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何度でも君を愛したい

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書籍紹介

記憶をなくしても、またあなたに恋をする

「俺のこと、身体が覚えているだろ?」記憶にはないけれど恋人を名乗る御曹司・漣に服を脱がされ、むき出しになった肌を強く吸われる。知らないはずの快感が全身を走り、恥ずかしいのにもっと強く求めてしまう。激しく抱かれ愛を囁かれると、なくしたはずの想いがあふれていき――。やがてすべての記憶が戻ったとき、隠された真実が明らかに!?

ジャンル:
現代
キャラ属性:
クール
シチュエーション:
玉の輿・身分差 | 甘々・溺愛
登場人物紹介

鏑木漣(かぶらぎれん)

鏑木商事の御曹司。大企業の跡取りだが、勉強のために営業部で働いている。伊織とは彼女の姉から紹介された。記憶をなくした伊織になにか隠し事をしているようで……。

月城伊織(つきしろいおり)

連の恋人で事故に巻き込まれ記憶喪失になった。鏑木商事の総務課で働いていたが、現在はお休み中。漣とは姉の紹介で知り合った。

立ち読み

 その日は土曜日で、朝から鬱々としてしまいそうな曇天だった。
 月城伊織が溜めこんでいた洗濯物を室内に干していたら、スマートフォンが通知音を鳴らす。
 確認すると、鏑木漣からのLINEだった。
【もう一度会ってくれないか 話がしたいんだ】
 明日の待ち合わせ場所と時間が書かれており、必ず来てほしいと念押しされている。
 伊織は憂いを帯びた吐息をつき、スマートフォンの画面をトントンと指で叩いた。
 このまま家に居ると気が滅入りそうだったので、伊織はLINEのメッセージには簡単に返信をして外に出ることにした。
 洗濯物を干し終えてから、傘を携えて街へと繰り出す。
 朝の天気予報では、降水確率は八十パーセント。気分が落ちこんでいる時に雨が降ると鬱屈した気持ちに苛まれるので、できれば晴れてほしかった。
「曇りの日って、いつも憂鬱」
 ぶつぶつと文句を零しながら駅前に向かって歩いていくと、大通りの横断歩道の向こう側に、漣とよく行っていたカフェが見えてきた。カフェは裏通りにあるが、表から見えるように看板が立てられているのだ。
 小さなカフェだが、アパートから近くて紅茶とケーキのセットが美味しいため、一人でもよく足を運んでいる。
 横断歩道を渡ってカフェに近づいて行った時、あるものを発見した伊織は足を止めた。
「あっ……」
 カフェの窓越しに店内が見える。そして、窓際の席に座る男女がいた。
 あれは漣と伊織の姉の美香だ。二人は顔を寄せ合って話をしている。
 美香が何かを言っていて、それを聞いた漣が肩を揺らして笑っていた。楽しそうだ。

 ──もしかして知らないんですか? お兄ちゃんは、美香さんのことが……。

 漣の妹、鏑木梨央が放った言葉と、呆れ返った笑みが蘇る。
 伊織は拳を握りしめると、そのまま踵を返して来た道を戻っていく。
 漣の笑顔を見たのは久しぶりだ。伊織の前では、いつも仏頂面をしていたからだ。
 美人な姉には婚約者がいると分かっている。
 だが、漣と一緒にいる姿がお似合いで、その事実が余計に胸を締めつけていく。
 横断歩道の信号が赤になった。行き交う車を見つめながらぼんやりと佇んでいたら、鼻の頭に冷たいものが当たった。雨だ。
 伊織はクリーム色の生地に赤と緑の花柄が描かれた傘を開いた。
「漣さん、楽しそうだったな……お姉ちゃんの前では、あんなふうに笑うんだ」
 少しずつ雨が強くなっていき、黒いアスファルトに小さなシミが増えていく。
 信号が青に変わって音楽が流れ始めたので、我に返った伊織は足を踏み出した。
 頭の中には、先ほどの美香と漣の姿が焼きついている。
 顔を寄せ合って仲良さそうに話す二人は、お似合いの恋人同士に見えて──。
 キキーッ!
 考え事をしていたせいで、注意力が散漫になっていたのかもしれない。
 大きなブレーキ音が間近に迫っていることに気づいた時には、もう遅かった。
 信号を無視して突っこんできた乗用車がすぐそこに迫り、足が竦んで逃げることは叶わなかった。ドンッ! と、耳障りな鈍い音が響いて視界が回転する。
 どこかで悲鳴が聞こえて、数秒後には激しい衝撃が走った。
 アスファルトに横たわった伊織は苦痛に顔を歪めながら、徐々に強くなる雨の中で開いた状態のまま虚しく転がっている花柄の傘を見た。
 あの傘は漣からもらったものだった。お気に入りで、ずっと使っていたのだ。
「誰か救急車を呼んで!」
 誰かが叫んでいる。集まってくる野次馬たちの中から、漣の声が聞こえた。
「伊織っ!」
「……れ、ん……さ……ん……」
 伊織は唇を動かしながら瞼を閉じていった。
 意識が途切れる寸前に見たものは、人ごみをかき分けて駆けてくる漣の焦燥に駆られた顔だった。

 

 

 

 手が温かい。緩やかな波間に漂うような眠りの中で、それを感じていた。
 どこからか電子音が聞こえてきた。
 ピッピッピッ。一定の間隔で鳴り続けている音に意識を引き上げられるようにして、伊織は瞼を持ち上げる。
 覚醒したばかりで歪む視界に飛びこんできたのは、白い天井だった。
 瞬きをしているうちに、薄らと靄がかかっていた視界が少しずつ鮮明になっていく。
「伊織?」
 横から男性の声がする。声のしたほうに視線を向けると、知らない人が椅子に座って彼女の手を握っていた。
 目が合った途端、彼が腰を浮かせて身を乗り出してくる。
「よかった。目を覚ましてくれた」
「…………」
「君は二日も眠っていたんだ。何があったか、覚えているか?」
 男性が早口で話しかけてきたが、何があったかという以前に、彼が誰か分からない。
 伊織は困惑しながら尋ねる。

「あなた、誰?」

 彼は知り合いなのだろうか。それにしては見覚えがなかった。
「俺が分からないのか?」
「ごめんなさい……どちらさまですか?」
 男性が絶句して、深く項垂れてしまう。
 伊織は彼が誰なのか思い出そうと試みるが、考えようとした瞬間、頭の芯がズキンと痛んで思考が遮られる。
「うっ……頭が、痛い……」
「すぐに看護師を呼ぼう」
 頭の痛みを訴えると、男性がナースコールを押してくれた。
 伊織は周囲を見渡して、自分が病院のベッドで寝ていることにようやく気づく。
 腕には点滴の管が繋げられており、枕元には脳波の状態を示す機械が置かれていた。
 意識を取り戻す前に聞こえていた電子音は、その機械のものだろう。
「あれ……私、どうしたんだっけ……」
 自分の身に何が起きたのかを思い出そうとするが、あるはずの記憶がすっぽりと抜け落ちてしまっている。まるで漂白されてしまったみたいに頭の中は真っ白だ。
 辛うじて覚えていることは『月城伊織』という名前と、二十六歳という年齢だけだった。
 ほとんど何も覚えていないという状況を理解して、伊織は急に不安になってきた。
 名前と年齢以外は分からない。どうして病院に居るのかさえ思い出せないから余計に心細くて、言い知れぬ不安ばかりが募っていく。
 伊織が落ち着きなく視線を泳がせていたら、手をぎゅっと握られた。
「伊織」
 また名前を呼ばれて、伊織は手を握ってくれている男性を見る。
「何があったのかも、思い出せないんだな」
 小さく頷いたら、彼は顔を歪めていたけれど、はっきりとした口調で言った。
「大丈夫。俺が側にいるから」
 伊織は男性を見つめて、繋がった手に視線を移動させる。
 目が覚めたら手を握ってくれていた。
 そういえば、眠っている最中も手が温かかった気がする。
 もしかしたら、ずっと手を繋いでいてくれたのかもしれない。
「あなたは誰ですか?」
 二度目の問いかけに、彼が答えようとして口を開いたが、病室の扉が開いて看護師が現れたから、そのまま聞けずじまいになった。


 伊織は姉と名乗る女性と共に、医者の話を聞いた。
 目が覚めてから一通り検査を受けて下された診断は、頭部を打ったことによる一時的な記憶喪失だった。
 二日前、伊織は横断歩道を渡っている時に信号無視をした車に撥ねられて、アスファルトに頭部を強く打ちつけた。
 身体の傷は打撲程度だったが、頭を打ったせいで二日も目を覚まさなかったらしい。
 幸いにも脳波に異常は見られず、深刻な損傷は見受けられない。
 ただ、名前と年齢以外の記憶を失っていることに関しては治療の施しようがなく、しばらく様子を見るしかないとのことだ。
 事故で頭部を打って記憶を喪失する事例はあるようで、このまま思い出せないこともあれば、ちょっとしたきっかけで全てを思い出す場合もある。もしくは日常生活を送る中で少しずつ記憶が戻ってきたことも、過去には存在するのだとか。
 今の段階では記憶を取り戻せるか否かは断定できないと、医者が深刻な面持ちで語ってくれた。
 ちなみに、伊織が思い出せないのは自分の過去や周りの人たちの記憶で、一般常識などの知識は残っている。怪我は全身打撲とかすり傷だから、日常生活を送るのにも支障はなくて、一週間ほどで退院できるらしい。
 話を終えた医者が病室を出て行くと、姉の美香に抱きしめられた。
「目が覚めてくれてよかった。記憶はきっと戻ってくるよ。焦らず、ゆっくり治していこうね」
 両手で頬を挟まれて、美香の顔が間近に迫る。
 美香は顔立ちの整った綺麗な女性だから、最初は彼女が姉と言われても実感が持てなかった。
 伊織は何かの間違いではないかと本気で疑ったが、トイレの鏡で自分の顔を見た時に、愛嬌のある垂れ目が美香とそっくりだった。それで血が繋がっていると確信したのだ。
「あの、美香さん」
「お姉ちゃん、でいいよ。そう呼んでいたから」
「……じゃあ、お姉ちゃん」
 ぎこちなく呼び直す。違和感があって呼びづらいが、慣れていくしかない。
「これから、私はどうしたらいいですか? 知り合いの顔も分からないし、家の場所も分からないです。きっと仕事もしていますよね」
「伊織は一人暮らしで働いていたけど、今の状態じゃ仕事はできないだろうから、しばらく休みをもらって療養に専念したほうがいいね。お父さんとお母さんにも連絡は入れておいたよ。心配して帰ってくるって言っていたけど、ひとまず命に別状はないって、あとで電話しておく」
「お父さんと、お母さん」
「うん。お父さんが長期の海外赴任で、お母さんがそれについて行っているの」
 伊織は包帯の巻かれている頭に手を当てた。
 両親の顔を思い出そうとするが、頭の中にはシルエットさえ浮かんでこない。
「やっぱり、思い出せない」
「実家には写真もあるし、そういうのを見れば思い出すかもしれないよ」
 その時、病室の扉が開いて、姉が来るまで付き添ってくれていた男性が入ってくる。
 彼は小さな花束を抱えていた。
「月城。話は終わった?」
「終わったよ、鏑木君。ちょっと外で話せるかな」
 鏑木君。その響きを聞いた瞬間、伊織は頭の奥で痛みを感じる。
 ズキンッと鈍痛が走って思わず顔を顰めてしまうが、すぐに痛みは引いていった。
「伊織、これを君に。外に出て買ってきた」
 男性が可愛らしくラッピングされた花束を差し出してくる。
「ありがとうございます」
「うん。あとで、ゆっくり話そう」
 二人が連れ立って病室を出て行くのを見送ると、伊織は花束を見下ろした。
 ピンクの小さな薔薇だ。顔を近づけてみたら、甘い香りが鼻腔を満たしていく。
 花の香りを嗅ぐことで気分が落ち着き、強張っていた肩からようやく力が抜けた。

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