただけですっ」
「それを信じる馬鹿がいると本気で思っているのか」
「でも、本当です。そしたらヒート化したアルファが襲ってきて……私だって怖かったんです……!」
「そこまで言うならバース性検査をするか? 一発でバレるぞ」
「う……」
 反論できずに黙り込んだ橙子を、男は馬鹿にしたような目線で見下しつつ、上体を起こして腕組みをする。尊大な雰囲気の見知らぬ他人から厳しい視線を向けられ、橙子は唐突に吐き気を感じた。

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